絵に書いた空と本物の青空
どこまでいってもなにもないこの世界、いくら歩いても
街も
海も
川も
森も
草原も
な~んにもない。
やっぱりあの空間と同じだ。唯一あるとしたらここには青空がある。一応あそこには絵に書いた空はあった。その空には雲も書かれていたけど、この空には雲もない、文字通りの青空だ。絵空事ではない本物の空が消えずに残ってる。
だけど俺は絵に書いてたあの空もなんでだか好きだ。なんか懐かしい感じがする、絵の空って響きにいつも一緒にいたようなそんな感じするから。
「久々の外の空気は気持ちいいだろ。」
「まあそうだな、ほんの数日外に出てなかっただけなのにな。」
気づけば二人とも仰向けで寝転び空を見ていた。互いに顔を合わせることもなくただ空を見上げている。
せめてここが草原や河川敷だった学園青春物としてはバッチリのシチュエーションだな、まあここはコンクリートに似ても似つかない地面の上だけど。
「なあ?」
「うん、なんだよ?」
「お前委員長のこと好きだったんだろ?」
「はっ?お前なに言ってるの!?」
Gのド直球な質問に心臓に矢が刺さったみたいな衝撃が身体中を襲う。どんなことを聞かれるか覚悟はしていたがまさかこんなことを聞いてくるのは流石に予想外だった。
「お…お前なにいってるんだよ!そ…そんなこと…。」
「いいや、お前は好きだね。委員長のこと」
全て見透かされてる、さすがずっと俺のことを監視してただけはあるな。まあそうじゃなくてもバレてたと思うが…Gはそういうやつだ。
「そうだよ、俺は委員長のことが好きだよ。」
「ほらな、俺の思った通り!」
「でもいつから分かってたんだよ?もしかして最初からとか言うなよ。」
フッっとGが一瞬笑ったような仕草をしたけどこの流れならしょうがないな。
「高校時代からって言いたいけど確信を持ったのはあの時かな?」
「あの時?」
「委員長が俺によって誘拐されてお前が助けにいた時。」
「そりゃ当たり前だよ、委員長が誘拐されたんだから助けに行くのは!それに…。」
「それに委員長は誘拐された俺を命懸けで助けてくれたから、だろ?」
「う…うん。」
「ほらな」
「けどそれが委員長が好きなこととなにが関係あるんだよ?」
「普通命の恩人だからってその人がピンチだからって命懸けで助けるか普通、漫画の主人公じゃあるまいし、それができるのはそいつのことが好きなやつくらいだよ。」
「そうなのかな~?でもその理論でいうと委員長は俺のこと好きってことになるけど」
「そうだよ、委員長はお前のことが好きだった。そんでそんな委員長のことを俺は好きだった。」
本物の青空の下、甘酸っぱい青春群像劇が勝手にスタートしてしまった。違う、最初から始まっていた。しかもこの群像劇は清々しい青空も黒く塗り潰すほどどろどろしたヘドロのような醜いもの、底無しの沼。