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異世界で生きよう。  作者: 579
2.彼はこうして異世界で育つ。
30/159

29.彼は到着する。

「ど・・・ど・・・ドルカン!」

「セシル、それ最後に『ン』がついているよ。」

「いいじゃん別についていたって。」


 しりとりそのものが崩壊するから良くないんですセシルさん。

 だいたいドルカンって何だろうか。


「それにしてもお前、おもしろい遊びを思いつくじゃねぇか。」


 旅を初めて5日目、今日でレキの集落に着くはずだ。


 さすがに旅を続けて数日経つ頃には話すことが少なくなってきており、セシルがつまらなそうな顔をしていた。  

 そこで、しりとりを提案してみたところガイさんまで興味を示しこうして遊んでいるというわけだ。


 それで、ドルカンって本当に何なのだろうか。


●●●●●


「あ、家が見えてきたよ!」


 セシルの言葉に視線を遠くへとやると、確かに家がポツンポツンと見える。


「あそこがレキの集落だ。着いたらさっそくだが長のところに向かおう。」


 集落に到着したガイさんはまず近くにあった家を叩いて道を尋ねた。

 何でもレキの集落長の家はそれと分かるほどに大きいらしい。


 教えられた通りに進む俺達の視界には、明らかに他の家とは異なる大きな家が徐々に現れ始めた。


 確かにこれは豪邸と言ってもいいものだ。

 塀はないものの他の家の数倍はあるだろう敷地に2階建ての家が建てられている。


「こりゃすげぇな・・・。」

「えぇ・・・。」


 俺達は驚きながらも歩を進め、家の前に辿り着くとドアをノックした。


 しばらくすると、中から若い女性が出てくる。

 黒色のワンピースに白いエプロンのようなものを着けているのだが、俺の記憶が間違いでないのならばこれはメイド服だ。

 どうやら、レキの集落長は大変高尚な趣味をしているらしい。


「いらっしゃいませ、私はレシアと申します。本日はどのような御用でしょうか。」

「あ、えっとだな。集落間連絡を伝えに来た。」

「かしこまりました。それでは、中に入ってしばらくお待ちください。」


 彼女に案内されるままに中に入ると、そこはエントランスになっていた。

 辺りを見渡すと木で作られた何かが飾ってあったり、動物の剥製らしきものがあったりとまるで異国のようだ。


 こちら側では普通、家の中を必要以上に飾ったりしない。


「こちらです。」

「あぁ・・・。」


 ガイさんが呆けた返事をしつつ、レシアさんに従い中を進むと1つの部屋へと案内された。

 この部屋も飾り付けがされており、棚の上にはこの世界に来て初めてみる陶磁器で出来たコップまである。


「長に知らせてまいります。どうぞお寛ぎください。」


 レシアさんはそう言うと、部屋を退出していった。


 俺達はとりあえず、机と椅子が置いてある場所へと向かい席に着く。

 先程から無言のセシルを見ると、彼女の目はキラキラと輝いていた。


「セシル?」

「・・・っすごい!なにここ!?私が知っているのとぜんぜん違う!」


 今まで驚きで声が出なかったようだ。

 セシルははしゃぎながらあちこちを見渡しているが、確かにこれははしゃいでも仕方がないだろう。


 それからしばらくして、レシアさんに呼ばれてガイさんが部屋を出ていったが、セシルは相変わらずはしゃぎ続けている。


「セイランスくん、こんな家見たことある?それにレシアさんの格好!」

「いや、ないよ。おそらくこの集落に住んでいたっていう探検者が関係しているんだろうね。もしかしたら、森の向こうに住んでいる人達はこういう暮らしをしているのかもしれない。」

「わぁ・・・。だとしたら、すごくすごくてすごいね!」


 どうやら、彼女の中ではすごいのバーゲンセールが絶賛開催中のようだ。


 驚く彼女とは裏腹に、もしもこの家に探検者が関係しているというのならば、森の向こう側は全く俺の想像を超える突拍子もない場所というわけではなさそうだ。


『コンコンコン』


 俺達が訳の分からない会話をしているとドアを叩く音がして人が入ってきた。


 ガイさんとレシアさんに30代くらいの男性だ。

 おそらく彼がレキの集落長なのだろう。

 髪や髭はしっかりと切り揃えられており、獣人の男性ではあまり見たことがないタイプと言える。


 メイドさんを側に置いていることといい、色んな意味で紳士なのではないだろうか。


「やぁ、君たちが魔物について興味があるという子達ですね。私はここの集落の長で、名をセイル・ヴォルテンと言います。どうぞよろしく。」

「よろしくお願いします!」

「初めまして。トキワの集落から来たセイランスです。」


 俺達が挨拶をすると、セイルさんは一瞬驚いたような顔をする。

 これといって服装に違いはないのだが何か驚くようなことがあったのだろうか。

 いや、さらに紳士としてのレベルが高いならば、セシルに目を付けた可能性もあるのだがそれはさすがに考えすぎであることを祈ろう。


 彼が着席をするとさっそくとばかりにセシルが口を開く。


「はい!質問です。この家どうしてこうなっているんですか?」

「こら、セシル!」


 ガイさんが注意するが、セイルさんは笑顔でそれを制止した。

 その光景を見て、俺の中での疑いはますます深まっていくばかりだ。


「いえ、かまわないですよ。おそらくこのような家は他にないでしょうから、気になるのも当然です。この集落は、1人の探検者が生涯を終えた場所というのはご存知ですか?」

「えぇ、話に聞いています。」

「実はこの家こそがその探検者が過ごした場所なんですよ。」


 やはりこの家は探検者に関係する建物だったらしい。

 だがそうするとこの家はその探検者が建てたということだろうか。

 どう考えても獣人だけで建てるには技術が不足しているように思う。


「探検者の名前を、セイクッド・ヴォルテンといいます。私の先祖は彼と親しくしていたそうで、亡くなると同時にこの家を始めとした遺産を全て引き継いだのです。ヴォルテンというのは彼の家の名前らしく、それも引き継ぎました。」

「家の名前をですか?」

「えぇ、どうも森の向こう側では、一部の者は一族が共通して名乗る名があるそうで、それを引き継いでほしいと言われたそうです。」


 今一よく分からないが、セイクッドさんは貴族の類だったということだろうか。

 だが一体何をどうしたら他人に名を引き継いでほしいなどという展開になるのだろう。

 そもそも、貴族の類だとすると血縁が必要になるはずだ。


 セイルさんに対するものとはまた異なる謎が出現した。


「そのセイクッドという方は、どうしてここで生涯を終えられたのですか?」

「どうやら森の中で手酷い怪我を負ったらしく、何とかこの集落に仲間と共に辿り着いたものの帰還するだけの力は残されていなかったようです。そして彼は仲間と別れて、ここで残りの生涯を過ごしました。」

「そういうことでしたか。」


 なるほど、進んでこの地に留まったというよりも留まらざるを得なかったようだ。

 もう少しセイクッドさんについて話を聞きたい気もするが、セシルは興味を失くしたらしく脚をブラブラとさせているし、ガイさんも興味があるようには見えない。


「これでよろしいですか?」

「うーん。よく分かんなかったけどありがとうございます!」

「セシル殿には少し難し過ぎましたね。それでは、魔物についての話を聞きたいのでしたか。」


 そして俺自身、それよりも気になるのがこちらだ。

 魔物について何か有益な情報を得られるといいのだが・・・。


ドルカンはセシルが見かけた鳥に付けた名前です。

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