エピソード1 奴が来る!
この作品はフィクションである。登場人物も設定も作り物だが昨今もてはやされてる「鬼嫁」その背景にはどうしようもない情けない男の存在あってのことだと思う。それらを総称して主人公ひろしとしてみた。
奴の名は・・・
「ひろし」
平凡な名のわりに非凡な人生を送っている事に気づいていない。
40歳を目前に突き出たおなか周りと近年まったく役に勃たなくなった自身のJr.を気にしている
オスである。
体型を気にしてか、Jr.の復活を願ってか、ウォーキングを始めようとしたことがある。
ウキウキしながらシューズを買ったはいいが、一回限り、近くの公園で使用して終わった。
「ワシはもともとサッカーやってたから歩くより走ってしまうんよ。」
ランニングでも良いはずだ。
飽き性の奴が続くかどうか女子社員と賭けてたようだが負けは決定した。
あっさり負けは認めるが、賭けの代償は踏み倒す。
奴の朝は遅い。サラリーマンであるにもかかわらずたいてい始業時間には間に合わない。
遅刻魔なのだ。
連日遅くまでパチンコ、マージャン、飲み会のいずれかをコナシているからだが、
誰もそれには文句を言えない。自由奔放といえば聞こえはいいが、
他人の迷惑顧みず、したい放題のワガママぶりには底が無い。
「ワシは一匹狼じゃけんのー、自由にすりゃーええんよー。」
一匹狼の意味を知ってか知らずか、狼に失礼である。
業界で三本の指に入る大手マンション販売会社の営業マン、成績は良い方だがその分
トラブルも多い。
ウソとでまかせは日常茶飯事だが、奴には自覚が無い。ニワトリ並みの忘却力、
三歩進むと忘れてるほど物忘れが激しいのだ。
それがもとで客との裁判沙汰にもしばしば発展する。大手企業の力でもみ消すのだが
「ワシより悪い事してる奴はいっぱいいるでー。」
奴に反省の色は無い。それどころか業界自体極悪人の集まりのように言う。
平日の昼。パチンコ店で慌てて電話に出るときは、たいてい会議をすっぽかしたときだ。
朝一番でパチンコ店の行列に並び、狙いをつけた新台で連チャンし、時間に間に合わない。
ギャンブルにはマメな奴である。
「ワシら休みがねえんじゃけーこれぐらいえかろー。」
誰に同意を求めるのかこれが奴の言い分だ。上司の前でも言ってみろ!とツッコミたくなる。
奴の夜は長い。仕事はそこそこに切上げるがまっすぐ家には帰らない。
「子供が3人もおるんでー、面倒を見なきゃいけんから早く帰らんのよー。」
自分で作っておいてまるで他人事だ。
マージャンの誘いは上司から。嫌々ながら付き合いは断らない。
パチンコ、スロットは朝からでも行く。資金が足りないときは借りてでも。
迷惑なのは部下である。わざわざ呼び出されてお金を貸す。足りずは給料の前借だ。
以前は客からの預り金も独自に運用していたらしい。バレてないのが救いである。
大きく勝つが、大きく負ける。お小遣い4万円ではとうてい穴埋めできない。そこで考えた。
給料の歩合部分は別会計だ。家には入れず直接使う。年間200万は遊び代だ。
給与明細は事務の女性に頼んで偽造する。知らぬが仏とはよく言ったものだ。
パチンコ、マージャンの合間に飲み会を入れる。
「誰か女紹介してー。」と女子社員に擦り寄っていくのだが大半は断られる。
手癖が悪いのを知っているからだ。セクハラでは済まされないことも平気でするが
プロの店にはめったに行かない。前述のとおりJr.が発動しないからである。
1万以上払って50分間世間話の末、「気にしないでね、よくある事だから。」
と、慰められるだけなのだ。割に合わないので手近でまにあわす。
その手口は次回公表するとしよう。