無章
MMORPG「ロスト・ディスティニー」
全世界1000万人超がプレイするゲーム、日本では70万人のアクティブユーザーを持つ、言語別という体裁はとっているが実質国別運営であり、サーバも東南アジアとEU以外は独立した形態をとっている。
アクション要素が強く主観視点なためFPSに近いゲーム性であるが、各種補助機能が充実しているので比較的アクションが苦手な人でも遊ぶことが出来る。
戦闘以外の要素も充実しているため遊び方は千差万別なゲームでもある。
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こんにちは! 大規模MMORPG『ロスト・ディスティニー』の世界へようこそ。
このゲームは、剣と魔法の世界で冒険者や開拓者、はたまた職人や食物の生産者、そう農家にもなれるゲームだよ。
アナタはなんの目的でこのゲームを始めようとするのかな? 友達に勧められたのかな? それともたまたま目に付いてかな? え? 訳が分からないだって!?
ゲームやろうとしてる人って聞いてきたんだけど、違ったのかなぁ? まあいいでしょ、やってみようよ。
いや? ……そんなことは言わないでよ、とても奥の深いゲームなんだからさ。このゲームを作った人は、色々な人が楽しめるように、欲張りすぎなほど色々な要素を詰め込んだんだ。
単に戦闘だけじゃないし、謎解きの要素だってふんだんにある、箱庭遊びがお好みだったりするかな? それだって出来るよ、ゲーム内のお金がいっぱい必要だけどね……
ちょっといきなりお話しすぎちゃったかな? 戸惑った顔をしているね、それとも面倒臭い奴と思ってたりする? え? ボクのことを知りたいのかい? それは内緒さ!
アナタがこのゲームをするかしないか、今のボクにはそれしかアナタのしゃべることに興味はない。さあ、どうする?
うーん……じゃあ、こうしよう!アナタがこのゲームをボクと一緒に始めてくれたら、最後にボクのことを教えるよ。
だから、一緒に始めようよ、このゲームをさ!
よし! いい返事が聞けて嬉しいよ。じゃあ、さっそくゲームを始めるんだけど、このゲームにはアナタの分身が必要だ。
どうせやるなら色々な種族とか欲しいよね……その件なんだけど……申し訳ない! このゲームは種族が1種類しかないんだ……いきなり幻滅しちゃったかな?
いい? ありがとね! 種族は人だけだけど、『人』に決定! これしかないけどね!!
ほら、アナタの手元にある『決定ボタン』押してよ。そうそう、次に行くね。
不躾な質問なんだけど……、アナタって男性? それとも……女性? あーーー、今のなし! ネットゲームでいきなり性別聞くのはマナー違反だったね!
ボクの失敗を見て、今後の教訓にしてもらいたい!!!!! ………ごめん……気を取り直していこう……
…このゲームには…性別がある…種族が1つしかないけど……性別は倍の2つある……『男性』…か……『女性』…
……どっち…に……す……る……? ……えっ…う…うざ……い?
元気…すぎる…のもうざい…けど…今は……もっと……うざいって………?
ふっかぁぁぁぁ~~~~つ!!!!!
さあ、性別を選んで!! ボクのオススメは『女性』! 異論は聞けない!え? 大丈夫だよっ!
この『ロスト・ディスティニー』は、な!なななな!なんと!!! 主観型の視点なのさ!
主観型が分からない? 主観型支店じゃないよ、お店じゃないからね。
ふふん、ふふふん。……そんな目で見ないでえええええ。
主観型視点というのは、今、アナタが物を見るような形ってことさ。今は、自分の顔を自分の目で見られないだろ?でも、手とかは見ることが出来る。
鏡を使えば自分の顔を確認は出来るけどね。そんな見え方を主観視点と言うんだ、なので、『男性』でも『女性』でも大きく見え方が違ったりしないから大丈夫!
え? じゃあ、自分で勝手に選んでもいいだろって? ちっちっちっ、この子猫ちゃんは分かってないなー。
アナタには見えなくとも、ボクにはアナタのキャラクターが見える! どうせ連れて歩くなら、やっぱり女の子がいい!
はいはーい、『女性』で『決定ボタン』! さあさあ! おっけー。
時間取りすぎちゃってるよー。パパッと行きたいとこだけど、ここからが一番重要なとこだ。
体型と容姿………かわいく作ってね! ボクは低身長の子がいいな、顔も幼くしてもいいんじゃよ?
