第九話 槍使いと付喪神
検問所を抜けシラヌイにたどり着いたフィア達は冒険者ギルド【アステリア】へと足を踏み入れた
冒険者登録をしたフィアはクロエと【ニーナ】と名乗る鳥人族の少女の三人で依頼を受ける事になり
慰霊碑周辺の魔物退治に向かうのだった。
馬車に揺られること数十分塚のある目的地付近についた
『それじゃあ依頼を達成したらこの狼煙を上げてくれよ』
男から草の束を受け取ると礼を言って目的地に向かった
クロエは額に手を当て日差しを手で遮りながら言った
『ここが鉄火塚ね…案の定雑草だらけだね』
【鉄火塚 土地の境目に建てられた塚
土地の所有権をめぐる争いで亡くなった者達を供養するための慰霊碑】
慰霊碑の近くには大きな木があり周りには魔物が徘徊し雑草は腰まで伸び切っていた
『あの木の中に洞窟があるみたいだ』
ニーナが鉄火塚の横の大木を見つめながら言った
『見えるのですか?』
『ハルピュイアは8種族の中でもっとも視力が良いんだよ、だいたい私達の7倍くらいね』
フィアは目を凝らして見つめるが木の中は暗闇でなにも見えなかった
『この雑草じゃ戦い難いな、ここは私が行こうか!』
ニーナ前に出ると慣れた調子で槍を軽くふり回した後
大地を蹴り上げ空高く舞った
驚くフィアにクロエは空を見上げながら言った
『よく見ててね、あれが【槍使い】の戦い方だから、複数人での戦闘は味方の動きを知ることも大事なことだよ。』
『敵の数は…4体か先ずはアイツから!』
空から魔物の数を把握すると空中で旋回し急降下した
『はあああぁっ!!』掛け声と共に空から敵を強襲し一突きにするとその場から飛び立ち敵を一匹また一匹と倒していった
『ふぅ…これで後は穴の中だけだ!』
額の汗を腕で拭うとニーナは大木に槍を向けた
『依頼内容にはもっと魔物が居るはずなんだけど…そこしかないか』
クロエは炎魔法で穴を照らしながら言った
『最初はあたしとフィアに任せてニーナは後ろで休んでて』
『今度は私たちの戦い方を見ていて下さい』
ニーナは不服そうにしていたが二人に言われ渋々後ろからついて行った
2人は慣れた調子で入り口付近の魔物を倒すと狭い通路を発見した
『ウナギの寝床みたいな洞窟ね、狭い道は私が先頭を進むからフィア、ニーナの順番で付いてきて』
狭い道を一列になって通ると奥には魔物がひしめいていた。
息を呑むフィアと冷静に作戦を思案するクロエにニーナは声を抑えて言った
『大量にいるな、ここは魔法を使うしかないか』
『いいの?』
『スタミナはあまりないけど魔力は余っているからな』
会話の糸が読めずフィアは困惑していた
『フィアは全員に防御魔法をお願い』
『わっわかりました』
クロエはそう言うと両手に魔法を貯め始めた
『今からニーナが魔物を眠らせてから私の魔法で一気に倒すよ』
それを聞いたフィアは魔力を振り絞り出来る限りの強力な防御魔法を二人に唱え残りの魔力を自分への防御魔法に使った
ニーナは魔物にゆっくり近づくといきなり大声を出した
『みんなー!!ちゅうもーく!!』
(にっニーナさん!?)
注目を集めると手でハートを作り魔法を放った
ハート型の魔法が部屋の真ん中まで飛んで行くと部屋いっぱいにピンク色のハートが散らばると犇めき(ひしめき)合っていた魔物の群れが大人しくなっていた。
『行くよ!下がって』ニーナが後ろに下がるのを確認すると
『【烈火】』クロエが両手に貯めた炎を放った
視界が真っ赤に染まり目を閉じたが防御魔法が熱風で一瞬で溶けたのを感じた
『大量大量♪』
ニーナの声に目を開けると嬉々として魔物が落とした物を集めていた、燃え盛っていた炎は小さな火がまばらにゆらゆらと燃えているだけだった。
『また無茶をして…』
『私は…炎属性軽減の腕輪があったので…』
咳きを我慢しながら言うフィアをクロエは優しく撫でた
『そういえば鳥人族はあまり魔法を使いたがらないって聞いていたけど?』
『私たちは勇ましく果敢に戦う空の戦士なんだ
あんなポーズをとるのは…出来れば避けたいんだ。』
ニーナは拾い集め終えると言った
『そりゃ…踊り子なら恥ずかしくないかもだけど私は竜騎士を目指しているんだ!』
『踊り子に竜騎士ですか?』
『槍使いの技を全て習得したら慣れる次のジョブなんだけどその習得の為の課題が難しいんだ…』
『私も手伝いますよ!』
『気持ちは嬉しいけど課題には一人で挑みたいんだ』
『あの魔法があれば負けない気がするのですか相当手強いのですか?』
『魔法を使えば勝てるかもだけど、それは戦士の戦い方じゃないからな…あと恥ずかしいし…』
『私も見てるだけでしたがなんだか恥ずかしかったです』
