第十二話 怪物〜罠〜
僅かな知能と魔力を探知する能力を与えられたそいつは魔力を持った者を連れて来いという単純な命令に従い夜の街を徘徊していた。同時期に生まれた兄弟はほとんどがやられたが次々に新しい兄弟が偉大なる母から生み出された。今は昨日、生まれた弟と共に行動しているが数ヶ月前に比べ魔力を持った者が中々、見つからない。夜明けを告げる朝日が差してきたため家に戻るかというときにそいつはようやく見つけた。黒い髪に黒い服、そして右手に奇妙な手袋をつけている小さい女だ。焦らずに弟に逃がさないように回り込むように指示を与える。そして、戸惑う女をそいつは一気に丸呑みにした。なんとなく違和感を感じたものの小さかったせいだと納得すると岐路についた。
「かかりました」
城の会議室で閉じていた目をそっと開きながらリルは言った。
「そうですか。今、どこにいますか?」
スピンドルが問いかけながら立てかけてあった長剣を手に取る。少し遅れてストラが大剣をヨハネが長剣を取る。
「今、東の方からこちらの方に進んでいます」
リルが言うとスピンドルは少し驚いた表情を浮かべる。
「ここにですか?」
「はい、多分これは地下を通ってきています」
「地下通路」
ヨハネがポツリと呟く。スピンドルがヨハネを見る。
「王家の者と一部の高官のみに教えられている脱出用の地下通路がこの町には通っています。地下だとしたら、多分そこを通っているんでしょう」
ヨハネが言い終わるとほぼ同時にリルが声をあげる。
「止まりました。ちょうどこの下です」
「殿下!!」
スピンドルの声にヨハネは頷く。
「案内しましょう。秘密の地下通路に」
ヨハネが扉から出て行くのを見てリルも立ち上がろうとすると、その肩をストラに抑えられる。
「ストラさん?」
「だめだよ。あんた、魔力ほとんど残ってないだろ。後は大人にまかせておきな」
そう言うとステラは最後に笑顔を見せて扉から出て行く。
「リルさん、病院にいるライを頼みますよ。何が起こるか分かりませんから」
「スピンドルさん」
「大丈夫ですよ。私も次は本気を出しますから」
心配そうなリルの肩をスピンドルは軽く叩くと他の二人と同様に出て行った。
一人残されたリルは右手を握り締めた。