アナタのセンスに任せるから、頑張って作ろう!!!
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…………な…なんで、大柄で男っぽい角刈りに近いカットにしたの……
さあ、次いこうか………
今度は職業を選んでもらうよ。『ロスト・ディスティニー』では、色々な職業があるんだ。主に戦闘のために必要なものだからなんだけどね!
職業は20個もあるんだ、ただいきなり職業の名前を色々言っても混乱しちゃうだろうし、アナタの傾向を知りたいな。
アンケートを取るから、それに答えてもらって、それでボクのオススメの職にしちゃおう!アンケートは簡単なもの、1つだけだからさ。
さて、質問です!
ボクを殴りたいですか? イエスorノー
はい! アナタには『攻撃職』が合うとおもいま~~~す! なので、その中でも一番バランスの取れた『ファイター』をオススメします。
攻撃と防御のどちらも出来る職です、魔法は使えません! ボクを物理的に攻撃しようとしてたので、魔法は必要ないと思いました!
『ファイター』は一般的な戦いなら、詳しくは今後話すけど、パーティー戦という仲間と一緒に戦う時に、みんなを守る盾になることも出来るんだ。
すごくすごく強い敵の時には専門の人がいるけど、そんな戦いはもっと先なので今は『ファイター』でも大丈夫!
さあ、これでアナタのキャラクターは出来上がりました。
あとは『ログイン』という『ボタン』を押せば、ゲームが始まります。
アナタの冒険の始まりです。
慣れるまではボクも出来るだけサポートするから、安心して『ボタン』を押そう!
ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
「ブッモおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ははははは、このゲームの『物理戦闘職』は戦いから始まるんだ! このアナタの反応を見たくて、『ファイター』みたいな戦闘職を選んだんだ。
ちなみに『魔法職』だと、町の中の教会や学校から始まったりする、味気ないよね? そう思って、こっちを勧めて正解だったなぁ~。
え? 操作が分からないから死ぬって? 大丈夫大丈夫、このゲームは『初期設定』なら『オート戦闘』だから、下手に操作しなきゃこの戦いは死なないよって!
ダメダメええええ~、体の向きとか視線を敵に向けて!!攻撃と防御は、今は『オート』でやってくれるけど、敵に背中を見せたり死角に入ってたら危険だし、やられちゃうんだから!
そうそう、敵が動いたらそれに合わせて体や視線を動かして!
って、キャラクターの操作上手いね!! 初めてなのに、動き方にソツがない。コントローラーの操作教えてないのに、きちんと動けてるね!
敵の『生命力』が結構減ってきてる、この敵の顔って、豚みたいな鼻で愛嬌あるでしょ?
え? リアルで気持ち悪いって? そうかなー豚面君はかわいいのになー、ちなみにこの敵は『オーク』と言う。
名前は知ってるよね? 一般的な『亜人タイプ』の敵です。亜人というのは、人じゃない人型のことです、他にも色々いるよ。
今後会うと思うので、かわいがってあげて欲しいな! 他にも色々なタイプがいるけど、それは追々教えるね。
さて、そろそろ勝てそうだね。余裕があるだろうから、画面内を見て欲しいな。
『生命力』を表す『HPバー』とか、各種『モード切替ボタン』なんかもある、攻撃や防御を『マニュアル』にも出来るんだよ。
操作が煩雑になるけど、色々な特典もあるから、ゲームに慣れたら試して欲しいな。ずっと続けるなら、絶対に必要になるからね!
はい、『オーク』が倒れたね。これで戦闘終了だ、『経験値』とお金が少し入ってきたね、『亜人タイプ』はお金を持ってるのがいいんだよね。
やっぱり世の中は、お金がないと何も出来ない! ビバ・マニー!!
…ごほん………
キャラクターの移動操作は分かるみたいだし、すぐそこに見える町に入ろうか。少し『生命力』が減ってるし、今後のためにも情報収集は必要だ。
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…村に入る時の門番の顔、怖かったね。村の近くに『オーク』がいたってことも関係してそうだなぁ、ピリピリしてる。
ここが普通にプレイすれば最初に訪れる町『ロルブ』だよ。のんびりとした、ちょっと小さめだけどいい町。
声が聞こえてこないかい? 少年の声なんだけどって、『会話チャット』に表示されるから声は聞こえないかぁ。
あの少年は通称配達少年って言うんだ、ずっと配達で行ったり来たりしてる。雨の日も風の日も……休まずにね。
とはいえ、町の中は基本的にだけど天候は変わらない。なので、雨の日も風の日もなんてことはないんだけどね!
