瞬間移動
さてここで問題だ。
まず人間は瞬間移動はできない。
ましては高速で動くこともできない。
だけど俺は高速で移動していた。
もう少し詳しく話すと俺は彼女の耳元のあたりで「バカ」と呟いた。
するとどうだろう?次の瞬間彼女と密着していた俺ははるか遠くの部屋の隅まで移動していたのだ。
ではなんでこれはこんな現象に陥ってしまったのか?
考えるまでもない…。
答えは彼女に殴られたりして俺は吹っ飛ばされたのだ。
普通だったら痛みとかで気づくもんだけどあいにく今の俺には痛感も触覚も無くなってるから気づくわけがない。
唯一分かることといえば血の跡で吹っ飛ばされたライン分かることともう1つ…。
彼女は凄く怒ってることだ。
彼女は俺に殺意ともとれる視線が俺をロックオンするかの如く襲っていくる。そしてそれはゆっくりと近づいてくる。
彼女はよっぽどバカと言われるのが嫌だったのか本能的に俺を殴ってた。
その証拠に彼女は刺したナイフを放置して殴った、つまり彼女のナイフは俺の腹にまだ刺さっている。
「これじゃないんだけどな。」
今の俺ならそのナイフを抜くことなんぞ容易い、だけど抜いたら大量の血が流れてくる。
それこそ出血多量でただでさえ寿命がマッハで縮むどころか即死だ。
よってこのナイフは抜かない、文字通り腹に隠す。
「Y…、今私のことバカって言ったでしょ?」
そんなことを考えていたら絶賛怒りマックスの彼女がまた殴れる位置まで近づいていた。
「言ったよ、それがなにか?」
「私がバカって言われるのが嫌だって知ってて言ったんだよね?」
「ううん、知らない。」
これは新事実だ。
委員長は頭良いことは一緒のクラスだったりそれまでの行動を見れば一目瞭然なんだけどバカと言われるのが嫌なんて初めて知った。
これはGが調整した結果生まれた偽りの感情なのか、それとも委員長が本当に嫌だったのかは分からないけど、今わかってることは
「だけど今バカだよね。」
「また言ったな!またバカって言ったな!」
これは今まで見たことのない表情だ。
鬼の形相をした彼女は目の前にいる。
「委員長、それ女子高生がしちゃダメな顔だよ。」
「そんなことはどうでもいいの!なんで私のことバカって言ったの!」
「だってほら、委員長はGのこと知りたいでしょ?でもそれを知ってる人間は俺しかいない、委員長以外に俺しか人間はいない。」
「それはバカとなにが関係あるというの?」
「つまりGのことを知ってるのは俺しかいないのに委員長は俺をナイフで刺したりして俺を殺そうした。ここまでいえば頭のいい委員長ならもう分かったよね?」
「くっ…。」
彼女はもう正解を知っている、だから表情鬼の形相からなんとも悔しそうな顔に変わっている。
ここでやめれておけばきっとこれ以上の損傷ななかったのだろうけど俺はここでやめない、やめられない。
「だから委員長はGのことを唯一知ってる俺を殺そうとすることで、知りたかったGのことを自分から永遠に知ることができなくすることだったんだよ?」
「…。」
「脅すだけならナイフで刺そうでも一回軽く刺せばいいはずたよ、天才どころか普通の人でもそのくらい容易に思い付く。でも委員長は深くそれも何回も刺した、俺じゃなかったら死んでたよ。」
「だからなによ…?」
「普通にひとでも思いつくことを思いつかない委員長ってつまり…。」
さてもう一度あの言葉を言おう、今度はとっても嫌味に聞こえるように。
「バカだよね。」
その瞬間俺はまた瞬間移動をした、いや吹っ飛ばされた。
今度は部屋の隅からGがいた机に当たりそこで止まった。
俺はその周りを見渡す。
「ここじゃないか。」