第六話 勧誘〜約束〜
そういえばストラさんは何処ですか?」
リルは左右を見回す。
「あの人は緊急の呼び出しとかでちょっとな」
ライオネルはオムレツに手をつける。
「緊急?」
「ああ、あの人、あれでうちのNo.2だから、結構そういうことがあるんだよ」
「たいへんですね」
ライオネルは不意に真面目な顔になる。
「そう大変なんだよ。、だから、お前、うちの部隊に入らないか?」
リルはきょとんとした表情を浮かべる。
「私ですか?」
「ああ、魔力は低くてもあの術があれば充分だ。今、サンタクリアじゃあちょっと変な事が起きてんだ。ほら、お前もワームに襲われたろ」
リルは頷くとライオネルは話を続ける。
「あいつら毎日、現れては魔法使いばかり狙って攫って行くんだ。被害者はもう30人をこえてる。うちの部隊の奴も何人かやられてる。正直、人手不足だ」
リルは少し考えた後に首を横に振った。
「別に危険な事をしてくれって言ってんじゃないんだ。事後処理とかでも手伝ってもらえたら」
「こら、しつこいと嫌われるわよ」
リルの後ろからいつの間にか戻ってきたストラがライオネルに言った。
「ストラさん、けど」
ライオネルが言うとストラは顔をしかめる。
「けどじゃないの、謝らないと」
ストラに促されライオネルはリルに頭を下げる。
「悪かったな。ちょっと熱くなりすぎた。けど、めんどくさいからとかいう理由なら納得いかないぜ」
ライオネルは頭を下げる。
「すみません。私にもやらなくちゃいけないことがあるんです」
リルは顔を伏せ手袋に包まれた右手を左手で抑える。 そして、口を開いた。
「だけど……どうしても私の力が必要になったら。その時は相談をしに来てください。出来るだけ力にはなる……つもりです。友達として」
リルは一礼をすると奥に戻って行った。
「何かあいつも複雑そうですね。ストラさん」
ライオネルがストラの方を見るとストラは難しい顔をしている。
「ストラさん?」
「あの腕、まさかね」
ストラは小声で呟くと残っていたオムレツに手をつけた。