第二十四話 再会の市場
初めての船旅でフィアは興奮していた
しかし新聞の記事にはフィアと真那の戦いを異能を持った者同士の争いと書かれ
世間には暗雲が立ち込めていた
リュールは旅先の景色を楽しそうに眺めるフィアに冒険者を諦めて欲しくはなかった。
そして海の街ジェネローザに着いたフィア達は早々に次の船の手配をしに市役所へ向かったのだった。
フィア達は市役所へ向かい手続きを済ませ
宿の一室で今後の予定を話し合っていた
『今日と明日しかありませんが気になる場所があれば見に行ってみましょう』
『リュールさんは道中で気になる場所はありましたか?』
船から降りゴンドラでジェネローザの街を移動していた
道中様々なお店を見かけていた
貝殻を使った髪飾り木彫りの魚に魚拓など
『私ですか?うーむ…海の植物…ですかね』
『塩生植物と言って海水に適応した植物なんですよ』
『どこにでもあるのですね』
『そうなんです!どんな環境にも適応し進化を続ける植物を私は尊敬すらしています!』
『フィアさんにも是非…』
熱心に語るリュールの話をフィアは嬉しそうに聞いていた
『それでは再会の市場に行ってみましょうか?』
『再会の…市場にですか?』
『あらゆる商品が並ぶジェネローザ最大の市場です』
『私が見たい植物もフィアさんが食べたい物も見つかるかも知れませんよ』
『行きましょう!』
…
……
リュールは漕手に料金を払い市場に踏み込んだ
活気のある声よりも圧倒されたのはその規模だった
所狭しと食品が並び見たことも無い商品の数に目眩がしそうだった。
『早速ありましたよ、サンゴ草です!これを一つください。』
リュールは立ち並ぶ食料品の中から素早く手に取ると代金を手渡した
『ふふ…帰ってから食べるのが楽しみです』
『食べるんですね』
フィアは苦笑いしながら言った
『他国への植物の持ち込みは禁止ですから…それにこのサンゴ草はそのままでも食べられるのですよ』
リュールは束の中から二本引き抜くと一本をフィア渡すとそのまま齧った。
『なんだか…癖になる味ですね』
『時期が良ければもっと美味しいのが食べれたんですけどね』
『時期ですか?』
『サンゴ草の旬は春から夏』
『冬に掛けてこの時期のサンゴ草は赤みがかった色をしているのです』
『しかし赤くなったサンゴ草は外見こそ美しいですが味は硬くなって食べれたものではありません。』
『私達が食べたのは冷凍のサンゴ草ですね、それでもやはり本場は味が違いますね』
意気揚々と語るリュールの言葉をフィアは真剣に聞いていた
(オレイアスではなんだか元気が無かったので明るくなってくれて良かったです)
フィアが心の中で安堵していると背後から声をかけられ食事の手を止めた
『やっぱり!!』
そう聞こえた頃には不意に抱きつかれていた
状況が呑めずに混乱していると
ニーナがいる事に気が付いた
予想だにしなかった再会に驚きと同時に涙が出てきた。
目線だけを動かしクロエを見つめた
『ご、ごめんなさい……心配を…掛けてしまって…』
再会に胸が高鳴り心臓の音が相手に聞こえてしまうのでは無いかと心配になった
『ギルドにステータスの更新があったから、無事なのは知ってはいたけど…本当に良かった…。』
仲間との再会はフィアにとって1番の喜びではあったが
同時にシラヌイの禍根を残しておくわけにはいかなかった。
何故狙われなければいけないのか…仲間の顔を見たフィアは何としてでも王に謁見し問いただす覚悟を決めた。
『心配をかけてしまって、ごめんなさい…』
フィアは2人に頭を下げた
『でも…どうしてここがわかったのですか?手紙には具体的な場所は書いて無かった筈ですが…』
クロエは新聞を見せた
『これ、私ですか!?』
そこには小さな見出しに
【死闘!異能者同士のぶつかり合い!】と書いてあり内容は人形の少女が犯罪者組織の1人を倒し逮捕に貢献したと書いてあった。
ちなみに紙面を大きく飾っていたのはネメアの獅子による奈落の調査結果だった。
【いかにして大罪人ヴィクターは死の大地から脱出したのか…!】
【ネメアの獅子が解き明かす!】
そんな事が書いてあった…。
『直ぐに気づいたよ』
ニーナがフィアに言った
クロエは新聞をしまいリュールと向き合った
