羞恥心
なんだろうこの感じは?
今までとはまた違う妙な感覚が今起きている。
無重力状態なんて体験したことはないけれど宇宙空間に放り投げられたように体がふわふわする。
とりあえず彼女がどいたので、どかしたので立ち上がろう、いつまでも仰向けのまま倒れてたら何もできない。
それでどかされた彼女のほうはというと、今まで全く無抵抗?でなにも喋らなかった俺がいきなり動いて喋べりだしたことによほど驚いたのか俺の血が流れてる床に手を着いてきょとんとした表情をしていた。
「なんなのよ…、あんたなんで動けるのよ?」
「さあね、そんなの俺にも分からないよ。」
「嘘だ、絶対なんかした!」
「いやだからなんもしてないって!」
そう、俺自身はなんもしてない。
G見たく現象の力を応用して傷をなかったことにするなんて技術俺にはできない。できたらもっと早く、彼女に刺されてもすぐにでもやっていた。
だから俺はなにもしていない。
俺の体が何かしたのである。
痛感っていうのは文字通り痛みを感じる感覚だ。
その痛感を無くした今の俺はどんな攻撃を受けてもぴんぴんできる。
どこを刺されても、血がどんなに流れようとも、死ぬまでは元気100倍で動ける、闘える、殺せる。
もちろんそれにもリスクがある、とても分かりやすくて簡単なリスク、俺が死ぬまでのタイムリミットが分からない時限爆弾を背負いながら最後の大仕事をしなければならないのだ。
そのためには
「うあぁぁぁ!」
起き上がろうとしたがなぜか俺は仰向けからうつ伏せになっていた。
「あれ?」
もう一度チャレンジしようとしたがうまく立ち上がれない、それどころか体を動かすことすら一苦労だ。
「あんたなにやってるの? 」
そんな俺の姿を見て彼女はどこか哀れみの眼差しで俺をみていた。
今なら俺よりも産まれたての子牛のほうがうまく立つことができそう。
触覚がないということ、つまり触ってもなにも感じないこと。
だから普段やっている感覚でやろうとしたら当然できるはずがない。
よいっしょ、よいっしょ。
俺はなんとか壁のほうに行きその壁を利用してなんとか立てるようになった。
「待たせたね。」
「別に待ってないよ、てかなにやってたのほんと?」
とりあえず今言えることは凄い惨めで恥ずかしい気持ちで俺の心が満たされていることだ。