ちょっと町の中を散歩してみようか! 進んでみよう、そっち右ね。
建物が見えてきたかな? ここからは石畳になってるんだ、建物も木造より石造りが多い。
路地に入ってみようよ、探索は必要なことだよ。町の構造や、雰囲気を知るのもいい。
初めての町でも、ありきたりの道を覚える前に、迷子になる勢いで、適当な所で曲がる気持ちも必要だと思うよ。
今日はボクがいるし、迷子になる心配はないから入ってみよう!
なんてことはない路地だったけど、出た先には芝生を敷き詰めた広場があったね、あそこで寝っ転がったら気持ちよさそうだなぁ…
…大丈夫! 今は眠くないから、そんなことしないって! じゃあ、進んでみよう。
おば…女性がいるね、ちょっとお年を召したというか、おかあさんみたいな人というか、え? そんなこと言わないよ! 失礼だな、アナタは!
ボクは絶対言わないよ、おばさんなんて! アナタが言ってたって、教えてきちゃおっかな~?
うそうそ! さあ、あの女性に話しかけてみようか、第一村人との接触だよ。何があるかって? それは話せば分かるさ
………さて、女性と話したことは理解出来たかな? まとめてみようか?
あの女性の家は昔レストラン兼バーをやってました、しかし、折からの不況も相まってコックだった父が亡くなり、その後はあとを追うように母も亡くなり、兼ねてからの借金でこの家さえ失いそうだと……
泣ける話だよね…って、違うって? 聞いてたのかって?
怒らないでよ~、イライラしすぎだよ! キラッ☆ミ ああああああああ
――――あの女性は、昔おかあさんが作った『特製ジュース』の味が忘れられないと、おかあさんが教えてくれたレシピで作ってみたけど何かが足りないと。
試しに作ったジュースは飲ませてもらったけど、十分においしいかったよね? でも、さらっとした甘さが必要だと、おかあさんがボケてしまって分からないから、どこかでさらっとした甘さが加えられるようなものが見つかったら教えてほしいと。
…雲を掴むような話だね、でも覚えておこうか! これは『クエスト』ってやつで、この内容はお使いみたいなもの、他にも敵を倒してなんてのも含めて色々あるんだ。
さあ、他も見て回ろうか!
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色々と見て回ったけど、各種施設の重要性や使い方は教えた通り。あとは『メニュー』から『地図』で場所を確認出来るからそれを使ってね。
移動の操作が面倒だったら『地図』で選べばそこまでオートで移動もしてくれるよ! 『オート移動』は町中だけのものだけどね。
町は見て回ったし、そろそろ冒険を始めようか。戦闘を中心とした冒険を!
と言っても、アナタはかなり勘がいいよ、ボクがいなくても、いや…いない方が戦闘をスムーズに出来そうだ。
ちょっと小一時間、外で戦闘してくるといいよ、そうすればアナタの『レベル』も上がるだろうしさ。『レベル』が上がれば強くもなるし、やれることも増える!
さあ、行って来るんだ! ボクはさっきの広場で待ってるからさ。
……なに? その目は…… ね…寝ない…よ…? ちょちょちょっ…と、休憩するだけだよ…?
そんな目で見ないでさー、はいはい、行った行った、あまり遠くに行くと町の場所が分からなくなるかもしれないから、気をつけてね。
がんばれ~~~。
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zzz…zzz……zzz…
ッ!!! イタっ! いーたーいーーー!! ごーめーんー。寝るってわかってたく、せ、に、【はーと】
で、どうだった? なんか目が怖いんだけど、知らんぷりして聞く!
ほうほう、レベル5になったんだね! おめでとおおおおお~。これで晴れて、『ファイター』としての本当の第一歩が始まるよ。
どういうことかって? それはね、戦闘しててもただオートだと、つまらなかったでしょ? ね?
えっ……『マニュアル』での戦闘や防御も試したって? 結構、骨があって楽しかったって?
