男子高校生と女子高生の間違い。
何も言い返せなかった。
彼女もあの言葉を最後に何も喋らずさっきまでと同じくサンドバッグよろしく俺をひたすら
殴り
蹴り
吹っ飛ばす。
俺も彼女のなすままに
殴られ
蹴られ
吹っ飛ばされる。
ついさっきまで騒がしかったこの部屋は今この瞬間もその鈍い音だけが響いている。
せっかく男女の高校生が2人っきりで部屋にいるのだ。普通なら間違いがおきてもおかしくない状況だ。
だけど、俺と彼女に限ってはそんなことはありえない。
絶対にありえない。
だって俺達は既に間違っていたから。
お互いに取り返しのつかない間違いを沢山してきたから。
俺はともかく今の彼女=委員長はそれを自覚しているか分からない。
だけどこの結果がこれだよ。
これが普通の高校生だった子供たちが間違った顛末だ。
だからその間違ったことの断罪をするのは今なのかもしれない。
これは感覚も記憶も失って人間の心も失って化け物になった俺への罰だ。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
彼女の息遣いが遠くでも聞こえるくらい荒くなってきてる。
そりゃそうだろ、いくら調整されたといえど彼女は女子高生、ましてはその女子高生が男子高生をなんども吹っ飛ばすほどの威力で殴ったりしてるんだ、しかも何度も。
逆に今まで疲れを見せなかったのが異常だ。それに俺の知ってる委員長は…?
委員…長は…?
あれ?
なんだっけ?
俺は委員長の何を知ってるんだっけ?
まあ今いいや、そんなことを考えてる時ではない。
とにかく今の彼女は額に汗がにじみ出るくらい疲弊している。
だけどそれでも彼女は俺を攻撃することを辞めなかった。
だって今の彼女はGのこととかはもう関係ない、目の前にいる化け物=俺を殺すしか考えていないのだから。
だから彼女はいくら疲れても、汗だくになっても、女子高生がしちゃいけない表情をしてたとしても攻撃の手を緩めない。
これも全部化け物を殺すためだから。
これで何度目だろう、彼女に吹っ飛ばされるのは?
そのたんび毎度のことながら壁に当たる、感覚はないけど壁に当たるのは分かる。
何故なら壁当たらないと俺は吹っ飛ばされたまま止まらないからだ。
また壁に助けられた。
だけど今回助けてくれた壁はいつもと違う。
正式に言えばこれは壁ではない。
壁って言ったら失礼だし、もし聞かれたら確実に怒られるな。
だから謝る
「ごめん」
と。
俺は以前優歌だったものに小声でそう呟いた。