ツンな委員長とデレな彼女
「おっとっとっ!」
ダメだ、まだ感覚がない感覚に慣れない。
とりあえずは壁に手をつけて立つことができてるけどそんな感覚勿論感じない。一歩でも動いたらまた倒れてしまいそうだ。
だけどいつまでもこの状態じゃ何にも始まらないしなー。
「ちょっと委員長こっちきてくんないかな?」
とりあえず俺は彼女を呼んだ、こっちが動けないならそっちから来てもらおう。
けれど彼女簡単に来るはずがない。だってGにあれこれされたとはいってもいいままでの会話から彼女は委員長の部分を残している。
委員長は今まで俺の言うことを素直に聞く女の子ではない、委員長はそういう性格だからだ。
だけどツンデレではない、委員長はツンはあってもデレの部分はほぼ皆無だ。
あの時までは…。
だから彼女がそう簡単にこっちに来てくれるはずはない。
「なに言ってるの?あんたが突き飛ばしたでしょ?」
ほら見ろ、やはり来てくれないじゃん。
さて、どうにかして来てくれる口述を考えないと…。
「分かった?来てあげるわよ。」
あれ?
どういうことだ?
ツンの部分じゃなくてデレの部分が出てるぞ?委員長に皆無だったデレの部分が彼女に存在している。
これもGがあれこれした結果だというのか。
まあいいや。
彼女がこっち来てくれるなら何でもいい。
そんで彼女が俺に近づいてきてやることと言えば一つしかない。
ブスッ
またあの音がした。
これで4回目、彼女は今度はどの部分を刺したんだろう?
「いい加減Gはどこにいるか言いなさいよ?さもないとあんた死ぬわよ。」
その時俺はあることに気づいた。
いいや、実は前々から薄々気づいてはいたけどなんか認めたくなくて…。
だけどこのままだと話も展開も進まなそうなので言うことにする。
そうすることが今の彼女には酷なことかもしれないけどしょうがないよね。
「ちょっとY、なにをするの!」
俺は両手を彼女の背中に回し、その手で彼女を抱きしめるように押した。
他人から見ればカップル同士のイチャイチャに見えてるけど実際は彼女持ってるナイフが俺の体にメリメリ食い込んでいるだけだ。
「ちょっちょっと!なにやってるの!このままだと本当に死んじゃうよ!」
今まで散々刺しといて何を言ってるんだ彼女は。
「ねっ…、ねぇ、痛くないの?ねえ痛くないの?」
普通は痛いけど残念、今俺には痛覚を触覚にもないのだ。だからこんなことされても全く気にしない。
ではなんで俺がそんなことをしているかというと逃げないためだ。
彼女が。
「えっ…えっと…ちょっと…。」
今の彼女は焦りと恥ずかしい気持ちでいっぱいだ。
思春期、恋愛真っ盛りな女子高生が好きだろうが好きじゃなかろうがいきなり抱きしめられたらそうなるに決まってる。しかも今回は相手が瀕死というオマケつきだ。
ほら彼女の顔はもう真っ赤だ、もちろん顔についた血の赤でではなく体温が上がった時などにでる真っ赤。
さて、無駄話もこれくらいにしてそろそろ彼女に言おうじゃないか。
それを聞いたらおそらく彼女は今より焦り、恥ずかしくなり、顔が真っ赤になるだろう。
俺や普通の人ならその言葉をきいても笑って終わるけど彼女=委員長は違う。
だってその言葉は俺どころか誰も委員長に言ったことがないはずだ。それは委員長に必要ない言葉だからだ。
だけど今の彼女にはその言葉がぴったり似合う。
「ねぇ…。」
「な…なによ…。」
「委員長ってバカでしょ。」