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人形使いの付喪神  作者: 穂積
第三章
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第二十三話 海の街

真那を捕らえた騎士団の男はフィアに友人なのか尋ねた


フィアは堂々と友人である事を話したが

男は理路整然と自身の正義を語った

『掟を破った者や裏切り者には必ず罰が降る』

『では、もし…貴方の大切な人が罪を犯した場合はどうするのですか?』

男は少し悩みながらもそれなら自ら手を下すと言った

忠誠を誓った主人よりも…家族よりも…主の教えは何より大事なものだと。


フィアにその考えは理解出来なかった…


話は早々に終わり解放されたフィア達は海の街ジェネローザへ向かう準備を始めた

峡谷の切り立った崖に挟まれながらフィアとリュールは小舟に揺られながら川を進んでいた

舟には人魚族の漕手そうしゅ含め4人が乗っており

眼前には曲がりくねった川が続き船を漕ぐ静かで柔らかな波の音だけが聞こえていた


舟に乗ってからフィアの視線は水面から一度も離れる事はなかった、落ちないように船縁ふなべりに手を掛けながら水面をじっと眺めていた。


リュールはそんなフィアの横顔を見なが船に乗る前の会話を思い出していた


『組織の1人を捕らえたと言う事は他のメンバーからすればフィアさんは仲間の仇であり狙われる可能性が極めて高いです』

ネメアの獅子のアレンから忠告を受けていた

『…それでも我々の保護は受けずに旅立つのですね』

『はい…冒険者が憂なく冒険出来るようにするのがギルドの役割ですので』

リュールはギルドの一員として一冒険者であるフィアを護ることを心に誓った。


舟には2人から少し離れた位置で獣人族の男が目を瞑りながら周り警戒していた

(私含め護衛は2人いますが…今の所敵の気配は感じ取れませんね)

リュールが真剣に考えを巡らせている中で

フィア本人は全く気にせずに楽しそうに湖を眺めていた


細い道を進んでいると視界が開け大きな湖に出た

フィアは感嘆の声をあげた

『楽しそうで良かったです』

『…シラヌイで見かけた時から一度でいいから舟に乗ってみたいと思っていたので!』

フィアは懐かしそうに言った

『舟巡りと言って街の中を船で見て回れるみたいです』

『それは良いですね、街の景色を眺めながらのんびり出来るのは…』

『あっ!何かいますよ!』

フィアは水面を指差しはしゃいでいた

『あれは…パイクですね、息継ぎをする為に湖面に顔を出したのでしょう』

湖面近くを黄色い魚が泳いでいたが直ぐに潜ってしまった

『大きかったですね…』

『あれはまだ小さい方だねぇ』

話を聞いていた漕手そうしゅが言った

『あれでですか?私の身体くらい大きかったのですが』

『成長すれば倍以上に大きくなるよ』

漕手は自慢げに言った

『倍…私と同じくらい大きいですね』

『海や川には大きい魚が一杯いるんだよ』 

『終生成長と言って水棲の魔物は寿命の限り身体も成長し続けるのです』

『リュールさんは本当に物知りなんですね、こんな状況じゃなければもっと話を聞いていたかったです』

『その言葉はガイドとして最高の褒め言葉です、とは言え私も本に載っていない事だらけで驚きました』

『検問所が見えて来たよ』

漕手の声で前を向くと奥の方に橋がかかりその上に検問所が立てられていた

『船を乗り換えるから向こうで合流だ』


検問は直ぐに終わったのだが検問所の中には水槽があり

フィア発光する小さな魚に釘付けになっていた


『私はあっちの魚の方が好きですね』

そこには大きな水槽の中で赤や黄色い魚が泳いでいた

『やっぱり色と同じだからですか?』

『いえ、味が…』

リュールはお刺身と白ワインの組み合わせについて雄弁に語った

フィアは生魚は食べた事がなかったそれを聞いたフィアは食への探究に郷愁がつきなかった

『そんな組み合わせがあるんですね〜』

目を輝かせるフィアにリュールは少しだけ後悔していた

(お酒を飲んで大丈夫なのでしょうか…そもそも年齢は幾つになるでしょう?)