『ギルドの方…ですよね、友達を助けていただき、ありがとうございました』
クロエは手をお腹の辺りにおき深くお辞儀をした。
『気にしないでください、それよりもお二人には私からも話があります』
リュールの言葉でゴンドラに乗り人気の少ない場所へ移動した
フィアと緑溢れる公園に見入っていた
リュールはクロエを呼ぶと2人で話し始めた
『それで話とは?』
『フィアさんの事です、新聞の記事を見たのならわかると思いますが…あの書き方だと異能者同士の戦いに見せかけていますが私もその場にいたのです…』
『つまり?』
『意図的にあの記事を書いた…と言う事になります、そうなるとフィアさんが組織に狙われる可能性も高くなります』
『なるほど、世間の反感に組織からの報復…冒険を諦めて保護課に入るには十分な理由ね』
『この事は各国の冒険者ギルドに伝えてはありますが、あなた方にはご友人としてこの事を知っておいて欲しかったのです』
『私としてもフィアさんに純粋に冒険者として冒険を楽しんで欲しいのですが…』
クロエは少し考えてから言った
『それは…神の眷属としての美徳?それともリュールさん貴女個人の意思?』
リュールは一瞬答えに詰まった
『眷属としての矜持であり…私個人の意思でもあります』
『それなら話は早いわね』
『リュールさん!貴女がパーティーに加われば万事解決ですよ!』
『謹んでお断りさせていただきます』
『ギルドの職員が個人に深く肩入れすればどうなるか…想像出来ない訳ではないでしょう?』
『冒険者は自由に冒険出来るのにサポート側は自由に冒険出来ないのは…ギルドとしてどうなのですか?』
『そう言うものだからです』
『私達が斡旋だけに勤めているのはダンジョン内での公平性を保つ為です、どうかご理解下さい、必ず邪魔が入らない様にサポートしますので…』
『わかり…ました。』
クロエは渋々受け入れた
『でも、どうして私を誘ったのですか?』
『フィアにはこの世界の…歪なところを見せたく無かったので…』
『…』
『ですが、そのおかげで何処に行っても受け入れられてもいるのですよ、【迷う者がいれば信仰を説き導いて…】』
『私達にとっての当たり前もあの子にとっては違います…信仰を裏切る恐ろしさを知らなければ…利用される怖さも知らない。』
『…』
『それだけならまだ良かったんです…問題なのは本人に自覚が無いのに渦中にいる事…』
クロエの話をリュールは静かに聞いていた
『…私は…フィアさんを必ず守ると誓いましたから』
『でも、それはギルドでの話ですよね?個人の意思があるのなら何故帰られるのですか?』
クロエの言葉には怒りが滲み出ていた
しかし話はフィアが戻ってきた事で打ち切られた
『それでは…』
リュールは立ち上がるとフィアに言った
『予約した船は私の方で取り消しておきますので、3人での冒険の旅を楽しんでください』
『ここまで送っていただきありがとうございました!』
フィアが頭を上げると目には涙が浮かんでいた
『ずっと…お世話になりっぱなしで…』
フィアの言葉を遮る様にリュールは言った
冒険者ギルドとして当然の事をしたまでです』
フィアの右手を取り両手で優しく握った
『またいつでもアールヴヘイムに来て下さい、歓迎しますよ』
リュールは宿で報告書を纏めながらギルドの同僚と話していた
『組織の情報は分かり次第、伝えてくれるそうです』
『…それなら私が戻っても大丈夫ですね』
『護衛はもう良いのですか?』
『こちらのギルドに引き継いでいますので…捜査に合流しましょう』
『しかし、ティターニア様やリリーベル様が何も見つからなかったと…』
『捜査するのはアールヴヘイムではありません』
『まさかジェネローザ(ここ)で犯人を探すのですか?!』
『単独での捜査は危険です!後はこの国の警察に任せて戻りましょう』
『新しい防護策を考える会議があってリュールさんにも参加して欲しいのです!』
同僚の言葉にリュールは答えなかった
『…わかりました。』
同僚は渋々頷き部屋をでた
『…さて、どうでしたか?』
リュールは戻ってきた精霊に語りかけた
精霊は身体を左右に振った
『この区域にはいませんでしたか、やはり海の中でしょうか…』
リュールは同僚に渡された紙と地図を見比べながら組織を探し出す考えを巡らせていた。




