薬と毒
「なにしてるんだよ、お前…。」
「なにってちょっこっと眠ってもらうだけだよ。」
Gの委員長の寝かし方は実に強引で残虐だ。何故ならばそのためだけに委員長から刀を奪い取りそれで委員長の首を切りつけたのだから。
「ちょっこっとって早く血を止めないと委員長が死んでしまうだろ!」
「おっと、それもそうだな。」
委員長の一大事にも関わらず揚々としていたGは自分のポケットとから注射器の形をしたものを取り出した。
だがその中身は透明で何も入ってないように見えた。
けれどGそれを赤い噴水と化している委員長の首を刺しそっと押し込んだ。
「なんだよそれ…。」
まるでマンガを見ているような光景が目の前に広がった。
首から出ていた赤いそれはみるみる静まっていき、それどころかGが就けた傷がだんだんと小さくなりきれいさっぱり消えていていった。
最初からその傷なんてなかったみたいに
「お前委員長になにをしたんだ!それにそれはなんだよ?」
「ああ、これは現象だよ。」
「現象ってあの?」
「あのってどのだよ?そうだよあの現象だよ。」
「けどなんでそれが委員長のケガを直すことが出来たんだよ。」
「ったく、そんなこともわかんないかよ~。」
Gは呆れた顔で俺を見つめている。
「いいか、俺達日本政府は現象についていろんな研究をしてた。それは様々な用途にわたりもちろん医療もだ。けどそれは失敗に終わった、一般人に現象を注入してもやっぱりただ消えただけだった。けど注入しても消えなかった存在がいる。それが…」
「俺達、特異体質か…」
「そうだよ、その力が体の中に入った現象を打ち消してた。それどころかケガをしている箇所に近くに打ち込めばケガを存在しなくしてくれる万能薬になったんだよ!」
「だから委員長のケガは最初からなかったようにした、そしてお前のケガも…」
「正解だ…。」
そう言うとGは自分がしていた包帯をほどきその体を俺に見せた。
さっき優歌がつけた傷は確かにきれいさっぱり消えていて無くなっていた。
「まあ、さすがに何ヵ所を同時に治す場合は傷の分だけ注入しなきゃいけないし、治癒するのに時間がかかるから少し前まではずっと苦痛だったよ。」
「それで、なんで委員長にそんなことをしたんだ?これから聞かれたくないことを話すんだろ?」
「またまた正解、よく分かったな。」
そんなこと子供でも分かるさ、今の委員長はどういう訳かGのいいなりだ、全てを知っているはずの委員長がそんなことをするわけない。ましては優歌を…。
「まあいいや、簡潔に話すよ。委員長はお前の言った通りなにも覚えない、記憶喪失だ。」
「やっぱりな。」
「記憶喪失に理由はもう分かってるよな?」
「特異体質の力を過度に採りすぎた副作用だろ?」
「その優歌っていう肉の塊と同じようにな。 」
身体中が熱い、怒りではらわたが煮えたぎってる、だけど今ここで何かアクションを起こしたらこいつがなにをしでかすかわかんないし、隣の委員長にも危害がでる可能性がある。
ここはそれを奥底に閉まっておこう。
「それで優歌と同じようにマイクロチップを埋め込み自分の僕にしたのか?」
「俺が委員長にそんなことするわけないだろ?」
「じゃあなんで委員長はお前に素直に従っている!それに記憶喪失ならなんで断片的に真実を言えたんだ?」
「お前は本当の記憶喪失の人間を見たことはあるか?」
「えっ…?」
「その優歌ってやつはお前が合った時はあの街で暮らしてた記憶が新たに構築されいた、だから平常心を保ってられた。けどな記憶を失った直後の人間は自分が何者かも知らず、ここがどこかも分からず1人部屋の中でただぶるぶる怯えてたよ。」
「その人間って…委員長なのか?」
「そうだよ、その頃の委員長は俺達の知っている委員長とはまるで違った。泣き虫の女の子みたいに毎日泣いてたよ。だから俺は委員長の接触を俺以外禁止にした。それがどういうことか分かるか?」
「なにもなくなった委員長はGにすがるしかない…。」
「当たり…、俺にすがるしか無くなった委員長は俺の言うことならなんでも聞いた。だから俺は委員長に今まで監視していた映像を彼女にみせて記憶を取り戻す手伝いをしたんだ。ただし、
俺に都合がいいようにね…!」
「だから委員長はお前に従い、断片的なことを話してたのか?」
「短い期間だったけど楽しかったよ、だってなんでも俺のいうとおりにしてくれた。だから俺はそれに報いることにしないと思ってね、手取り足取りじっくり体の隅まで教えてこんだよ…。」
俺はその時決心をした。
こいつは絶対ぶっ殺すと…。