フィアとリュールはしばらく水槽を眺めていると

漕手に呼ばれ大きな船に乗った

船の先には巨大な魔物が海面に浮かんでいた

全容は確認出来なかったが海面から浮き出た背中で巨躯が想像出来た

しかし驚いたのはそれだけでは無かった

カラフルな珊瑚礁に翡翠色の美しい海に興奮していた

『これはセイレーンの歌魔法で船を引いて貰うんです』

『こんか巨大な魔物が引いてくれるんですね!』

フィアは船縁から広大な海を眺めていた

『中には入らなくていいのですか?』

『はい!』

『結構揺れますが大丈夫ですか?』

『?だ、大丈夫です!』

2人の会話を聞きリュールが船内に入るのを確認すると漕手は魔物に合図を出した

『それじゃあ頼むよ』


フィア達は大きな船に乗船しアステリスの外側、海路からジェネローザへ向けて出航した


その巨躯で波を引き裂きながら猛スピードで進んでいた船は大きく揺れフィアは水飛沫が目に入らないように目を瞑りながら海に放り出されない様に必死に船縁ふなべりに捕まっていた

(どうしよう…めちゃくちゃ怖いです!)

一瞬でも力を抜けば揺れた弾みで船から放り出される

そう錯覚するほど体感の揺れは激しかった


『大丈夫ですか?中に入れば揺れも少しは落ち着きますよ』

リュールは苦笑いしながらフィアに魔法をかけた

フィアはリュールの魔法のおかげで揺れが平気になったが反省し船内に入りようやく安堵した

『全然…大丈夫では無かったですね』

涼しい顔でリュールは紅茶を飲んでいた

船は相変わらず揺れてもいるにも関わらず

ティーカップからは溢れてはいなかった

『そういえばリュールさんは平気なんですね』

『あの程度ならまだ問題ないですね』

『凄いです!私にも出来るのでしょうか?』

『防御力を上げる魔法の応用で揺れにも対処出来るのですが…それはジョブギルドの先生に任せましょうか』

フィアは少し残念そうにしていた

『ここでその練習をするのは危険なので…』

『な、なるほど』

2人は気を取り直しジェネローザの本を広げた

そこには上から描かれた町並みの景色が描かれていた

橙色の屋根の家が並び街の中央には大きな湖

横のページには街の中に水路が引かれゴンドラの上で楽しそうに会話をしている家族の絵が描かれていた。

……

−海の街ジェネローザ −北川ゲート−

『ふぅ…ようやく着いたわね』

クロエの言葉を聞きニーナは新聞を畳み鞄にしまった

そこにはオレイアスでの騒動が載っており人形の少女が戦った事も書いてあった

『この人形の少女ってフィアの事だよね』

『…多分ね』

ニーナの問いにクロエは苦笑いで答えた


船から降りようと椅子から立ち上がろうとした2人の前を人間族の男と鳥人族の男が通って行った

『もっと厳重に管理すべきなんですよ!奴ら特別な力があるからって、つけ上がっているんですよ!』

『しかし騒動を収めたの者も同じ異能者だと書いてありましたよ、それに厄介な狂信者が居るのも事実ですからね』

異能を持った者同士の争いや組織だっての犯行は世間に衝撃を与え、異能者を排斥はいせきしようと考えている者達の活動は過激になっていた。


先に人が降りるのを待ちながらクロエは懐から手紙を取り出しフィアからの手紙を読み返した

『私は無事です、私を信じてどうか探らないで下さい

今はギルドの方と共に行動しています』

とだけ書いてあったが何度か消して書き直した後があり薄く 信じて 待って 嬉しいなどの文字が薄ら見えた

『信じて待っていて下さい…って書こうとして待たせるのは悪いから消して書き直したんだろうね』

2人は軽く笑った後に椅子から立ち上がった

『オレイアスの街は数日通行止めだったからフィア達も丁度着いた頃じゃないかな?』

『先ずはギルドに行って探してみましょう』

クロエはフィアからの手紙を大事そうに鞄にしまうとギルドへ向かった

……

目的地に着き船は停泊したが波に揺られていた

『気を付けてください』

手摺に捕まりながら慎重に進むフィアにリュールは手を貸した

『ありがとうございます』


『今のうちに市役所に向かい次への手続きを済ませてしまいましょう』

『はい!』

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