第五話 クロエの特訓
クロエに修行をつけてもらったフィアは
クロエのアドバイスで自身の技をさらに磨き上げる事にする
リモンの師事で技の完成度を上げたフィアだったが…
『久しぶりの拳闘士だから緊張しちゃうなぁ、1ー2ー3…』
そう言うとクロエはストレッチを始めた
『場所を借りてしまってごめんなさい』
フィアは後ろのリモンに頭を下げた
外の練習場で戦った場合人形である事がバレてしまう
可能性があるため人形使いギルドの地下を借りたのだった
『いいのですよ、それよりも生徒の成長を確かめさせて貰いますよ』『はいっ!』
クロエに向き直ると丁度ストレッチを終えた様だった
『よーしっ!始めようか!』
『よろしくお願いします!』
『先ずは炎属性の魔法の最大特徴は出の速さと威力なんだ』そう言うとクロエは手から炎を出すと虚空を薙いだ
アーチ状に炎の線ができると扇状に炎が広がっていった
『小さな炎から一気に広範囲に広がるんだ、使い手にもよるけど基本的に少し触れるだけでも危険だから気をつけてね』
『次に攻略法ね、炎属性は人や魔物に強い反面
破壊力は無いんだ、だから盾や鎧である程度は防げちゃうんだ』
『とりあえずそれぐらいかな、それじゃ実践にいくよ?』
『はいっ!』
人形をサイズアップし距離を開け挟み撃ちするように同時に走り出した
身を低くすると一気に走り出し人形を殴り倒した…ように見えたが(手応えがない…?これは…)
人形を小さくする事で避けフィアはクロエの背後から蹴りを放った
『埋火』『ッ!』足を止めて後ろに飛び退き埋火を避けた
『…いい考えだね』炎が消えると手には人形が握られていた
(内側から奇襲するつもりだったのに完全に読まれてた)
クロエは人形をフィアに返すと練習を再開した
(…経験豊富な相手に小細工は通じない…何か別の…)
『頭で考えるのもいいけど戦いはそれだけじゃないよ』
クロエは一気に距離を積めるとラッシュをしかけたフィアはギリギリで回避しなんとかいなし続け隙を見つけた
『そこてすっ!』
三連撃を入れようとしたが2発目を掴まれ投げ飛ばされた
『火車』クロエは空かさずに炎の車輪を放った
受け身を取り体制を整えたフィアが
前を向くと眼前には炎が迫っていた
地面を蹴り上げ高く飛び上がると地獄落としを放った
(この位置なら…)
『悪いけどこれもフィアの修行の為だからね』
クロエは冷静に言い放つと『埋火』で視界を炎で覆うと
後ろに飛び退き回避した
グシャッと音と共に土煙りが舞い地面に足が埋まった
煙の奥から点々と灯りが灯って行った
状況を察したフィアは
埋まった思いっきり足を蹴り上げると飛び上がった破片を
跳武三連撃でクロエに向かって蹴り飛ばし炎を掻き消した
クロエは掌底や正拳突きで使い破片を破壊すると向かってくるフィアを足払いで転ばした
(…以前よりも苛烈さが増してる、ダンジョンの時は偶然だと思ったけど…)
クロエは少しだけ息を切らしながら言った
『ハァーハァー…今のはいけると思ったのですが』
荒い呼吸をしながら立ち上がり人形を手繰り寄せ
構えるフィアにリモンがストップをかけた
『そこまでです、お二人とも少し休憩にしましょうか』
渡された水を飲み一息ついた
『やはりフィアさんは成長が早いですね、これ程動けるなら次の技も習得出来そうですね、そのためには指定された魔物に制限時間内に勝つのが条件になりますが』
『あたしは新しい技よりも,今の技のクオリティを上げた方が良いと思いますね』
クロエの言葉にリモンは顎に手を当てて考え始めた
『確かに技は荒削りですが…逆に言えばそれで戦えてしまっているのが荒削りの原因になっているのですね』
先生が2人真剣に話し合っているのを真面目に聞きながらフィアは人形にクリエ(回復呪文)をかけていた。
『…あの、リモンさんが言っていた技って?』
