4.彼は振り返る。(1)
最初に目覚めてから1年が経った。
あれからしばらくの間はお姉さんへの苦情を脳内ノートに綴っていたのだが、こうなってしまってはもはや仕方がない。
身体の成長についてだが、今では自由に二足歩行で移動することができるし走ることもできる。
やはり獣人というのは前世の人間と比べると大分成長が早いのかもしれない。
俺がいわゆる天才児である可能性もあるのだが、その場合は脳内ノートに書かれた苦情を10ページ程削除する予定だ。
さて、気になるスキルは非常にシンプルだったものの発動させるまでに時間がかかった。
こちらも脳内ノートの苦情の一部として綴られている。
防御のための力として最初に思い浮かべたのはバリアだった。
けれど、バリアをイメージして色々な所に力を込めてみても何も起こらない。
具体的にどのようなことを試しているかは男の子なら大体わかるだろう。
次に思い浮かべたのが結界だ。
バリアと似ているものの個人的なイメージとして、バリアは円形で空中から展開するが結界は四角形で地面から展開する。
わくわくしていたのにこちらも何も起こらなかった。
その後様々な格好良い技を試したのだが一向にスキルが発動しない。
だが、いい加減なお姉さんがスキルを付け忘れたのではないかと絶望を感じ始めた頃、それはついに成功する。
まさか単純に身体が硬くなるなんて身も蓋もないことはないだろうとイメージしてみたら・・・身体が硬くなったのだ。
脳内苦情ノートの提出先はこの世界の神様でいいのだろうか。
神様「受け付けていません。」