第十一話 言いあい〜立案〜
「この町に残っている魔法使いを全員集めるべきです。こんな状態じゃ次に襲われる場所も特定できません。けれど、ひとつに集めれば」
スピンドル、ストラそしてヨハネを前にリルはそう言った。
「それはそうなんですけど」
ヨハネは言葉を濁してスピンドルへと視線を送る。
「魔法使いって人種は、とても厄介でしてね。魔力っていう普通の人間にはない力を持ってるせいかプライドばかり無駄に高い人ばかりで。自分の身は自分で守れるって考えの人が大多数でして」
スピンドルは苦笑いを浮かべる。
「しかも、残ってる魔法使いは、ある程度自分の力に自身のあるやつばっかりで余計にその傾向が強いときた」
最後にストラが両手を挙げお手上げだという意思表示をする。リルはそれを見ると黙ってしまう。
「我々は常に後手回ってしまっています。何とか現状を打開する手がないといずれは全滅してしまいます」
静まりきった会議室でスピンドルの声が響く。
「私が囮になりましょう」
全員の視線がそう言ったヨハネに集まる。
「殿下、それは危険です」
「いえ、私が一番、戦力になりませんし魔力も強くはありませんから取り込まれても大して問題にはならないでしょう」
「ですが」
「魔法使いを狙うってことは魔力を感じているってこと……それなら。あのっ」
ぶつぶつ呟いたあとリルは、何かに気付いたのか言い争っている二人に声をかけた。が、二人は気付かずに言い争いを続ける。
「あの」
「無駄だよ。ああなったら暫くとまらない」
ストラがどこか諦めた様子で教える。
「そうですか」
リルは頷くと左手を握る。そして、それは次第に光を帯びていった。
「だから、そんな危険なこと他のものに任せてください」
「私は皇子だ。この国の民、全てを守らなくてはならないんだ」
「しかし」
スピンドルが反論しようとした瞬間、隣でまるで爆発のような音がして思わず見るとリルの左拳が分厚い机に大きな罅を入れているのが目に入った。
「あの、ですね、私に考えがあるので聞いてもらえますか?」
リルが笑顔で言うと二人は顔を青ざめさせて頷いた。