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異世界で生きよう。  作者: 579
4.彼はこうして街で過ごす。
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72.彼はお願いごとをする。

「こんにちは、臨時保護者さん。」

「うわっ!てめぇは確か!?」


 以前道案内を務めてもらった男性を探してスラム街一歩手前の領域にやってきた俺は、人に尋ねながら彼を探し出した。

 彼は何故かその手に高そうな財布を持っているのだが、今はそれに触れないでおこうと思うのだ。


「臨時保護者さん、ちょっとお願いを聞いてもらってもいいですか?」

「はぁ?お前一体何ふざけたことを言ってやがる!」


───パァン!!


 近くにある壁を拳で殴りつけて破壊し、その一部だったものが地面に落ちていく様を見せてから繰り返すことにした。

 こちらとしてもクラリネスの安全がかかっている以上は、出来ることをしておきたいのだ。


「お願いを聞いてもらってもいいですか?」

「くそっ、一体何だってんだよ!?」

「体の一部に二本の杖が交差した刺青の入った人達を探して欲しいんです。詳しい人相は分かりませんが人数は3人います。無論1人だけでも構わないので、何か分かったらギルドに知らせて下さい。」


 そう告げてから金貨を5枚ほど取り出して彼の手に握らせると、舌打ちをしながらもそれを懐へと収めた。


「成果が出なくても知らねぇぞ。」

「勿論です。ただ、人探しには臨時保護者さんみたいな人を利用するといいと教えてもらったことがあるものですから。それじゃあお願いしますね。」


 サモンド子爵との面会時間まで余り時間がないため、次の目的地に向かって急いだ。


●●●●●


「ラヴィさんいらっしゃいます?」


 次に俺は、フィオンさんがやっている薬屋を訪れた。


 何でもラヴィさんは現在ここで働いているらしく、呼びかけに応じて店の奥から姿を現す。

 以前とは異なり肌の露出が少ない服を着ており、あの格好は客の興味を引くために仕方がなくしていたものなのだろう。


「いるわよ。一体誰・・・ってあなたは・・・。」


 彼女はこちらに気付くと、勢いよく頭を下げた。


「本当にありがとう!あなたのおかげで父さんは動けるようになったし、今は早く仕事を見つけるんだって一生懸命体を動かしているわ。私も娼館で働かなくて良くなったし、本当に感謝しているの。」

「気にしないでください、と言いたいんですが今日は少しお願いがあってきました。」


 そう言うと、彼女は少し驚いた表情をしたがすぐに笑顔になる。


「えぇ、もちろんよ。むしろ私に出来ることなら何だって言って頂戴。」

「それじゃあ申し訳ないのですが、今でも娼館に務める方達との繋がりってありますか?」

「あるわよ。まだ止めてから日も浅いしね。もしかして、いい子を紹介してほしいとか?それだったら私が相手をしましょうか?」


 彼女はそう言って肩を少し露出させるのだが、勘違いしているのを慌てて否定する。

 さすがに父親の治療を盾にその行いをするのは人として駄目な気がする上に、それをグレイシアさんに知られた日にはこの世界から俺は消滅する恐れがある。

 

「いえ、そちらじゃありません。そこのお爺ちゃんも汚い物を見るような目で見ないで下さい。」

「だって、私というものがありながら娼館なんて最低よ!!」

「あの、そんな関係になった覚えはないですからね?」


 いつの間にか後ろで聞き耳を立てるフィオンさんにそう返事をする。


 果たしてAランク冒険者を目指す者がこの姿を目撃すればどのような感想を抱くのだろうか。

 その点で言えばウィルフリッドさんもなかなか問題のある人物であり、ランクが上昇するにつれてまともな人が減っていくのかもしれない。


「体に二つの杖が交差した刺青を入れた人物が娼館に訪れたことがないか、訪れた場合は何か情報を知らないか聞いて欲しいんです。大丈夫ですか?」

「できると思うけど、それって急用かしら。」

「急用です。人探しには娼館のお姉さんたちを頼るといいと教えてもらったものですから。何か分かったらギルドに連絡を下さい。」


 これを教えてくれたのはジェドさんであり、娼婦の前では己の姿を曝け出す上に口が軽くなるらしい。


 こちら側の一般的な知識を教えてくれたのがグレイシアさんだとしたら、鍛錬の合間に変な知識を教えてくれたのが彼である。

 俺は二人に別れを告げて、最後の目的地へと向かった。


●●●●●


「ロメオさん、いらっしゃいます?」

「あら、セイランスちゃんじゃないの。どうかした?」


 今日の彼は桃色のゴムで髪を括ってポニーテールにしており、その破壊力と言えばベクトルこそ異なるものの美少女のそれに匹敵するに違いない。

 

「お願いがあるんですが、聞いてもらってもいいでしょうか。」

「いいわよ。あなたは私の姿を見ても構わずにこの宿に泊まり続けてくれているし、カナもお世話になっているもの。」

「ありがとうございます。実は体に杖が交差した刺青を付けた人達を探しているんです。知り合いの妖精さん達に声をかけてもらえないでしょうか。何か分かったらギルドに連絡を下さい。」


 臨時保護者さんにしてもラビィさんにしてもそうだが、俺が声をかけているのはサモンド子爵指揮下の兵士やギルド所属の冒険者たちとは異なる範囲で情報収集が可能な者たちである。


 二杖の光が後ろ暗いことをしている以上は臨時保護者さんの活動範囲に侵入することもあるだろうし、子爵令嬢を狙うという命を懸けた大きな仕事をする前に娼婦を抱こうとすることもあるだろう。

 それに加えて妖精さんたちがよく分からない何かを補ってくれたならば、十分な情報網になるはずだ。

人脈って大事ですよね。

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