15.彼は神に会う。
―ここは?
目覚めると真っ白な空間にいた。
確か学校が終わって自宅へと帰る途中に小さな女の子が横断歩道を渡っているところを見たのだ。
だけどそこにトラックがやってきて俺はとっさに・・・。
いや、嘘だ。
マルガリンさんの家から帰った後に夕飯を食べて部屋に戻ったら、いつの間にか気を失っていたのだ。
きっと記憶が混乱しているのだろう。
ここに神様は落ちていないだろうか。
「君、いい度胸しているよね。」
俺が辺りを見回すと、少年が話しかけてきた。
赤い髪に、手には宝石の埋め込まれた短い杖のようなものを持っている。
「あなたは神様ですか。」
「あぁ。僕は神だ。」
この少年はまだそういう年頃のようだ。
「君、本当にいい度胸しているよね。」
「似たような空間に来るのは二度目ですから。それにこの世界に来てから驚くことはいくつもありましたし、少し免疫がつきました。」
「まぁ、いいだろう。呼び出したのは僕の方だから大目に見よう。」
さて、どこから話を切り出したものだろうか。
「地上の俺はどうなっていますか。」
「あぁ、仮死状態だね。魂っていうシステムはこちらには存在していないんだよ。だから君の世界の方法をとらせてもらった。もう時間があまりないから強引な方法を取ったけど、僕の力でちゃんと元に戻すよ。」
想像以上にアグレッシブな状況だったが、その返答が得られたことに安心する。
まさか彼に呼ばれたがためにこのまま死ぬなど、いくら神とはいえ横暴というものだ。
俺はほっとしたところで、彼に質問をする。
「それで、俺をよんだ理由というのは何でしょうか。」
「それなんだけどね。君、どうしてこの世界に来たんだい?世界を超えてくるなんて、余程の事情があるように思うんだけれど。もしかしてこの世界に何か起きているんじゃないかと、心配になっていたんだ。」
「あぁ、そういうことでしたら。」
俺は死んでからこの世界に送られてくるまでの経緯を説明する。
話が進むにつれて段々と彼の顔が引きつっていき、終いには額に手を当てているのが印象的だった。
全てを話し終えると、彼は溜息を吐きながら口を開く。
「あの女がやりそうなことだ・・・。大方、閻魔に小言を言われるのが嫌だったんだろうね。閻魔の奴あの女に下克上しないかな。僕でよければ喜んで力を貸すんだけど。」
「俺が世界を移動してきたのって、もしかして大事なんでしょうか。」
「少なくとも小事ではないね。君の前世で、私異世界から来ました、なんていう人がいたかい?あの女はいい加減すぎるんだよ。それでいて、神の中でもかなり力があるから始末におえない。」
なんだかわからないが、あのお姉さんは問題神のようだ。
「事情は大方理解したよ。とりあえずこの世界に異常が起きているわけじゃなくてよかった。後は、突然呼び出したお詫びに君の質問に答えてあげよう。違う世界で4年間過ごして、疑問に思ったこともあるだろう。」
お姉さん「・・・下克上ですか?」