表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

異形頭さん

壊れた世界と異形の頭

作者: 水野和巳

こんにちは、どうも私です。

私達は人間が異形と呼んでいるものです。

形は人間とさほど変わらないのですがなにぶん頭が人間でないので差別されております。


「おーい、菓子頭!!」


「はいはい、なんですかー?」


私は様々なお菓子のようなものが首から生えている容姿なので菓子頭と呼ばれています。名前なんて忘れてしまいました。


「知ってるか?王国が勇者を喚んだんだと。」


「おや、魔王とやらは復活してませんよ?」


「なんでも俺らが邪魔になったらしい。全く、誰のおかげで国が発展したのかもわからないバカばかりだな、人間ってやつは。」


そう不満げに話す彼の頭は歯車の形をしていて、くるくると回りながら私の方を見た。目とか、声帯とか私達には関係ありませんけど。


「さぁ…?どうでしょうね。人間は全く同じことを他の種族に対して思っているでしょうし、私はもともと人間でしたし。勇者とお話できるなら話し合いも有りかと。」


「…そうか。ってお前は突然変異型だったか。済まん。」


「いえ、気にしてませんよ。」


私は考える。世界はいつも歪でありながらバランスが取れています。

その歪な部分は歪でないと考えられているものにとって邪魔でしかないかもしれません。


「…私たちを殺しても、また他の異形が生まれるだけなのですけどねぇ。」


死ぬことは不思議と怖くはありません。

私はもともと普通に町娘をしていました。母の手伝いをして、父の下らないギャグを受け流して…好きな人と結ばれることを夢見て。

でも、魔王とやらが人間を滅ぼさんとして私は死んだ…はずだったのですが。

起き上がると周りには町だった場所と骨、そして異形となった私しかありませんでした。


「…ギアさん。」


「ん?」


「もし私が死んで、ギアさんが生きてたらとりあえず埋めて下さいね。」


「…逆もしかりだな。」


「あぁ、逆なら私はギアさんの頭の一部を持ち歩きますよ。」


「全部埋めてくれよ!?」


「ふふふ」


異形となってからは石を投げられたり、頭のお菓子のようなものをねだられて困ったりもしました。

仲間を見つけて、村を作って、ひっそりと生きてきました。

女性での幸せは私はもう掴めません。

人間としての楽しみは味わえないでしょう。

絶望もしました。

けれど、死のうとは思えなかったのです。


「勇者がテンプレでバカでなければいいですね。」


「そうだな。話し合いのできるやつならいいな。」


きっと、私は異形になってまでここに残るくらいこの壊れた世界が好きなのでしょう。


「さ、ギアさん。今日もお仕事しますよ。」


「うげ、忘れてなかったか。」


ギギギと回転が遅くなる歯車に私は今日も変わらず笑えるのでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