ノロマ……なんだよ!
「やっべー!ドキドキしてきた!」
「あんたそんなデカいのに心はちっさいのね」
ボス戦前にまた太田と飯村が言い争う。
「お二人とも〜喧嘩はダメで……!」
そして内田は相変わらずのドジだ。
たった四人でこんなに個性豊かなのに彼は驚きを隠せない。
それは彼が普通だからで本当は人それぞれ個性があるのだろう。
彼がニートになったのは二次元にはまったのもあるが友達がいなかったこともある。
彼は別に友達がいらなかった訳ではない。
何事にも普通で感情を表に出さなかった彼は、周りからは近寄り難く感じられていたのだろう。
だから今の状況に彼は戸惑う。
周りに人が居て、こんなにも仲良くしてもらっている状況に彼はどう振る舞えばいいかが分からなかった。
「佐藤さん?大丈夫ですか?」
彼は大丈夫と伝え、今は何も考えずボス戦に集中する事にした。
「それじゃ……行きますか!」
ボスがいる部屋の扉を開いた。
すると同時に彼はボスへと向かっていった。
彼は攻撃を重ねていく。
内田が後ろから魔法攻撃、飯村が彼が物理スキルを使う度に回復。
物理スキルはHPを消費する。
「ちょっとでかぶつ!ボスはこっちに来ないから佐藤さんと芽衣花の援護に行って!」
彼はこのままだと埒があかないと考え、補助スキルを使用する。
「パワーレイズ!スピードレイズ!」
パワーレイズとスピードレイズは一分間力と速度を上昇させるスキル。
最大5回重ねがけが可能。
ボスのHPも少なくなってきた。
「あとちょっとですよ!みんな頑張って!」
彼は最後の力を振り絞り畳み掛ける。
「ノロマ……なんだよ!消えろ!"粉砕拳"!」
最後に使用したスキルでボスは消滅した。
「かっ……」
「「「勝ったぁぁぁ!!!」」」
彼以外の三人が大きな声を出す。
「うるさい」
だが彼の表情には少し笑ったようにも見えた。
そして彼達は街へと帰還した。
「いやー!こんなに充実したダンジョン攻略は初めてだったぜ!」
街に戻ってきた彼は少し浮かない表情をしていた。
「佐藤さん?どうしたのですか?」
彼は今思っている事をみんなに伝えた。
「俺さ……人付き合いが苦手なんだ。だから今回はパーティ組んでくれてありがとう。そしてこれからも俺と一緒にパーティを組んで欲しい」
少しの間があった後三人は一緒に。
「「「当然!!!」」」
こうして始まった彼の冒険者としての生活。
そしてこの世界で出来た仲間達。
彼の冒険者としての生活はまだまだ始まったばかりだ。