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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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怪物

作者: 倉木紫
掲載日:2026/10/25

 やさしさで火傷を負いました。

 あなたのやさしさを受け取るほどに、負債が増えていくような気がしていました。

 人から物を借りたときは、熨斗を付けて返すべきなのです。

 本を貸してもらったなら、相手の好むお菓子を添えて。

 メイク用品を貸してもらったなら、綺麗な小物入れを選んで。

 

 もらったものが感情だったとき、どうすればよかったのでしょう。わたしは何をお返しすればよかったのでしょう。ありがとう、と心からの感謝を示すだけでよかったのでしょうか。けれども、それでは少しも足りないのでは。そんな思いが頭を過ぎり、少しずつ首が締まるのを感じていました。


 わたしは鏡を拒みました。

 醜い毒虫が映ることがとても耐え難いから。


 わたしは写真を拒みました。

 毒の痕跡はこの世に残しておいてはいけないから。


 わたしは自分自身を拒みました。

 存在しているだけで周囲の空気が澱んでしまうから。


 わたしには、無償のやさしさを受け取る資格などありませんでした。日陰者が身の程を弁えずに求めすぎてしまったのです。


 気づいたら、あなたのやさしさに執着していました。

 いつの間にか、あなたの存在そのものに依存していました。


 あなたのくれた言葉だけが、生の標になっていました。

 だからこそ、終わらせなければならないのです。身勝手に愛を貪り、消費する怪物になってしまう前に。


 間違っている、と叱られてしまうでしょうか。

 わたしにはわからないのです。正しい愛し方も、正しい愛され方も。

 この命を閉じることが、産まれ落ちたことへの唯一の贖いになると願って。


 最後に一つだけ、聞きそびれたことがあります。

 あなたにとって、わたしは何者でしたか。やはり怪物でしたか。それとも――。綿素材のロープが首に絡み、急激に視界が真っ暗になりました。心地のよい静寂がこの身を包み込みます。宙吊りから見えた今際の際は、思いの外悪くないみたいです。

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― 新着の感想 ―
 幼子が揺籠で微睡むように。最後にこの人は同じ景色を見て、穏やかに逝けたのでしょうか。  Official髭男dismは『subtitle』に好きな一節があります。 『火傷しそうなほどのポジティブの…
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