5.彼は考える。
未だ外出する機会のない俺はスキルについて考えてみることにした。
お姉さんと交渉した結果得たものについて何も考えないというのは、さすがに怠慢すぎると思うのだ。
生まれてから僅か1年で怠慢になるなど、ろくな人生が待っていないことだろう。
お姉さん曰く、スキルは俺の魂の影響を受けているらしい。
そして俺のスキルは自分の身以外守ろうともしないし、身体の表面が硬くなるだけだ。
仮に結界やバリアのようなものなら他人を守ることだってできたはずだろう。
つまり俺は自分の身体だけが大事だということだろうか。
いや、そんな無責任な魂であるはずがない。
おそらく率先して皆の前に立って身体を張る、勇敢な魂ということにしておきたい。
真実が分からない以上、大事なのはプラスに解釈することだと思うのだ。
次にスキルの発動だが、基本的にはイメージだけで発動することができる。
ただしイメージを止めた瞬間にスキルは途切れてしまうから、長時間発動させようと思うと練習が必要のようだ。
また、発動中に触覚は一応あるのだが腕に噛み付いてみても食い込むことはなかったし、痛みを感じることもなかった。
防御膜のようなものが張られているというよりは、細胞自体が強化されているのだろうか。
スキルをこの世界の住民は所持しているのかという疑問もあるのだが、これについてはとりあえず所持しているという結論に達している。
いくら何でもこの世界にないシステムをお姉さんが俺に持たせたとは考えにくいし、彼女が作り出したならばもっと細かい要望に沿ってくれても良かったはずだ。
とりあえずスキルについて考えるのはこの辺にしておこう。
脳内ノートのせいか、これ以上は頭がパンクしそうだ。