プロローグ 『史上最低の異世界召喚』
異世界物語はいつ、どこから始まるかはわからない。
朝起きたら異世界に居た?コンビニを出て、瞬きしたら異世界召喚?転生したら異世界に?
───馬鹿野郎。
異世界召喚がそんな形であればどれだけ嬉しいことか。
なんという普通のタイミング。
俺の読んだ本からだとこの世界から異世界に行くってのは、向こうの世界からの誰かに召喚術ってのを行ってもらい、異世界へ移動するらしい。
それが意図的なものなのか、故意的、もしくは恣意的なのかは本人に聞かなきゃわからないがな。
そして、人物だけの移動は難しいらしく、空間ごとの範囲指定の召喚の方が楽らしい。
きっとどんな理由にせよ、異世界に行けることはきっと二次ヲタなら誰もが喜ぶであろう。
だが現実はかなり残酷なものだ。
俺は俺をこの世界に召喚したやつが憎い。
たまたま夜中に外へ出かけた時に呼びやがって。
因みに言うとさっきまで物凄い腹痛に悩まされていた。
そして俺は公園の公衆トイレにいた。
公衆トイレはあれだ。工事現場にもあるような一人用の簡易トイレ。
「なんじゃこりゃあああああ!」
トイレから出る間もなく、足に違和感を感じた俺は下を向いた。
すると、ドロドロと、ベタベタしている、一瞬汚物かと思ったが色が違う。
紫色の液体がトイレの足元を覆っていた。
これはきっと泥か何かだ。
そしてトイレの外を見た時に改めて思う。
沼のような場所に自分はいるのだと。
そう俺 、二瓶 悠真 は公衆トイレごと異世界の沼に召喚された人間なのだ。
──── そうして俺の異世界召喚は、トイレと沼で始まった。────