変態野郎!
彼女の振り下ろした鉄パイプは結果的に俺に当たらなかった。
つまり俺は今でも生きている。
だがなんだろう、この態勢は…。
そう思っているのは俺ではなく彼女のほうだと思う。
なぜなら今俺は仰向けの彼女に抱きついている。
いや抱きついているとかなんか違うな。
覆い被さってる?
押し倒してる?
ただ乗っている?
まあとにかく俺からしたらラッキースケベなことになってるのは変わらない。
どうしてこんなことになってるって?
だって生き残るためにはこうするしかなかったじゃん。
後ろには壁があって、左右に避けようとしても
鉄パイプの機動なんてすぐに変えられるし、もし彼女が変えなかったとしても当たらない確率は2分1、半分半分。
俺にはPKのときのゴールキーパーみたいな度胸も勇気も判断力もないのビビりなのでその案も無しだ。
だから残された選択肢は前方、つまり彼女の方向、彼女に突っ込むしかないのだ。
だから俺は彼女に突っ込んだ、ダイブした、アメフトのタックルのようにおもいきりアタックした。
その結果がこれ。
彼女は押し倒されその上に俺がいる。
「ちょっ…ちょっと、な…な…なにを…。」
彼女の顔は真っ赤、こんなに近くにいるのだ。彼女が出す生暖かい息が俺の顔にかかる。
それは彼女も同じく俺の吐いている息がかかっている。
「は…はやくどいてよ!恥ずかしい!」
「恥ずかしいって誰もみてないよ。だってもうこの世界には俺達しかいないんだよ?」
「いいから早く!」
彼女が焦るのもしょうがない、普通の人ならこんなことになったら焦るに決まってる。
「ほら早くどいてよ!どうしてこんな目に…。」
「どうしてって俺さっき忠告したよね?」
「忠告ってなんもしてないじゃん、
この嘘つき!
ホラ吹き!
変態野郎!」
変態野郎は余計な気がするけど…。まあなんだ、今はそういことにしておこう。
「俺はちゃんと忠告したよ?よく思い出して。」
「だからなんて…もういいから!」
「ほら、言ったじゃん、大変なことになるよって。」
「…。」
嘘である。
あの時言ったことは全て
はったり
言い逃れ
時間稼ぎ
である。
自分でもまさかこうなるとは思ってもみなかった。
まさに偶然の産物なのだ。
けど偶然だろうが変態だろうが彼女の近くに行くことができて動きも封じることができた、こんなチャンスは二度こない。
だからここで決着をつける。
彼女にひと穴開けてやる。