これを僕の告白とします
どんな地域にも行ってはいけない場所なんてのがあるものだ。
だけど、それは大抵行こうとしても行くのが大変な場所にあるものだから。
だから、僕は好奇心に負けてしまった。
「あの教室には行ってはいけない時間がある」
古い怪談のような言葉。
理由さえ分からないバカバカしい話はあまりにも魅力的に思えた。
「金曜日の14時。絶対に入ってはいけない」
実際。
その日時には教室は未使用だ。
だから、僕は授業をサボった。
金曜日の14時以外は普通に使っている教室。
どこからどう見ても何も変わらない世界。
小さな満足感に浸っている時に、不意に教室に放送が流れた。
『これを僕の告白とします』
聞いたことのない声。
男子生徒だろうか。
しかし、数百人の生徒が居る学校だ。
顔と名前はもちろん、声だって一致しない生徒は珍しくない。
『先に言っておきます。この放送を聴いて何もしないあなたにも罪があります』
随分な言い草だ。
けれど、直後に悟る。
僕はこの声の直後に教室を出るべきだったと。
『今から伝えることは全て、真実です』
男子生徒が大きく息を吸った。
『僕は』
緊張と共に吐き出す。
『先日、人を殺しました。同じ学校の生徒です』
彼は淡々と告げる。
『僕を虐めていた生徒です。僕は耐えきれず彼を突き飛ばしました。そうしたら――』
声が震えて泣いた。
『動かなくなりました。多分、打ち所が悪かったのでしょう』
しばらく嗚咽が響く。
呆然とする僕と続く誰かの嗚咽。
それが止む。
『繰り返しになります。これを僕の告白とします』
彼は内容を繰り返す。
三度。
そして、それが終わると彼は事故あるいは殺人が起きた日時を告げると涙とともに結ぶ。
『この放送を聴いて何もしないあなたも同罪だ。全てを隠した大人と――』
放送が終わった。
僕は汗だくとなりながら教室を出る。
頭の中に何度も彼の言葉が響いていた。
先程の放送は全校に流れたのだろうか?
そんな事を必死に考えていたけれど、そんな疑問の答えなど考えるまでもなかった。
もし聞こえていたなら怪談など存在するはずもないのだから。
『この放送を聴いて何もしないあなたも同罪だ』
放送があったのは。
彼の言葉が正しいのであればもう二十年以上前だ。
最早、どうしょうもない。
――けれど。
気まぐれを装いながら焦燥に追われて僕はスマホで学校で起きた『事故』を調べる。
『この放送を聴いて何もしないあなたも同罪だ』
繰り返される言葉は。
僕の中でしか響かない。
僕の中にしか響いてくれない。
何故、あの場所に行ってはいけないのか。
僕は今更ながらに理解するばかりだ。




