じゃあな!
涙がでない。
目の前にはかつて親友だった者の亡骸が赤い血でできたから水溜まりの真ん中にポツンとあるのにも関わらず
涙がでない。
たしかにこの状況を起こしたのは俺だ、だけどここまでの状況にしたのは彼だ。死んでもその罪は消すことができないだろう。
きっと今頃あの世で神様に断罪を迫られてるか閻魔様に舌を引き抜かれてる頃だな。
けれども、どんなことをしても、曲がりなりにもこいつは俺の親友だ。
そんな親友が死んだにも関わらず俺は涙が出るどころか悲しいとも思わない。
ただ真顔で親友だったそれをみているだけだった。
あの実験の副作用で記憶を段々と無くしていく俺だけど実は記憶だけじゃなくて感情も無くなっていくのではないか?とその時初めてそう思った。
そんな俺は彼だったものに初めて触れる、彼だったものの持ち物を調べるためだ。
こんなことを平然とやってること事態異常なことなのにそれを異常と思えない俺は異常だ。
それに触った時同時に3つの冷たさを感じた。
1つは生きていた時の温もりを失いあとは腐るのを待つだけの亡骸の冷たさ
2つ目は彼だったものから出た血の冷たさ
そして3つ目は俺自身の心の冷たさ
水遊びをしているような音を出しながら彼だったものの体を調べる姿はとても委員長、いや誰にも見せられない。
触れるたびに飛び散る赤い水しぶきは容赦なく俺に降りかかる、いつの間にか俺が着ていた服は赤く染まり鉄と生臭い臭いで満たされていく。
それでも俺は辞めなかった。
結果的に言おう。
何も使えるものはなかった。
彼が持っていたものは銃やナイフなどの武器だけだ。
そんなもの今の俺には必要ではないから。
何でって?そんなの決まってるじゃないか。
だってこの世界で生きている生き物は俺と委員長の2人だけ。
誰かに襲われることなんてあり得ないから
委員長にもね…。
それと彼が持っていたものは武器の他に1つだけ違うものがあった。
それは直接必要なものではないがとても大切なものだ。
ないであいつがそれを持っているのか、そしてここに持ってきたのかは分からない。
けどもしかしたらあいつはこのことを話したかったのかもな。
俺は2枚あるうちの片方を彼の亡骸の上に、もう1枚を自分のポケットに入れた。
最後に親友に礼をして俺はあの建物に、委員長と優歌が待っているあの場所に戻っていく。
ありがとう
彼女達の名前を思い出させてくれて
じゃあな!
親友