EP7--悠野涼香1――此処に至るまでの回想と疑問
2022年 11月24日 23時55分
お父さんの栄転が決まり、お父さんとお姉ちゃんと私。三人で新しい生活が始まる。
そのことに期待と不安を感じながら、私たちの新しい家のある[大崎市]へと向かっていた。
その途中、トンネルに入って10秒程たった時だった。私たちが一人一台持っていたスマートフォン。
それらすべてが突然けたたましい大音量でなった直後、大きな揺れが私たちを襲った。
お父さんが大きな声で伏せろと叫んだのが聞こえて急いで身をかがめる――何かが車に当たり甲高い音と共に衝撃が走った。
回る、回る景色が回る。その不快な感覚に私は耐え切れず意識を手放した――。
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2022年 11月25日 0時41分
――何が起きたのか?どうして、こんな状況になっているのか?
目が覚めたとき、私は火の手が上がった車の中にいた。
そばにいたはずの父と姉の姿は、どこにも見えなくなっていた。
そんな中私一人。迫りくる炎は、私を飲み込もうと、その勢いを増そうとしていた。
パニックになりそうだった。泣き叫んで、恐怖に耐え切れず意識を手放してしまいたいとさえ思った。
そんな時、私の名前を呼んでくれた、手を差し伸べてくれた。抱きしめてくれた見知らぬ少年。
その少年は、今も私を守るように抱きしめてくれている。
少年をじっと見つめる。
少年は意識を失い、あちこちに火傷を負ってはいたが、荒い呼吸や触れている体のぬくもりから生きているということが伝わってくる――でも。
私たちの車の屋根が焼け落ちて、そのあと大きな爆発が起きた。その時は死んでもおかしくなかったはずだ。
面識のないはずの私を、文字通り命がけで救ってくれたこの少年はどうしてここまでしてくれたんだろう。
「あなたは、どうして……」
意識を失っている少年の頬を撫でながら問いかける。しかしその答えを返すものは誰もいなかった。
自分のことを守ってくれた勇敢な少年の顔を見ていると、なんだか嬉しくなって少年の頬を撫で続ける。子供っぽい少年の顔を少しの間見つめていた。
ふと思い出す。少年が私の名前を呼んでくれていたことを。どうして私の名前を知っていたのだろう?
疑問に思い、周囲を見回す。少し離れた場所に父と姉が、寄り添うように座っていた。
遠目から見た限り大きな外傷はなさそうだ。
「よかった……お父さんもお姉ちゃんも無事だったんだ……」
目が覚めたとき、いるはずの場所にいなかった二人。その二人の無事が確認できたことが嬉しかった。
――意識を失っている二人。その二人を安全な場所に連れて行ってくれた人がいる。
そして、それはおそらく目の前にいる、私を抱きしめたまま意識を失っているこの少年なのだろう。
周囲を見回しながらもずっと撫で続けていた頬を両手で包み込む。
少年の顔が少し誇らしそうな表情をしてるように見えた――ちょっと可愛い。
嫌がるそぶりを見せない少年に暖かい気持ちと感謝の念が湧きだし、溢れる。
「あなたは、私だけじゃなくてお父さんたちのことも救ってくれたんですね……」
私だけじゃなく、私の大切な人達も救ってくれていた。何故私の名前を知っていたのか、そんなことはもうどうでもいい。
大切なモノを全てを守ってくれたこの少年は、私、悠野涼香にとって信頼できる大切な人になったのだかから。




