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第三話 イルート
謙遜は過ぎて、沈黙が辺りを支配した。
自分の無力さと微かな正義感がぐるぐる回った。
「大丈夫ですか?」
大丈夫では無いが、少女のより悲惨な状況を目の当たりにすると
そんな事は言えなかった。
「ああ、君のほうがよっぽど酷く見える」
少女は少し俯いて何かを呟いた」
「私は、私なんかは...」
「イルード??」
そう、彼女は「イルード」
人間であり人間ではないモノ
「はい....」
左腕にある青いサソリの刺青がその証だ
「でも、君は君だ名前は知らないけど君は君なんだ」
本音だった。この世界に生まれなければこの子はこの子だ。
「アミール。ジェニファー・アミール」
自分は自分だと言い張るように少女は言った。
「よろしく、アミール、俺はカルミ」
伸ばした手は少女によって握られた
「よろしく。カルミ」
始めて見る笑顔だった。