作り物の街
俺は地下鉄の駅みたいな所からエスカレーターを乗ってここに着いた。普通の場所なら特に何とものない光景だ。だがここはまだ日本政府が管理している施設の中だ。決して地上に出たわけではない。ならどうして俺の目の前には沢山の建物がならんでいるのだろうか。
周りには民家やお店、交番など東京ほどではないがどこにでも至って普通の街並みだ。地図にはただの広い空間としか書かれていないがここを抜ける道筋が書いてある。だからひとまず地図通りに進むことにした。
こんなに大きな街なのに人が一人もいないなんてなんか妙な気持ちだ。はっきり言ってこの街は作り物だってことがすぐにわかる。それは上を見上げれば一目瞭然だ。この街には空がない。上にあったのは空に見立てた絵だ。雲は動かない、太陽からちゃんとしか光を感じない、そしてなりより今はもう夜のはずだ。夜なのに明るいのは流石におかしい。よってここは作り物だ。これはまるで特撮のセットに紛れ込んだみたいだ。
けどどんな目的でこんなものを作ったのだろうか?
そんなことを思いながら俺は出口に向かって進んでいた。だがそれはすぐに分かった。
ウゥゥゥゥーーー
突然サイレンが鳴り出し作り物の街に響き渡る。しかもそのサイレンは普通のものよりもかなり低く設定してある。俺はこの音を知っている。過去に動画サイトで見たことがある。このサイレンはミサイル攻撃や核の脅威にあった時に流れるサイレン、国民保護サイレンだ。
「これヤバくね?」
俺はとりあえず逃げることにしたがこれから何が起こるかわからないので逃げようもない。
パァン!パァン!パァン!
その時あちこちでなにかが弾けるような音がした。俺はその音がした方向を振り向くとさっきまであった建物が消えていたのだ。
「そういうことだったのか…」
もう察しがついているだろう。この街は現象を操作するために作られた実験場だったのだ。だからいろいろな建物を用意して様々なパターンを想定していたのだろう。
そうとわかれば問題ない、俺は特異体質だ。現象の力を受け付けない俺は全然大丈夫だ。ただひとつ心配なのが実験をしているということはどこかに管理をしている人間が当然いるはずだ。見つからないように慎重に行かなければならない。
「ん?」
歩いていると目の前を誰かが横切った。この街には誰もいないはずじゃないのか?
「ちょっと待って!」
俺はその人影を追いかけた。普通だったらそこは無視して逃げるようなもんだが以外にもその人影が立ち止まってくれた。
「君は誰なんだい?どうしてここに?」
その人影はゆっくりこちらに向かって振り向いた。
その顔は少し微笑んでいた。




