第十六話 悪魔〜恐怖〜
「私を殺す……だと」
トルチャーは下を向いて震える。
「どったの?」
「舐めるなぁぁ!!」
トルチャーは一気に近付くと右手で小柄なリルを叩く。リルは壁にぶつかる。轟音を立て壁は砕ける。
「ふふふ、フハハハハハぁ。どうだ、見たか!!何が悪魔じゃ、わしはそんなものには負けん。わしは最強なんじゃ」
ひとしきり笑ったあと、トルチャーは出口に足を向ける。
「さて、逃げた奴らでも追うか」
「おい、何処に行くんだよ?」
聞こえる筈の声に驚きを隠せないでトルチャーは振り返る。
「まさか、あの程度のことでオレが死んだとでも思ったのかよ」
リルはゆっくりとトルチャーに近付く。トルチャーは思わず後ずさる。
「バカなぁぁ」
トルチャーは大量の火球を撃ち出す。が、全てリルに届く前に消えてしまう。
「これは!!馬鹿な30人以上もの魔法使いの魔力が、たった1人に劣っているというのか」
「魔族の魔力に、それ以上のオレの魔力だ。当然だろ」
言いながらリルは落ちていたスピンドルの大鎌を拾う。
「飽きてきたし、そろそろ終わるか?」
微笑んで放たれた言葉にトルチャーは顔色を無くし出口に走り出す。
「おいおい、逃げるのはねぇだろ」
リルは一瞬で回り込む。そして、鎌を一振りする。
「ぐあぁぁぁ」
トルチャーは斬られた太ももを抑える。
「これで、もう逃げられない」
リルが笑みを浮かべながら言うとトルチャーは苦々しい表情を浮かべると右手をリルに向け魔法を使おうとする。しかし、魔法が撃たれる前に、右腕はゆっくりとズレて床に落ちる。
「これで、魔法も使えない」
トルチャーは喚きながら左手でつかみかかろうとする。
「ククク。これで、両腕が無くなった」
リルは、そう言って頬に飛んだ返り血を舐めとる。トルチャーはもはや倒れた体を起こすことも出来ずにいる。
「ハハハハハ。まるで芋虫だな。おい」
我慢出来ないように大声でリルは笑う。
「おい、最後に言うことはあるか?」
リルはトルチャーの髪を引き顔を上げさせると聞いた。
「化け物め」
トルチャーが吐き捨てるように言うとリルは笑みを深くして言う。
「そうさ、オレは悪魔さ」
リルは大鎌を振り下ろしトルチャーの首を断ち切った。