第十話 見舞い〜方法〜
「暇だな」
ライオネルは病院の天井を眺めながらぼやいていた。傷は致命傷でないとはいえ浅くも無いため動くことは出来ず、かといって大人しく読書をできるような性格でも無かったため朝から同じことを既に十回は呟いている。
その時、ドアをノックする音が聞こえライオネルは上体を起こし返事をした。
「開いてるよ」
ライオネルが言うと病室の扉はゆっくりと開く。
「思ったより元気そうですね」
果物の入った篭を持ったリルが言うとライオネルは首を横に振る。
「暇すぎて死にそう」
ライオネルが言うとリルは少し笑いベッドの脇の椅子に座る。
「じゃあ訓練でもすればいいんじゃないですか?」
「しばらくは体を動かすなって医者に言われてんだよ」
「じゃあ、こんなのはどうですか?」
リルはそばにあったティッシュを手に取ると魔力を流し始める。ティッシュは一人でに動き始め、次第に形を作っていき最後は鳥のような形になった。
「魔力操作の訓練です。ライオネルさんは少し魔力に無駄がありますから」
リルはそう言ってからライオネルが自分のことをじっと見てるのに気づく。
「何か変なこと言いましたか?」
リルが聞くとライオネルは黙ってリルを指差す。
「それだよ。前から思ってたんだけど何でいつも敬語?」
リルは少し戸惑った表情をする。
「これは、癖というか」
「それにライオネルさんなんて他人行儀な言い方しなく、ライでいいよ」
「でも……」
「でももへったくれもあるか!!」
ライオネルはリルの両肩に両手を乗せ詰め寄る。
「俺とお前は友達だろ!」
「分かっ……た。ライ。これでいい?」
リルが恥ずかしさに顔を赤らめて言うとライオネルは手を話し微笑んで頷いた。
「それでさっきのどうやんだ?」
「さっきのどうやんだ」
「さっきの?」
リルが首を傾げるとライオネルは机に置いてある鳥の形を模したティッシュを指差した。
あぁ、と頷くとリルは鳥を手に取る。
「まずは魔力を紙に流す。次に流した魔力で形を作っていく。紙は形を分かりやすくするためにあるの。慣れれば」
リルは鳥を持っていない方の手を上に開くと逆の手の紙の鳥と寸分も違わない魔力の鳥が形作られている。
「ふーん」
ライオネルもティッシュに手を伸ばし魔力を込める。が、次の瞬間にはティッシュはボロボロに散ってしまっていた。
「魔力を込めすぎ」
リルが注意すると、分かってると返事をして、次のティッシュに手を伸ばす。魔力が少なく、動かなかったり、やはり、込めすぎたりし、どうにか鳥と分かる形になるころには、すっかり夕方になっていた。
「じゃあ、そろそろ、帰るね」
そう言ってリルが立ち上がるとライオネルは一旦、手を止めてリルをみる。
「ああ。そういえば仕事は?休みなのか?」
「そういえば言って無かったね。私、あなたの部隊の手伝いをする事になって、それまでは、お店はお休み」
ライオネルは驚いた表情を浮かべる。
「お前、無理って」
「うん、けど私のやらなくちゃいけないこととあなた達のやることが重なってきたから協力はするわ」
「そっか」
最後にお大事にと言うとリルは病室から出た。