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異世界で生きよう。  作者: 579
5.彼はこうして王都で動く。
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side.ベルナディータ

 私の名前はベルナディータ、ベルナディータ・ノルマリアンと申します。

 生まれはゼファシール教発祥の地ルイエントです。


 こういうのも何ですが、私は昔から『正しい』選択ができる子供でした。

 その場においてどのような選択を行えば最適な結果を導き出せるか何となく分かる私は、小さい頃からよく大人たちに可愛がられ、周りには人が集まっていたのを覚えています。


 そんな幸せな日常を送っていたある日、私は祖父が机で深い溜息を吐いている所を目撃しました。

 当時高神官だった祖父は本神殿の中の派閥争いに巻き込まれ、3人いる副神殿長のうち誰につくかを悩んでいたのです。

 幸いにも私は3人の副神殿長にそれぞれ会ったことがあったため、祖父へとディルク副神殿長につくのが良いと助言しました。


 迷いに迷っていた祖父は、最終的に可愛いお前が言うならばそれも良いかもしれないと、ディルク副神殿長の派閥へと加入しました。

 そして見事にディルク副神殿長は神殿長に就任し、祖父もまた出世を果たしたのです。


 それ以来、祖父に何かを尋ねられることが度々ありました。

 私はその都度自分がそうしたら良いと思う選択を伝え、そうしてそれはいつの間にか祖父だけでなく、祖父が連れてくる人物たちにも行うようになりました。


 それからどれだけの時が流れたでしょうか、私はある日とてつもない窮屈さを感じていることに気づいたのです。

 様々な人たちに重要な事柄に関する判断の助言を求められ、そして彼らはその通りに実行する。

 もしも私の判断が間違っていたら、彼らは大きな被害を受けることになるでしょう。


 そしてこんな日々がずっと続くのかと思ったら私は堪らなくなって、ルイエントから離れることが出来る見聞の勤めを果たす決意をしました。

 見聞の勤めは知らぬ土地を旅し見聞を広めるという、厳しいものです。


 見聞の勤めを果たすことが高神官になるための条件の一つとあって、出世欲の強い神官はそれに挑みますが成功率は低く、大概は途中で諦めるか命を落とすことになります。

 当然見聞の勤めに挑むことを祖父に伝えると大きく反対されましたが、しつこく主張を続けると、何とかこれも『直感』による大事な選択なのだと納得してもらうことが出来ました。


 そうして私は空間魔法によりデルムの街へと送られ、ルイエントまで旅する見聞の勤めを果たすことになったのです。


 動機はいささか不純なものではありましたが、もともと私はスキルを授けてくださったゼファス神への信仰心が高いとあって、知識の収集はしっかりと行いました。

 そしてもうそろそろ新たな土地に移動しようかという時になって、ふと朝食の恵みを『乙女の館』という不思議な食事処で頂きたくなりました。


 大概はずっと待っていればそこで余り物を頂けるのですが、どういうわけかその時は珍しく食事をしているお客の方から恵みを頂くことが出来ました。

 そうして私に恵みを与えてくださったという方へと視線を向けると、そこには他の獣人よりも綺麗な茶色い髪をした少年がいました。


 私はいつもの『直感』で、あぁ彼に頼めば大丈夫だと思ったのです。


 私が収集した知識を統合すると、彼の名前はセイランス。

 新人の冒険者でありながらクラリネス様を救い、さらには誰も治療できなかった男性を治療したのだとか。

 私はそんな彼を丸め込め、王都までの護衛をしてもらうことに成功しました。


 そうして共に時間を過ごすうちに分かったのですが、彼は大変に不思議な人物でした。


 動物に嫌われているからと言って涼しい顔でグレイホースの後を追い、魔物が現れれば石一つで灰へと変え、様々な魔石や一部の富裕層しか所有出来ないディランド製の製品を保有する不思議な人物。

 明らかに強いはずなのに私に振り回され、訳の分からないことを言い、突然女装し始める不思議な人物。


 そして何よりも、一緒にいると私が『正しい』選択をしなくていい不思議な人物でした。


 常に危険がつき纏うはずの旅の最中も、盗賊達に狙われた時も、そして青銅騎士団に身柄を拘束された時でさえも、私の中には全く『正しい』選択が現れることはなかったのです。

 つまりそれは、私がどんな選択をしようが彼は解決できたということなのでしょう。


 ルイエントで重要な選択を迫られてきた私としては、どんな選択をしても良いというのは新鮮そのものでした。

 ついつい好き勝手したり、選択を委ねてしまったりしたのも仕方がありません。


 それはそうと、私はセイランスさんの戦闘を見て、「幻の人族の様」だと判断しました。

 つまりはそういうことなのでしょうが、自分だけが知っている知識というのも悪くはないものです。

 しばらくは神に納めるだけにしておくとしましょう。


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