(フィア…フォローになってないよ)
ニーナが小さなショックを受けている間にクロエは何かを見つめていた
『あれは…』
そこには人が並びを炎を受け取っている壁画があった
『…人族が炎魔法を授かった話?』
『…わからない、でも図書館で調べれば何かわかるかも』
『フィアは何か思い出した?』
フィアは首を振った
『名前しか覚えてないんだよな…記憶や魂に干渉する魔法なんて魔族ぐらいしか聞いたことないし…』
『魔族ですか?』
『黒褐色の肌に黒い角をもつ種族だよ』
ニーナの言葉にフィアは模擬決闘後の出来事を思い出した
(魔族…そういえば決闘の後、女の子が現れて執事を魔法で…貫いたんだ)
『話なら帰りの道すがら話そうか』
穴を抜け狼煙を上げると迎えの馬車が来るのを待った
馬車に揺られながらフィアは見たものについて話した
『覚えていたんだね、忘れていたのならそれでいいと思っていたのだけれど…』
クロエは一呼吸したあと言った
『あの子は【魔族ディアニモ】凶悪な犯罪者や悪性を敷く王に魔族の判断で制裁を与え汚れた魂を回収するアステリスの守護者なんだ』
『汚れた魂…』俯いて考えるフィアにニーナは言った
『私達は死んだら肉体はアステリスの大地に還り魂は主神の御許に向かうと言われているんだけど魔族は
肉体を大地に還し大罪人の魂は冥界に連れ去るんだ』
『冥界…ですか?』
『フィアも見たと思うけど魔族の魔法は全ての属性を無効にする冥属性と言われる特殊な属性なんだ、その性質からか普段は冥界に住んでいて制裁を与える時だけ現れるんだよ』
ニーナは槍を研ぎながら言った
『だから8種族の1人だけど魔族の事は全然知らないんだ
冥界がどんなところで普段なにを食べているのか一度でいいから話を聞いてみたいんだけどな』
その話から話題は夕飯の話になり何を食べるかの会話で盛り上がった
『さぁーついたぞ!』
御者がそう言うと馬車から降りておじさんに礼を言った
『観光案内もしてるからそっちも利用してくれよ!』
おじさんの提案を丁寧に断ると街に入った
『おじさんには悪いけどシラヌイは私にとっては庭みたいな物なのよ』
夕方になり人も疎らになった街を
クロエは肩で風を切りながら先を進んで行った
『私が昔よく食べていたコロッケ屋さんがここら辺にあるのよ』
『夕飯は土産にするって話しじゃなかった?』
ニーナの問いにクロエは沈黙の後に答えた
『足りなかったら…困るからね』
『あのサイズで足りないなんて事あるのか』
『ここがそのお店だよ、おじさん元気かな』
クロエの買い物を離れた位置でフィアとニーナは待っていた
ニーナは遠くに建っている図書館を見ながら言った
『図書館は19時までか…調べ物をするには時間が足りないか』
『この距離でも見えるんですね』
『足りない!?しょうがないなぁ!』
『なんでそこだけ聞こえてるんだ』
ニーナは頬を掻きながら言った
2人は追加で注文するクロエを待った
(昔のクロエ…どんな感じの子だったのか、いつか聞いてみたいですね)
宿に着くとお土産をテーブルに広げた
『へぇーこれがイースマキナの料理なのか』
『ケバブって言って私の一番好きな料理よ』
(…結局誰からも人形である事を疑問に思われることは無かったですね…もしかしたらイースマキナでも…)
『はいっ!出来たよ』
『あっありがとうございます』
考え事をしていたフィアの前には温められたケバブがおかれた
『確かに美味しそうだけど、これに加えてコロッケもあるんだよな』
ニーナは青い顔で言った
『沢山おまけしてくれたからね』
三人でなんとか完食すると順番にお風呂に入り髪を乾かすと布団に入った
『うぅ…お腹が』
ニーナは膨れたお腹をさすりながら言った
『無理して食べなくていいのに』
『出されたものは残さずに食べるのが…うっ…』
『でも…とても美味しかったですね、特にあのクリームが入ってるコロッケ、やけどしそうなほど熱かったですが夢のような美味しさでした。』
『クリームコロッケ私も好きなんだ、ちなみにあのお店の看板商品なんだよ』
三人の他愛もない会話は誰かが眠るまで続いた。
(明日は図書館ですね…その後は…)
『ニーナ・ロリキュート』LV25 鳥人族 職業:冒険者 ジョブ:槍使い 武器:ロンギケプス
頭装備:羽根つき帽子 胸装備:ハイレザーアーマー 腕装備:ハイレザーガード 腰装備:ハイレザースカート
足装備:ハイレザーブーツ 装飾品:風の腕輪
風の腕輪※スタミナ消費量軽減
HP:300 ATK:180(70) DEF75(20) INT80(20) MEN90(20) AGL180(30) LUK15(0)




