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異世界で生きよう。  作者: 579
2.彼はこうして異世界で育つ。
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12.彼は狩りをする。

 森の奥に進むとどうなっているのかは分からないが、集落から近い入り口付近は特に前世のものと変わらない。

 下をみれば茶色い地面と草、落ち葉、木の根が這っており、上をみれば木々の緑とその隙間から覗く太陽の光があった。


 とりあえず母の後に続いて歩き始めるが、時折躓きそうになる。


「草原と違って歩きにくいね。」

「そうね。森は地面にいろんなものが落ちているから。森の中を歩く時は足元を良くみなさい。歩幅は小さくするといいわ。木の根に躓かないようにするのよ。」

「うん。分かったよ。」


 まるで舗装された道とばかりにスイスイ歩く彼女はそう助言をしてくれる。


「それと、周囲の音や匂いに気をつけるのね。狩りの時には獲物を見つけるのに必要だし、そうじゃない時は周囲を警戒して身を守ることに役立つわ。それと他にも警戒する方法があって・・・。うーん。これは実際に体験してもらうのが良いわね。ちょっと一人で歩いてなさい。」


 そう告げると彼女は俺が何か言うよりも早く、どこかに走って消えていった。


 ちょっと待って欲しい。

 初めての森だから母が気を使ってくれるだろうと期待していた、昨日の俺の純粋さを返してもらえないだろうか。


 まさか本当に幼気な少年を一人で放置したのではないだろうと、しばらく待ってみるのだが一向に姿を現す気配がない。

 なるほど、これが異世界式放任教育というやつだろうか。


 斬新な教育方針にここ4年間で一番大きな異世界ギャップを感じながらも、俺は仕方なく一人歩を進める。

 一人になった途端に、森が急激に怖い場所に思えてくるから不思議なものだ。

 

『ビクッ!!』


 虫や鳥の鳴き声まで気味悪く感じていると、突然獣耳が反応する。


「グァアアアアア!!」

「なっ!!?」


 それから数秒後、突然俺の前にイノシシに似た動物が飛び出してきた。

 身体の大きさは軽自動車くらいあるだろうか、長い牙が左右に付いており、どう考えても俺では勝てない相手なのが分かる。


 まずい、こちらに突進してきた。


 俺は咄嗟に硬化を使用して右に飛び側転する。

 だがイノシシもどきがこちらにやってくるよりも早く・・・


「とまぁ、まだ幼いセイくんがこうやって一人で歩いていると、ラッグみたいな大きな動物は餌にしようと襲ってくるから注意しなきゃいけないわよ。」


 いつの間にかどこからか現れた母が、イノシシもどきの突進を片手で止めていた。


 ・・・片手で止めた!?


 成長を終えた獣人になると、これを片手で正面から止められるようだ。

 以前の話は誇張でも何でもなかったらしく、武器を持とうとしないのも納得である。


「まだ教えたいことはあるんだけど、今日の夕飯をまずはどうにかしましょうか。」


 俺の命を脅かそうとしていたこのラッグという動物は、母が現れた途端に今日の夕飯へとジョブチェンジしたらしい。

 母はそう言うともう片方の手で牙を掴みラッグを横に投げ飛ばした。


「ブォ!?」


 ラッグが変な声を出し、地面を擦りながら3m程飛んでいった。

 彼女はラッグが体勢を整える前に近づき頭に向かって思い切り拳を叩きつける。


『ミシッ!!』


 身体を震わせる衝撃と共に嫌な音がして、ラッグはしばらく痙攣した後に動かなくなった。

 本当に武器を使わなくても動物を倒せるようで、しかも苦戦するどころか口笛さえ吹きそうな雰囲気だ。


「これが獲物との戦い方よ。」


 母は得意気な顔をするのだが、戦い方と言われてもただのゴリ押しにしか見えなかったのは気のせいだろうか。

 いや、きっと俺が素人目線だっただけで、一見ゴリ押しに見えた今の戦闘にも高度な技術が散りばめられていたに違いない。


 彼女はラッグの息の根が止まっていることを確認するとこちらを向く。


「セイくんはまだ子供だからこんなに大きな動物は仕留められないし、これからしばらくはママの狩りを見学しながらまずは小さな獲物から仕留められるようになっていきましょうね。」

「う、うん、ママ。」


 できれば子狐辺りから始めたいです。


「それじゃあさっきの話の続きだけど、私達の頭の上にある耳って普段は動かないし動かせないでしょう。普通に暮らしている分にはただの飾りみたいにしか見えないけど、自分の身に危険が及ぶような気配を本能的に察すると耳が反応するのよ。年を重ねて大きくなるほど反応できる距離は長くなっていくわね。」


 なるほど、前から何だろうかと不思議には思っていた。

 音は顔の横にある耳から聞こえてくるが、獣耳からは何も聞こえない。

 触ると感覚はあるが随意的に動かそうとしても動かない。


 これで疑問が一つ解決したのはいいのだが、もう少し穏便な説明の仕方はなかったものだろうか。


残念ながら技術は散りばめられていません。

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