うーむ、アナタはかなり才能があるねぇ。見所満点だねぇ。
話を戻すけど、レベル5になると『技』というものが覚えられます! このゲームにとても重要です、メモしておくようにね。
胸の中でいいよ、先に進めるね。『技』とは、武器とか職とか色々なものにそれぞれあるので、今後分かってくると思うけど、ここでは簡単に教えます。
『ファイター』はレベル5になると、一定時間『筋力』を上げて敵への攻撃をとても痛くすることが出来ます!
力持ちになるんです、一定時間と言いましたが5分間です。5分過ぎると3分待たないと使えません! ここ重要です!
『リキャストタイム』というものです、似たような技には、使うと『リキャストタイム』があるので注意すること!
戦ってる時にむやみに『技』を使っていると、いざ使いたい時は使えないということもあるので、頭を使ってね。
それで、『技』は勝手に覚えません。職にはそれぞれ『師匠』のような人がいます、その人が最初は教えてくれます。
いっぱいレベルが上がると『師匠』を追い越しちゃうんだけどね。クスクス、クスクス。これ以上は言えません! 自分で知ること!
以上で終わりです、センセーに質問はありますか? ないですか? 聞こえません! サービスで『ファイター』の『師匠』の場所に連れて行ってあげましょう。
え? 当然『ロルブ』の村にはありませんよ。 ちょっと休ませろって? 生命力が減ってるって? ダイジョウブダイジョウブ シンパイナイ。
片言は怪しい? じゃあ、見せてあげましょう! 究極奥義!!
―――――『テルミット・ヒール』―――――
『HPバー』見た? これは、か……先に言わないで!!! 『回復魔法』ですよ。はいはい、せっかくの自慢話を……
え? 職ですか? 教えません、途中から口調が変わってきておかしいと思ってたけど、キャラ崩壊してるですって? 放っておいてよ。
ボクっ子がウケるって聞いてたから、そうやってしてただけなんだから。
今、本当に女だって知ったって?
キーーーーーーーーーーーーーーー! もう、最初っから調子狂いっぱなし! もういいわ、いくわよ、『師匠』のいる街へ!!
覚えてらっしゃい、道中は絶対助けてやらないんだから。
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―――『ロルブ』から近いとはいえ、3回敵に襲われたのに苦戦もしないし、むかつく…
ここがこの辺りで一番大きい街『ヘンルー』よ、大きなマーケットがあったり、序盤から中盤手前までの拠点にする人が多い街なの。
アナタがうろちょろしたらすぐ迷子ね、助けないからね、一生迷子でいなさいな。
え? 『地図』使って、『オート移動』するからいいって? お…教えなければ良かった…うるさいなー、はいはいボクが悪いんですよー。
まだ、ボクっ子やるのかって? 聞こえません、続けます。ふんっ。
はい、『地図』見てね、マーケットがあるでしょ? そこの外れ、そうそう、そこに移動します。横着禁止! 操作していくこと。
マーケットの外れに『ファイター』の『師匠』になる人がいます、行けば分かるから無駄口聞かない!
聞こえません、レディーに向かって年聞くとか失礼です。
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このマッチョおじさんが『師匠』よ、さあ、話を聞いてね。とてもとてもなが~~~いけどね。
―――さあ、げんなりした顔してるわね。くっくっ…失礼、『技』は覚えられたかしら? そう、これでアナタも『ファイター』として一人前の道を歩み始めました。
極めるのは相当の覚悟がいるから、頑張ってね。あとは『師匠』の話で分かったと思うけど、武器の『技』とかもあるから自分で場所を探して覚えてね。
え? あとはアナタだけの冒険よ、ボクはノータッチ。そろそろ、さよならの時間となりました。
寂しいかしら? 短い間だったけど、大変むかついたわ。うそうそ、楽しかったわ。
また会えるかって? そうね、アナタが冒険を続けていれば、どこかで会うと思う…いえ、絶対に会うわね、ただその時、アナタはその姿かたちをしてないと思うわ。
それにボ……ワタシを覚えていないかもしれないし、覚えているかもしれない。
名前ですって? どうせ覚えられないから、変なボクっ子でいいわよ。 え? 覚えるから教えろって?
しょうがないわね
【ミリー・ヤルト・ジールフェン・マルトリッタ・ユルベン・ミスコート】よ、覚えられないでしょ? もう一度? ダ、メ、☆ミ
それじゃ行くわね、この『ロスト・ディスティニー』で! もしかしたら……虚せか……
――――終わり