モード選択
俺は死んだ─────
特に理由もなく唐突に。
信号無視したトラックに轢かれた
確実に即死だった
どうして死んだのにそんなことわかるかって?
だって見ちゃったんだもん、首がない自分の身体が遠くでグチャグチャになってるのを
まぁ見えたのは一瞬で、すぐに視界はブラックアウトした
それで気づいたら、ここにいた
なにもない白い部屋に俺は座っていた
でもなんか不思議で意識だけがそこにあるような、身体の感覚は薄いような不気味な感じ
思ったけど身体あるな
「俺は死んでなかったのか?」
でも俺が見た「あれ」は明らかに現実だった
むしろ今の方が現実味がない
「あなたは死んでますよ」
「.........へ?」
声がしたと思ったら目の前に白いドレスを着た女がいた
何も無いところから急に現れたから驚いて声が出なかった
「申し訳ございません、実は私たちの不手際であなたの人生を終わらせてしまいました」
「不手際...?あんたは何者なんだ?」
「私ですか?私はいわゆる神様です」
まさかの神様ご登場です
「実はですね。あなたは天界の不手際で死ぬ必要のないところで死んでしまったのですよ。いわゆる寿命をまっとうできなかったということです」
「あー...えっと、つまり俺は本来だったらもっと生きれたってことか?」
「はい、理解がはやくてとても助かります。こういう時たいていの方は慌てたりすることが多いので」
なぜかわからんけど、とても落ち着いて目の前の神様の話を理解出来た
ほんとに神様かどうかはよくわからないけど、信じた方が楽だから信じることにした
「えっとですね、私たち的にはですね。その償いとして新しい世界で新しい人生を生きていただこうかと思ってるんです。いわゆる転生といやつですね」
「それはまた新たな人間としてやり直せるってことか?」
「はい、もちろん赤ん坊から新たな運命を紡いで生きて頂こうと思います。あ、もちろんするかどうかはあなたの任意ですよ」
なるほど、なんかわからんけど神様の不手際で俺は死んじゃったから
その代わりとして新たな人生を生きさせてもらえるかわけか
「もし転生することを選ばなかった場合どうなるんだ?」
「その場合は今を含むあなたの記憶をすべて消去して輪廻の流れに魂を戻すだけです」
「転生選んだ場合このまま転生出来るってことか?」
「はい、記憶を引き継がないと償いにはなりませんからね。ただ転生する場合は死ぬ前とは別の人間としてですよ」
「だったら悩む必要は無いな。転生することを俺は選ぶ」
「理解するのもはやかったですが、決めるのも早いですね」
俺は神様に「まぁな」と答える
別に人生やり残したことがあるわけではないが、しないことを選んでこのまま記憶を選んで消えるよりは転生した方がいいと思ったわけだ
記憶引き継げるなら以前の人生よりも上手く生きれるかもしれないしな
「転生するにあたってですね、実はあなたには転生するモードを選んでいただきたいのです」
「モード?」
「はい、なんとただ転生するだけじゃなくてどういう環境に転生できるか選べちゃんうんです!」
そう言って神様が意気揚々にモードの説明をしてくれる
モードは3つの段階に別れているらしい
まずはイージーモード
名前の通り人生イージーモード、つまり生まれながらにしての勝ち組の人生を歩めるらしい
金持ちの子供とかそんな感じらしい
そしてお次はノーマルモード
ノーマル、つまり平凡な人生を送ることが出来るらしい
波風の立たないゆったりとした人生が好きな人におすすめみたいだ
そして最後がハードモード
なんというか地獄よりも恐ろしい環境で育つみたいだ。その代わりその世界における類まれなる才能を持って転生することが出来るらしい
これはもう誰が聞いても...
「じゃあ俺はイージ...」
「ハードモードですね、了解しました」
「え、いや、だからイー...」
「ハードモードですね!!」
「.........」
この神様、何がなんだも俺にハードモードを選ばせたいらしい
なにが間違って殺しちゃったお詫びだこの野郎
「ぶっちゃけた話ですね?たまにノーマルモードもいらっしゃいますが、大多数の人がイージーモードを選んじゃうんですよ」
「ハードモードは...?」
「ハードモードの話は置いておきましょう」
完璧な営業スマイルで流された、明らかに選んだやつゼロだろ
利用者ゼロのハードモードを俺に選ばせたいわけか
「あともうひとつぶっちゃけるとですね、あなたハードモード確定ですのでよろしくお願いします」
「は......?」
俺がアホな声をあげた瞬間
俺の身体は椅子に縛られ身動きが取れなくなっていた
「あちらがハードモードの扉です」
神様がそういうと目の前に扉が開く
そして俺はベルトコンベヤーに流されているみたいに次第に扉へと近づいていく
「お、おい...!!ちょっと待ってくれよ」
「残念ながらあとがつっかえておりますので...」
「全然残念がってないじゃないかよ!!」
わざとらしいにも程がある態度に腹が立つ
だが扉はもう目の前まで来ていた
そして扉に入る瞬間神様がこういった
「あの世界をお願いしますね───」
その言葉、その表情は演技とは思えなかった