『【アセンダント】が人形を使った奥義なら肉体を使った奥義もあるのです、しかしその技をお教えするには…』
『ほっ本当ですか?!』フィアは食い気味に聞いた
『その為にはこの魔物を1人で制限時間内に倒してもらう必要がありますがね』
そう言うとリモンは紙を渡してきてそこには巨大な尾を持つ青いトカゲの用な姿があった
『これって…!?』驚くフィアにクロエが言った
『メガロ・カウダと似ているけど、違う魔物だよ
よく見ると尻尾の形状が違うでしょ?』
『…確かに、楕円形ですね』
『クロエさんは既に戦ったことがあるみたいですね
この魔物は【サラマンダー・アノス】と言って水棲の大人しい魔物なのですが舐めて掛かった多くの人達が辛酸を舐めされた相手なんです…それでも挑みますか?』
フィアは暫く考えた後、答えた
『ごめんなさい…いまはやめておきます、クロエの言う通り技を研く事にします』
『それも良いでしょう、フィアさんの技はどれも合格点ですが100点ではありません、いままで急ぎ足だった分細かい所を直していきましょうか』
…
……
練習は夕方まで続いていた…
『結局…一回も勝てませんでした』
『そんな事ないよ!これなら前日祭も勝てるんじゃ…あっ』
落ち込むフィアに励まそうとしたクロエだったが
疲労と気が緩んでいたせいか、つい口を滑らせてしまった
『前日祭で誰に勝つのですか?』
一瞬空気が凍ったがリモンは言った
『…冗談です、まぁそんな気はしていましたよ離れて見たらわかりませんがすぐ近くで見た時に肌の質感でわかりましたから。』
フィアは安堵の息を吐いた
『それなら…どうして』
『僕自身人形を制作するので、自我のある魔法人形には
大変興味があったのです…例えそれが忌避される者だったとしてもね』
『忌避…ですか?』
『…この様子だと話してはいないのですね
クロエさん、なぜ知られたら不味いのかを説明しないのはフィアさんに不親切ではありませんか?』
場には重い空気が流れ耐えかねたフィアが口を挟んだ
『それは、街の警備が』
『そこではありません、もっと根深い理由があるのです
勿論、ルカ王子や村の件で警備が厳重なのも関係していますがもっと根本的な部分の話です』
『良いですかフィアさん…』
『ま、待って下さい!私が言います!言わせて…下さい』
沈黙の後リモンは言った
『わかりました…それではお願いします』
クロエはフィアを一瞥すると意を決した様に話し始めた
『私達が信仰を大切にしているのは知ってるでしょ?それは伝承だけじゃなくて神様から賜り物があるからなの』
『稀に眷族の子供が特異な能力や外見を持って生まれてくる事があるんだ、その能力は神様の持っていた能力の一つと言われていて聖典にも記されているんだ…だけど逆に載っていない異能は…厄災の眷族とされて忌み嫌われているの…』
『厄災の…眷族』
『でもイースマキナの聖典に載ってないだけでシラヌイには付喪神の伝承があるから!』
俯いていたクロエは顔を上げた、その顔には目が潤んでいた
『隠していてごめん!もし不安なら今からでも試合を辞退しても…』
『わ、私は…大丈夫ですっ!辞退なんてしません…人が死んじゃうかも知れないのに、黙って見過ごせません!。』
フィアは続けた
『確かに…嫌われてしまうかも知れません、それでも…』
『嫌われるだけで済めばいいのですが、信徒の中には過激な人もいるでしょうし…僕はシラヌイに移動する際には特別な手配を頼んでおきましょう。』
『特別な手配ですか?』『秘密です』
クロエが口を開いた
『り、リモンさんはそれでいいの?』
『教え子の晴れ舞台なのもありますが、リスクを承知で街の為に尽くしてくれているのです、僕も多少は無理をしないと、クロエさんもフィアさんを守る為にシラヌイに連れて行こうとしていたんですよね?』
