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第十五話 最強〜危機〜

暗い部屋では1人の男が椅子に座り、何やら作業をしている。男の前には空の巨大なフラスコが設置されている。そこにコツコツと足音が響く。


「宰相。いえトルチャー。誘拐、及び反逆の罪で、あなたを逮捕します」


 スピンドルが言うと後ろにいる二人は武器を構える。


「ほぅ、もう来たのか。しかも、三人も」


男は振り返って三人の顔を見渡す。 そして、スピンドルのところで視線を止める。


「懐かしい顔じゃな」


「8年振りになります。どうやら、騙し討ちが得意なのは変わらないようですね……出てきたらどうですか?」


スピンドルは背後に手の平を向けると炎の玉が打ち出される。弾けた火の玉の煙の中から奇妙な獣が飛び出し〇〇の横に座る。大きさは馬よりも二周りは大きく、鋭い牙が口から見え隠れしている。 胴体は固そうなしま模様の毛皮に包まれている。


「ほっほ、こやつの気配に気がつくとは流石は赤の魔法使い、ゾル・スカート。戦闘能力だけなら帝国一と言われるだけはある。緑の魔法使いは気づけなんだ。紹介しよう。我が最高傑作、アーサーじゃ」


〇の声に答えるように獣、アーサーが雄叫びを上げる。


「ゾル・スカートと言う名は捨てました。なるほど、これが30人以上の魔法使いの魔力を持った魔獣ですか」


「ほっほっほ、気付いておったか。そう、こやつは魔力を入れる器。本当の使い方は」



トルチャーが右腕を差し出すとアーサーは鼻先をそれに近づける。するとアーサーの体はゆっくりと〇の右腕に入っていく。そして、トルチャーは右腕から肩にかけて二倍ほどの大きさに膨らみ、しま模様の毛皮に包まれ爪は鋭い刀のように伸びる。


「準備完了じゃ。どこからでもかかって来い」


 スピンドルは鎌を構える。


「いいですか、ストラは前衛、殿下はサポートを」


スピンドルの指示に従いヨハネは後ろに下がり、ストラは大剣を引きずりながらトルチャーに向かい飛び出す。勢いに乗ったままストラは大剣を振り下ろす。


「何!!」


しかし、想像していた感触をストラは得られなかった。避けられるのは想像していた、しかし、実際は腕で、しかも無傷で受け止められている。


「いい太刀筋じゃ。しかし、今の私にそんなものは通用せんよ」


トルチャーはそう言うと右手を振り払い、ストラをふっ飛ばすと背後に振り向き雷の玉を飛ばす。雷の玉はストラを囮に背後から切りかかろうとしたスピンドルに直撃する。辛うじて鎌で防御するが雷は鎌を通電する。


「くっ」


「やはりの、お主ならそうすると思ったぞ」


トルチャーはゆっくりとスピンドルに拳を振り上げる。と、そのまま横にステップして横にズレる。そこをヨハネが撃った風の刃が通過する。刃は、そのままスピンドルへと向かう。スピンドルは辛うじて横に跳び、それを避ける。


「どうした?わしはまだ、半分も力を出しておらんぞ」


トルチャーが嘲るように言う。


「ストラ、殿下、下がってください。奴は戦いの場を操るスペシャリストです。下手な攻撃は仲間討ちになります。私が一気に決めます」


スピンドルはヨハネとストラが自分の後ろに下がるのを確認すると鎌を置き目を閉じてトルチャーに向け両手を上下に大きく開く。


「ほっほ、来るか。では」


トルチャーも同様に両手をスピンドル達に向ける。


時間と共にスピンドルとトルチャーの手の平の前に赤い炎の玉が少しずつ大きくなっていく。それが人と同じ位の大きさになった時、スピンドルは目を開く。


「くらいなさい」


大きな火の玉が向かってくる中、トルチャーは火の玉がスピンドルと同じ位の大きさになるのを見計らい撃ちだした。トルチャーの火の玉はスピンドルのを飲み込むと大きさを増し、スピンドルを飲み込み、爆発した。


「隊長!!」


ストラが叫び声をあげる。


「流石じゃの。あれをくらい生きているうえに後ろの二人に被害が及ばないように衝撃を受け流すとは……しかし、もう戦う力は無いだろう」


煙が晴れると体中から血を流しながらも立っている姿があった。


「……ストラ、殿下を連れて逃げなさい」


スピンドルはよろめきながらストラに言う。ストラが困惑した表情でヨハネを見る。


「殿下……」


「私のことを気にする必要はありません。あなたの思うようにしてください」


ヨハネがそう言うとストラは頷き、スピンドルの前に出て構える。


「隊長1人を犠牲には出来ませんよ。それに、負けと決まったわけではないですよ」


ストラの言葉を聞いてトルチャーは鼻で笑う。


「わしの戦術に強大な魔力が加わった今、わしは無敵じゃ、そんなこともわからんのか?」


「私はまだ戦える。可能性を捨てはしない」


「ふん、では死ぬがいいわ」


トルチャーはそう言うと魔獣の宿る右腕をストラに振り下ろす。ストラはそれを大剣をかざし防ごうとした。


鈍く光る鉛色大剣のかけらと共に赤い血をまき散らしながら肌色の細長い棒のようなものが宙にまう。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


ストラは右腕のあったはずの肩を左手で抑えながら叫び声をあげる。体を狙ったトルチャーの一撃わ大剣を破壊した。そして、僅かに軌道のそれた、それはストラの右腕を肩から断ち切った。


「ストラ」


スピンドルは駆け寄ろうとするが、足がもつれ倒れてしまう。


「黙ってみておれ、お主は、この女を倒した後、始末してくれよう」


スピンドルに言うとトルチャーはストラの頭を鷲掴みにする。


「愚か者め逃げてれば良かったものを」


「愚か者はおめーだ。クソ野郎」


突然、背後に現れた声に思わず振り向いたトルチャーの右腕に強烈な一撃が入る。解放されたストラを受け止めるとスピンドルの近くまで下がる。 そこで、ようやくトルチャーは新たな敵の全貌を見る。黒い肩まで伸びた絹のような髪、血よりも赤いルビーのような瞳、肩から右腕、全てを包む怪しく光を反射する漆黒の甲殻、背を覆う爬虫類のような翼。リルと呼ばれた少女だった。


「リルさん……ですか?」


スピンドルが驚きながら聞く。


「あぁ、ライに全部、話してある。詳しくはアイツに聞け。納得したらさっさと帰れ、邪魔だ」


「けれど」


「邪魔だっつってんだろ!!」


怒鳴られ、納得いかない表情ながらもスピンドルは気絶しているストラを抱え、ヨハネを連れ添って上へ戻っていく。


「待たせたな始めようか。死のダンスを」


トルチャーは混乱していた。突然、現れた異形の少女。その少女の放つ圧力。そして、無敵になった筈の自分が感じる震えの正体。


「お前は何者だ!!」


思わずトルチャーは怒鳴っていた。


「魔族を取り込んだ魔法使い。お前を殺しに来た悪魔だよ」


リルはそう言って微笑んだ。


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