この世界の温度
無が支配するこの世界にひっそりとそびえ立つ1つの建造物、俺達はそこからこの世界に出てきた。
振り返り改めてその建物を眺めると思ったより大きくはなかったが主人が出ていったそれはどこか寂しくこれからの出来事を暗示させるかの如く悲しい表情をしているように思えた。
「ほら行くぞ。」
いち早く建物から遠ざかっている主人に声に導かれて俺はそれに背を向け、ここにくるときに持ってきたものをしっかりと右手に握りしめGのあとを追う。
しばらく無言のまま俺達は歩き続ける。風も吹いていないし、気温という概念も消えてしまったのか暑くも寒くもない。だからいくら歩いても疲れないし(外的なもので)汗もかかない、スポーツをやるにはもってこいな空間だ。
「ここらへんでいいか!」
Gの足が止まりもちろん俺も止まる。
その姿はまるで軍隊のそれみたいだな、二人しかいないけど。
当然ながら周りにはなにもない、アメリカの映画とかなら古新聞や虫がいる描写があるもんだけど存在していないものなんて写すのはナンセンスというものだ。
唯一あるといえばさっきまでいたあの建物がバベルの搭よろしくそびえ立ってるのが見えてるだけであとはあの地下空間とまったく同じ、同伴者を除いて。
「こんな物騒なものいつまで持ってるんだよ、さっさとそこに置け。」
Gが俺の漏ってるものにやっと指摘をしてきた、こんな大きなもの最初から気づいていたはずなのに今までなにも言わなかったのはきっと俺が今はなにもしないと分かっていたからだ。当然俺もそのつもりはない、あったならあの時にとっくにやっていたのだからな。
「そうだな、今は必要ないもんな、今は」
「うん、それでいいよ、親友」
俺はそれを冷たくも温かくない地面に静かに置く、だけとそれにはまだ俺の体温が伝わってほんのり温かった。