既に試験後
「なんつーか、大した試験じゃなかったな」
俺は試験会場をあとにしてそう呟く
試験内容は剣の扱いをためすようなものではなかった
もちろん評価ポイントではあったんだろうけど、評価の大部分は身体能力や精神的な強さに比重が置かれていた気がする
ただ気になるのは最後の受験者同士の模擬戦闘だな
あの試験だけは全員ではなく、30人限定であった
俺も呼ばれたが、たぶん呼ばれた30人は合格確定な気がする
俺も1人だけ相手したし、それ以外のも全部見てたけど実力はそれなりのものだったからな
だからだけど俺は受かったと思う
まぁ結果は明日の合格発表次第だな
さて、試験は終わったことだしシャルと合流しよう
今日の残りの時間はシャルと王都を見て回るという約束をしているんだ
俺としては今日のイベントはこっちがメインだ
「さてさて、待ち合わせ場所の噴水は.........ん?」
地図を開こうとすると何やら不穏な現場を見つけてしまう
数人の男たちが一人の女を裏路地へと連れて行っていたのだ
しかも男の一人は試験会場で見た試験者だった
「待ち合わせ時間までは余裕があるし...仕方ないか」
俺は現場を覗くためにゆっくりあとをつけていく
もしもの場合はもちろん助けに入るつもりだ
俺は気配を消して様子を見守る
「どうしててめぇみたいな女が、最後の選抜模擬戦闘に選ばれてんだ」
「なに?そんなの試験で評価されたからに決まってるでしょ?馬鹿じゃないの?」
「だからてめぇみたいな気に食わねぇ女が合格確定枠に選ばれてんのがむかつくんだよ!!」
どうやらここにいる脅す側脅されてる側どちらもさっきの騎士学校の試験を受けていたやつみたいだ
脅されている方の女は印象的な綺麗な赤い髪をしていた
おっとどうやら最後の試験で選ばれたやつは俺の考え通り合格確定みたいだ
もしかしてそれって割と知られてたことなのか?
まぁ合格がほぼ決まったからこの際どうでもいいことか
話を聞く限り、脅されている方が合格確定で他のやつらは結果待ちというわけか
女だからという理由でこいつらキレてるってぽいけど、ただの八つ当たりだし性別の云々であれこれいうのは馬鹿のやることだ
「あんた私が女だからとか言ってるけど、今騎士学校で最強なのは女子生徒なのを知らないの?」
さっきから話聞いてると俺の知らないことがバンバン出てきてなんか今1番この状況で俺が得している気がしてきた
「あとそろそろ私帰りたいから悪いけどどいてくれるかしら?」
「あ?てめぇがここから五体満足で帰れるわけないだろ?帰りたきゃ騎士学校の入学をやめろ」
どうやら男たちがやっと自分たちの目的を果たそうとしている
6対1、しかも1の方は女
普通だったら助けに入るべきだけど、この場合......
「風よ!!」
「.....魔法も使えるのか」
俺がどうしようかと考えていたら6人の男たちは赤髪の女の方が放った魔法の暴風により地面に寝ていた
この世界の魔法は火魔法だったら「火よ」、水魔法だったら「水よ」と唱える
つまり「風よ」と唱えた赤髪の女の持っている魔法の属性は風というわけだ
「はぁ...!はぁ...!」
男たちを余裕で一蹴した女の様子はきつそうだ
なるほど魔力切れを起こしているみたいだ
魔法を使えるのにどうして騎士学校の試験を受けているのが疑問に思ったけど、どうやらこれが理由みたいだ
魔法の才能は魔力の有無や量で決まる
あの赤髪の女は魔法は使えるが魔力量の少ないんだろう
だから魔力切れを起こしてキツくなってるわけだ
「ふざけんてんじゃねぇ!!」
男達のリーダー格らしき赤髪の女を脅していた男がなんとか起き上がり赤髪の女を襲おうとする
その手にはナイフが持たれていた
それくらいのガッツがあるなら試験受かってると思うんだけどなぁ
こんなくだらないことをするとはもったいない
「死───ぐはっ!!」
俺はちょうど足元に落ちていた瓦礫を投げつけて襲いかかろうとした男を気絶させる
「.........誰?」
赤髪の女が俺の存在に気づいてこちらに声をかけてくる
ここは姿を表すべきか?
「......えっ!?」
どうしようかと思っていたら時間を伝える鐘が王都に鳴り響く
そしてこの鐘の鳴る時間がシャルと決めていた待ち合わせの時間であった
「ま、まずい!!」
「え、ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」
待ちなさいよとか言われても俺はシャルを待たせるんだよ!!
俺は赤髪の女の方を見向きもせずにシャルとの待ち合わせ場所である噴水へとダッシュした──