3.彼は目覚める。
―暖かい
窓から差し込む太陽の光を感じて目を覚ますと、茶色い天井が視界に入った。
頭だけを動かして周囲を見渡せば椅子や机が目に入るから、ここは家の中なのだろう。
未だに眠気が頭の中を支配する中、ふとこうも視界が良好なことに疑問を持つ。
確か生まれたばかりの赤ん坊というのは視力が低く外界をはっきりと認識できないはずなのだ。
疑問を持ったのも束の間、更なる眠気が押し寄せて俺はあっさりと意識を手放すことにした。
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再び目を覚ますと、そこは先程と異なる場所だったということもなく同じ光景が視界に入る。
今度こそは疑問を解決するべく頭を働かせようと起き上がったところで、ふと新たな疑問が生まれた。
どうして生まれたばかりのはずの俺が、こうもあっさりと体を起こしているのだろうか。
確か体を起こせるようになるには、いくつかの段階を経なければならなかったはずだ。
いや、無論段階を飛ばせる程に優秀というのは素晴らしいことなのだが、こんなところで飛び級を披露されても困るのだ。
俺が困惑しているとドアが開き、若い女性が入ってくる。
獣耳に茶色い髪が肩までかかった愛らしい女性で、シャツとズボンを着た質素な服装をしていた。
そう、頭に獣耳のある・・・獣耳?
俺はその瞬間、これまでの疑問に答えを出すことができる一つの可能性が脳裏に浮かんだ。
恐る恐る手を自分の頭に伸ばしてみると、何やら柔らかな感触のふさふさとした耳がついている。
そして、俺は自分が獣人として生まれたことを静かに悟ったのだった。
お姉さん「・・・何か?」