(あたしがフィアに自由にして良いって言ったのが原因、もしもの時はフィアだけでも…)
クロエが頷くとリモンは言った
『明日の為にも今日は早めに終わりましょうか、ぐっすり寝てお互い動ける様にしておきましょう』
2人はリモンにお礼をするとネストへ向かった
『今日はいないんですね…』
店内を見渡しルカを探すがいなかった
『地下かも知れないね』
元気がないクロエを元気付けたかったフィアは
『あっ!これやってみたいです!』メニューに指を指した
『コーヒー占い?うん、いいよ』
その日はコーヒーとお持ち帰りでスブラキを注文した
『クロエ…私は感謝しています…』
(うぅ…違うもっとストレートに)
クロエはきょとんとした表情で見つめていた
『…洞窟で助けられてからジョブを紹介してくれて、
美味しい食べ物を教えてくれて、人形劇もダンジョンも…』
『お待たせしましたコーヒーになります
飲み終わりましたら商品と一緒に占いの結果をお持ち致しますね』
コーヒーと小さなクッキーが目の前に置かれた
沈黙が流れ恥ずかしくなったフィアはコーヒーに口をつけたが、直ぐに離してしまった。
『これはね砂糖を入れたり甘い物と一緒に食べるんだよ』クロエは慣れた手付きでシュガースティックとコーヒーミルクをコーヒーにいれ少しかき混ぜてから飲んだ
フィアもマネしてミルクとスティックを淹れると恐る恐る口につけた
『あっ飲みやすいです!』『良かった』
そう答えるクロエの表情はずっと柔らかくなっていた
飲み終えるとウェイターが空のカップを持っていくと直ぐに戻ってきた
袋の中には商品と一緒に茶色の手紙が2枚入っていた。
宿に着くと荷物が部屋の前に置いてあった
『おっ届いたね、これはフィアと一緒に倒した魔物の素材で作ったフィア用の防具だよ』
『素材ですか?いつも球と武器しか残ってなかった気が』
『その球から作って貰ったんだよ、明日装備してね』
袋を開け手紙を取り出すと丁寧に名前が書いてあった
封を切り開封すると
フィア『じっと我慢するべし…さすれば勝機は見えてくる…』
クロエ『健康に…注意…』
『明日の試合の事でしょうか…』
フィアは口に手を当てて占いの意味を考えた
『健康…ケバブにスブラキ、焼きとうもろこしにギロピタ、チーズ焼きにサバサンド思い当たる節しかない』肩を震わせていた
『これからスブラキを食べるっていうのに…なんて事を…言ってくれるのよ』
『それなら私が多めに頂きますねー』
フィアが茶化す様に言った
『大丈夫よ!依頼を受けまくるから!』
2人は和やかな夜を過ごした
…
……
………
イースマキナ城
『…ふぅ、魔法人形のメンテナンスはこれくらいで良いだろう』
第一王子のミハイルは明日の模擬決闘に備えて蝋燭の灯りだけが灯る薄暗い部屋で準備をしていた
『今年は観光客よりも冒険者が多いのか…明後日の時祭りが本番ではあるが記念品でどれだけ来年の来客が増えるかだな…しかし』視線を机に移すと
机の上には地図があり衛兵や屋台の配置図が書いてあった
『村の一件も考えると衛兵をこれ以上街の警備に回すのは難しいか、やはり規模は前回より縮小してしまうな』
『まったく、ルカが襲われていなければ村も祭りもこんな事には…』
ミハイルは拳を握りしめていた
(お父様…私は…ルカが王位を継ぐ事がこの国の未来に繋がるとは思えないのです!)
寝室の蝋燭が燃え上がると溶けてなくなり部屋は真っ暗になった。
フィアLV13 ジョブ:人形使い 武器:人形
頭装備:リザードフード 胸装備:リザードベスト
腕装備:毛皮のガントレット 腰装備:リザードベルト
足装備:毛皮のブーツ 装飾品:炎の腕輪
HP:130 STR88(40) DEF50(25) INT70(30) MEN50(25)
AGL80(40) LUK25(0) 炎体制UP




