もしもの話
「それであなたいつまでこんな体勢でいるの?いい加減うざいんだけど。」
「さあ?いつまでだろうね?」
「あんたふざけてるの?」
「別にふざけてないよ、俺は至っては真剣さ。」
どくわけないじゃん、こんなチャンスもう二度と訪れないだから。
あとは彼女の注意を反らせばいいのだけれどなんせ偶然の産物とはいえ密着度が半端ない、後ろから押されでもしたらすくに互いの唇が触れあう状況だ。
だからと言ってこの体勢を少しでも崩すと彼女に少しの自由を与えることになる、そしたらもうアウトだ。
俺はおさらば、あの世行き。
まあ遅かれ早かれそうなるけどその前にやることがあるのでそれまでは生きなければならない、どんな手を使ってもね。
ならば
「ねえ、委員長ちょっと話をしようか?」
「あんたいきなりなに言ってるの?頭でも打っておかしくなった?」
「そうかも知れないね、だけどもしそうなったとしたらそれは委員長のせいだよ?」
「はぁ~?なにそれ?」
「あんだけ殴ったり蹴ったり注したりしたら普通おかしくなるよね?それをやったのは誰かな?」
「…分かったわ、聞いてあげる。どうせこれで最 後なんだから。」
最後…か…。
まあそうなるかな。
「分かった、ありがとう。」
「で、なんの話?」
「もしもの話だよ。」
「もしもの話?」
「そう、もしもの話、もしこの世界から現象というものが無くなって俺達も特異体質じゃなく普通の人間だったらどうだったかな?」
「バカじゃないの?そんなことあるわけないじゃないの!」
「だからもしもだって!も・し ・も!」
「…私達は普通に高校生活を送ってて私の…も…一緒に仲良く…遊んだり…してた…。」
彼女の声が途中から震え目から涙が流れている。
委員長も本当はこうなりたかった。
途中でこうなっていたはずだった。
だけどそんなふうにはならなかった。
彼女も立派な被害者だ、この世界の誰もが被害者なんだ。
「じゃあもしかしたら5人で一緒に遊んでいたかもしれないな?」
「5人…?」
「そう5人、俺とGと委員長と委員長の親友、そして優歌の5人。」
「ありえない…絶対ありえない。」
「ありえないわけないよ。」
「なんでそんなこと言えるの?」
「だって今までありえないことがたくさん起きてきたんだ、それに比べたら俺達5人がそろうことなんて全然ありえるじゃん。」
「…。」
「そんで学校でわんさかやって、放課後は一緒に帰ったり遊んだり、どこかに出掛けたりきっと楽しいぞ! 」
「ほんと…、もしそれがあり得たならどんなに楽しいことなんでしょうね?」
「だろ?だからありえないことなんてありえないだよ!もうちょっとだけ希望や夢を持ってもいいんじゃないの?」
「そうね…、ちょっとだけなら…。」
「はいっ!これでもしもの話は終了!ご清聴ありがとうございました!」
「とこれでY?」
「さっきから右腕後ろに回して左腕だけで支えてるけどなんなの?疲れない?」
「ああ、これね?これはね…。」
「だからなに?」
「さいごに委員長にこれを返そうと思ったんだ。」
俺はゆっくり後ろに回した腕を彼女のほうに向ける。
そしてその手に持っていた拳銃を彼女の胸に密着させた。