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異世界で生きよう。  作者: 579
3.彼はこうして森を越える。
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52.彼は学ぶ。(1)

 戦闘後にダルク様とその配下達の間で話し合いが行われ、鍛錬の場所は大魔窟の中心部から離れた魔木の効果範囲内に落ち着いた。


 普段はあまり魔物に遭遇せず、戦いたい時には奥に行けば済むという便利な場所なのだろう。

 魔人の国ディランドで行うという案もあったそうなのだが、そちらは面倒事が増えると却下された。


 魔王就任は数年に一度開催される武道大会のようなもので優勝し、現魔王のうちの1人に挑む権利を得て勝利することが条件らしい。

 魔王は他国に対して戦争の抑止力として機能しているが、逆に自国では英雄のような存在として扱われており、国内にいると様々な干渉を受けることになる。

 そのため、ディランドでは鍛錬という目的を十分に果たすことができないと判断されたのだ。


 担当だが、ダルク様が光・火・風属性と近接戦闘、グレイシアさんが聖属性と一般教養、キリカさんが空属性、ジェドさんが水・土属性、レックスさんが重属性を重点的に鍛えてくれることになった。

 また、終了と共にキリカさんがデルムの近くまで送ってくれるため、移動の心配はいらないそうだ。


●●●●●


「コレ、ハ、イス」

(驚きました。まだまだ発音は不十分ですが、初日とは思えない理解力です。)


 グレイシアさんから共通語を習い始めた俺は、たどたどしくもこちら側の言葉を喋る。


 どうやら筋が良いらしいのだが、これは習得している言語の多さに関係しているのかもしれない。

 異世界言語を含めて考えると俺は日本語と幻人語を話せるバイリンガルであり、英語も基本的な文法ならば理解している。

 理解している言語が多い程、新しく言語を学ぶ際に共通点を活かして習得しやすいのではないだろうか。


 無論、俺が獣人界の孔明であることが優位に働いている可能性もあるはずだ。


(グレイシアさんの教え方は分かりやすいですから。それにしても、鍛錬という曖昧なお願いだったのに、こちら側の知識についても教えてもらえるのは凄く助かります。)


 ダルク様は『力だけ求めるなどつまらん』と言っていたのだが、適当に鍛えて放り出すことだって出来るはずだ。


 集落を出てララに出会えたことは幸運だったが、アルセムの大魔窟を越えて彼らと出会えたこともやはり幸運である。

 そのことをグレイシアさんへと伝えると、彼女は微笑みながら告げた。


(セイランスくん、確かに私達と出会ったことは幸運なのかもしれませんが、今の状況はあなたの力で手に入れたものですよ。私がこうして言葉を教えているのも、あなたが私達にそれだけの価値を示したからです。)

(価値というのは、ダルク様に一撃を与えたことですよね?)

(はい。セイランスくんの種族やスキル、そして魔法のことを考えれば本来それだけでも十分鍛えるだけの価値を持っています。その若さも伸び代があっていいでしょう。ですが、魔王であるダルク様がその時間を割くには、それだけでは不十分です。)


 生まれながらに優れた能力を持つ者はいつの時代にも一定数存在しており、そういった者たちがダルク様のもとで強くなることを願った例は過去に幾らでもあるそうだ。

 だが、ダルク様が今までにその願いを叶えたことは一度もないとグレイシアさんは語った。


(セイランスくんが彼らと大きく異なっている点として、アルセムの大魔窟を越えてきたことが一つあげられます。セイランスくんはよく分からないと思いますが、これは本当に素晴らしい実績ですよ。それに加えて、ダルク様が出した条件まで達成したのです。それだけ価値を示したのですから、どうぞ誇って下さい。)


 グレイシアさんに目を見ながらそう言われた俺は、照れると共に確かな喜びを感じていた。


 魂システムは前世の生物ならば誰もが所持しているものであり、幻人としての力も彼らの中では別段優れているわけではない。

 つまり俺が持っている力というのは場所が変わった結果評価されているものに過ぎなかった。

 だからこそ確かに自分で選択して行動した結果がこうして評価されたことで、自分を認められた気がしたのかもしれない。

 若干12歳の希少種族の少年が、数百年間踏破されていないアルセムの大魔窟を越えてやって来て、常識を覆すような力を見せながら出された条件を達成し、まだ強くなりたいと願っている。

 本人視点だとアレなので分かりにくいですが、魔王視点だと本格的に鍛えてもいいと思えるような存在です。


 気が付けば50話を超えていました。これからも宜しくお願い致します。


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