第十三話 通路〜犯人〜
「ここが入り口です」
ヨハネは歴代の王の肖像画の並ぶ通路の現在の王の肖像画のかかっている場所に立ち止まると肖像画を右にずらした。そこには人一人が通れるくらいの幅の長い階段がかかっている。所々に松明らしき光が暗闇に怪しく揺れている。
「では、私、殿下、ストラの順番で行きます。いいですね」
二人が頷くのを確認してからスピドルは中に入っていった。
十分ほどすると階段は終わり、平坦な道となっていた。幅も馬車、三台分くらいに広がった。
「殿下、犯人に心当たりはないんですか?」
ストラが聞くと、
「あります」
答えはあっさりと返ってきた。
「ここは有事以外は、ある人物のみが入り管理をしていたんです」
「ある人物とは?」
スピンドルが聞くと暫くしたあと言いにくそうにヨハネは答える。
「帝国宰相、トルチャー・デスト」
「それって」
ストラは驚きの声をあげた。
「そうです。考えられる一番の容疑者は英雄にして最年長の色持ち。創造者。……灰の魔法使いです」
「なるほど、リルさんに聞かせなくて正解でしたね。良い判断です殿下」
「聞いたら意地でもついて来たんだろうな。たとえ、自分がどんな状態でも」
「ええ、分かり易い性格なんですよね。人をすごく大切にしている辺りが」
「それにしても、机を壊したのには驚きました」
ヨハネが苦笑いしながら言う。
「本当ですよ。あれは予測できませんでした。殿下?」
スピンドルはそう言ったあと後ろのヨハネが立ち止まったことに気付き振り返る。
ヨハネは直角につきでている脇道を指差す。
「ここは本来、無いはずの道です」
「じゃあ」
「ええ、恐らくこの奥にいるんでしょうね」
スピンドルが言った瞬間、暗闇からスピンドルに向け棍棒による一撃が振ってくる。スピンドルは何食わぬ表情で半歩、後ろに下がりそれをかわすと視線を棍棒を振り下ろした一つ目の巨人の胴体を剣で逆袈裟に切り裂く。そして、奥の暗がりに声をかける。
「言っておきますが、今日は本気です。言ってしまいましたからね」
スピンドルは静かに剣に触れる。触れるとスピンドルの剣は光に包まれ、姿を変え始める。まず、柄の長さが何倍にも伸び細くなっていく、刃は伸びきった柄の側面から出てゆっくりと大きくなっていく。ほんの5秒足らずの時間でスピンドルの持っていた剣は巨大な大鎌へと姿を変えていた。それに少し遅れて、暗がりから飛び出した三体の一つ目の巨人の胴を一振りでまとめて切り裂くとスピンドルはヨハネたちの方へ振り向き声をかける。
「じゃあ、いきましょうか」
「隊長、その鎌は」
ストラが驚いた表情で言うとスピンドルは困った表情を浮かべる。
「私は昔、大きな罪を起こしてしまったことがありましてね、その時、本当の名前と身分を捨てたんです」
その闇を纏った表情にストラもヨハネも何も言えずに黙って聞いている。
「ただ、これだけは捨てられなかった。しかし持っていれば、また、過ちをおかしてしまうかも知れない。だから、せめて、形だけは変えておこうと思ったんです。まあ、暗い話しはこれくらいにして、そろそろみたいですよ」
目の前の通路は切れ、大きな部屋になっているのが他の二人にもわかった。
「さて、いきますか」
三人はスピンドルを先頭に部屋に入っていった。




