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異世界で生きよう。  作者: 579
2.彼はこうして異世界で育つ。
31/159

30.彼は話を聞く。

「私が伝えられるのは魔物に関する一部のことだけです。セイクッドから伝えられた話も、代を重ねるごとにどんどん失われていきましたしね。まずお聞きしますが、魔物に対して皆さんはどういうイメージをお持ちでしょうか。」

「そりゃあ、俺達の命を奪う化け物だろ。実際に会ってみてわかったが、ありゃ敵わない。未だにこうして生きているのが信じられないくらいだ。」

「私ももう二度と魔物には会いたくない!」


 セイルさんの質問に対して二人がそう返事をする。

 彼はそれを聞くと、頷いてから話を続けた。


「そうですね。魔物は恐ろしい存在だと知られていますし、実際に出会ったあなた方ならそれは人一倍でしょう。ですが、魔物全てが強力というわけではないようです。」

「それは、強力な魔物だけが集落に訪れているということでしょうか。」

「えぇ、そうです。実際、魔物といっても下は動物と変わらない強さのようですね。」


 自分の考えを確かめてみたが、彼の返事を聞いてほっとする。

 俺達が出会った魔物がまだ弱い方だと言われたら、さすがに森を越える自信などなくなってしまう。


「そして魔物が倒されると灰になり、特徴的な部分と魔石が残ります。あちらでは、残ったものを武器や道具として加工して使うそうです。魔石は大きさに違いがあれど、魔物なら倒されると皆残るようですね。」

「どうして灰になるのか、なぜ強い部分だけ残るのか、魔石が残るのはどうしてなのかわかりますか?そもそも魔物とは何なのでしょうか。」

「すみませんが、どれも私には分かりません。」


 彼は申し訳なさそうな顔をする。

 セイルさんの先祖はそのことについて尋ねなかったか、あるいはセイクッドさんが何らかの事情で話さなかったのかもしれない。


 せっかくの機会だし、このままいくつか質問をしてみよう。


「森のことについては何か知っていますか?」

「森について・・・ですか。セイクッドは森での出来事を思い出したくなかったのか、ほとんど語りませんでした。ですが、アルセムの大魔窟には近付くな。彼はよくそう言っていたようです。」


 アルセムの大魔窟か、何とも物騒な名前だ。


 詳しく知れないのは残念だが、森での出来事が原因で1人獣人の集落に残ることになったことを考えると、セイクッドさんも進んで話したくはなかっただろう。


「森の向こう側については何か知っていますか?」

「何でも私達の集落よりずっと規模の大きい集団がいくつもあり、それぞれ大勢の人が暮らしているようですね。それに我々が見たことのないような様々なもので溢れかえっていて、我が家に残されているのはそういったものの一部です。」


 やはり森の向こう側がとんでもない所という線は薄いようだ。

 むしろ探検者がたまにこちらにやってきていたという事実を考えると、こちらがとんでもない所なのかもしれない。


「セイクッドさんは探検者だったそうですが、探検者というのは何でしょうか。」

「未知の領域を発見し訪れることに生きがいを感じる馬鹿達、彼はそう言っていたようです。何でも、何か集まりがあってその中の1つに探検者がいるらしいですね。」


 その後もいくつか質問を投げかけてみたが、これ以上有益な情報を得られることはなかった。


●●●●●


 セイルさんとの話が終わった俺たちは、レシアさんの案内で客室へと向かっていた。

 どうやら、ガイさんとセシルさんの親子で一部屋、俺で一部屋を用意してくれたようだ。


 セシル達と一緒の部屋でも良かったのだが、一人ならば先程の話を整理することも出来るだろう。

 俺は案内された部屋に入ると、荷物を置いてベッドで横になる。


 そしてそのまま先程の話を整理しようとしたところで、ドアが勢い良く開け放たれた。


「セイランスくん、遊びにきたよ!」

「・・・あの、まだ別れてからほとんど経っていないですセシルさん。」

「でもセイランスくん、昔大事なのは時間じゃないって言ってなかった?」


 確かに、出会って間もない頃に苦し紛れの話題提供でそのようなことを言ったかもしれない。

 どうやら俺は、過去の俺から妨害を受ける運命にあるようだ。


 結局その後も彼女と共に時間を過ごし、一人部屋で静かに思考にふけるという行為は夢のまた夢だった。

 そして、夕食後ようやく一人になり部屋でくつろいでいると、今度は別の人物が尋ねてくる。


「夜分に申し訳ありません、セイルです。少しお話させて頂いてもよろしいですか?」


ガイ「セシル、これから一眠りするんだがお前も一緒に・・・いない。」

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