入学式
「私は君たちの入学をたいへん嬉しく思う───────」
また新たなお偉いさんが壇上にたって話をはじめる
これで何人目だろうか
「ふぁ......」
何が楽しくて聞く気もない話を聞かされるのだろう
だが周りの反応は違った
「金獅子騎士団の団長レオルギス様だ、かっけぇ...」
みんな壇上に上がる人間に尊敬の眼差しを送っている
え、なに?騎士ってアイドルなの?と勘違いするくらいの人気っぷりだ
正直そういうのを全く知らずに育ってきた俺には偉い人くらいにしか見えないのだ
「ここにいる君たちが我々人族が魔人族に勝利するための重要なピースとなることを願っている」
「魔人族ねぇ...」
魔人族とは人間以外の亜人族の総称だ
獣人やエルフにドワーフ、それから鬼や魚人など様々だ
ここ2、300年人族は絶賛魔人族と戦争中
戦争の理由は知らない
一応人間族側の主張は歴史として知ってはいるが、ドラゴンの親父に言わせれば「それが真実とは限らない」らしい
まぁ最強種たるドラゴンはそういうことには基本興味を示さない
もちろんそのドラゴンに赤ん坊の時から育てられた俺だってそうだ、正直どうでもいい
なんなら転生する前の記憶引き継いでるから獣人やエルフやドワーフなんて会ってみたいと思うほど
人族の中でもいわゆる貴族や王族、上流階級にいる者達は人族至上主義の人間が多い
逆に田舎や下町の人間などにそういった偏見は少ない
これはシャルの孤児院のシスターに小さい頃そう聞いた
実際問題魔人族なんて見たことないからなんとも言えないけど、貴族の中には奴隷として抱えているなんて話を聞いたことはあるくらいかね
じゃあ軍に属するやつらはどうなんだろうか
騎士団だろうと魔術師団だろうと平民上がりの人間は沢山いる、特に騎士団なんかは
なにを思って魔人族と戦うのか、もしかしたらここで過ごす生活でそういう考えが染み付いたりするのか?
.........そういうことはないことを祈ろう
色々考えてたらなんか入学式は終わっていた
入学式が終わったあとは各クラスごとで色々な説明がおこわなれるらしい
クラスはAからGの7クラスある
ちなみに俺はDクラス
俺を含めたDクラスのやつらが教室へと入っていく
そしてその中の一人の生徒に俺は驚いた
「私がこのクラスを担当するシルビアだ」
白い髪の女性教師...シルビア先生が教壇に立ち自己紹介をする
あの人ただもんじゃねぇな、教師だからそんなもんか?
いや、それでもおかしい...あの人俺より強いんじゃないか?親父以外で存在感だけで俺を圧倒させるような人を初めて見た
世の中色々と驚くことがあるもんだ
俺は隣を席を見る
そこには女子生徒が座っている、真紅の長い髪を有した女子生徒
さっき教室入ってきた時は驚いたが、間違いなくこいつは試験後の路地裏の件の赤い髪の女だ
こんな偶然なんてあるもんなんだな
「じゃあ色々話す前に自己紹介をしてもらう、まずそこのお前から順番にやっていけ」
窓側の席の1番前のやつが指名される
俺は窓側の四番目だから、順番はすぐに来そうだ
1クラス30人だからしばらく過ごせば29人くらいなら覚えれるだろう
そして早々に俺の番が来て、適当にすませる
みんな順々に自己紹介をしていき赤い髪の女子の番になる
「エリシアよ、よろしく」
なんとも素っ気のない自己紹介だった
エリシアっていう名前なのか、クラスメイトだし覚えておいては損は無いか
自己紹介が終わり先生の話が進む
「知ってるとは思うがうちは生徒同士2人1組のコンビを組む決まりになっている─────」
先生の話を流しながら俺はぼーっと色んなことを考える
そして考えているうちにまた隣の女子、エリシアに関することを考える
エリシアの赤い髪を見てると親父に何回も聞いたある人のことを思い出す
紅蓮の女騎士クローディア・スカーレット
親父いわく親父が出会った中で最強の騎士だったらしい
人間の話、しかも人間の個人の話なんてまったくしないあの親父が何回も話題に出す人物
親父の腹には大きな切られた痕が残っているんだが、その騎士につけられたものとも言っていた
その人の特徴は炎のように紅い紅蓮の髪、俺はちょうど隣にいるエリシアと同じ髪色を想像をしていた
クローディア・スカーレット、親父が認める数少ない人間。幼い頃から会ってみたいと思う地味に憧れている人だ
「ねぇあんた...さっきからなんなの?」
「.........へ?」
意識を現実に戻したら、エリシアがものすごい目付きで俺を睨みつけていた
「あんたさっきから私のことチラチラ見てたでしょ?はっきりいってキモイんだけど」
「......あ?」
なんだこの女、話しかけてきたと思ったらいきなりきもいと言われた
「気づいてないと思ったの?ほんとに気持ち悪いわね」
「おい、ちょっと待て。なんで俺がそんなに言われなきゃならないんだよ」
「ジロジロ女子のことを見てくる男を気持ち悪いって言って何が悪いのかしら?」
「誰がジロジロ見てるって?」
「あんたよ、さっきから私のこときもい目で見てたでしょ」
「おい、ルークエリ──」
「おいおい、それは自過剰っていうんじゃないか?自分がそんな見られる存在だと思ってるの?」
「聞いているのか、貴様ら...」
「あんたキモいだけじゃなくて、すごいむかつく男ね、器がしれてるわ」
「てめぇ...」
なんなんだこの女...あの時から気が強いとは思っていたが、気が強いんじゃなくて性格が悪いの間違えだったみたいだな
てか、さっきから俺たちの声以外になんか聞こえるような...?
「おい、ルークとエリシア聞いているのか?」
「はい?」「え?」
気づいたら睨み合っている俺とエイリアのあいだにシルビア先生が立っていた
「なぁお前達、楽しそうにおしゃべりをしているのはいいが私が何の話をしていたかわかるか?」
「なんの話...?いや、えーと...あはは」
「ルークはわからないようだ、お前はどうだエイシア?」
「えっと、コンビ制度の話をしていたと思い...ます」
俺同様エイシアもほぼ聞いていなかったようだが、なんとか答える
「そうだ、コンビ制度の話をしていた。そして1年はクラス内で組むようになっている。お前ら周りを見てみろ」
まわり...?俺は言われた通りクラスを見渡す
ん、なんかさっきとみんなのいる場所が変わってないか?
「え、嘘...ちょっと待ってまさか...」
「ほう、どうやらエイシアは気づいたみたいだな。見ての通りお前達2人以外はもうコンビを組み終わっている。この教室でコンビが出来てないのはお前達だけ。どうだルーク、これでお前もわかっただろう」
「.........まじかよ、」
残るは俺とエイシア、つまり俺たち2人がコンビを組むしかないっていうのか...?
「見たところお前達は入学初日から仲がいいみたいだしよかったな」
この時のシルビア先生の笑顔は恐ろしいほどいい笑顔をしていた──