第二十ニ話 旅の再開
フィアは真那の過去を警察官伝えた
それはフィア自身で真那を捕まえる為だった
戦いは長く続いたがフィア思いを込めた拳に真那は倒れた
傷が回復し意識が戻る前にリュールは蔦で拘束し
警察の到着を待った。
鉄の音を鳴らしながら近づいて来たのは
警察やギルドの者では無かった
日が傾き赤い夕日を背に5人の獣人族は唯ならぬ雰囲気を漂わせていた
1人の男は金色の鎧を纏いフィアの近くに降り立った
また黒い鎧を着た白髪の老人がリュールへ向かった
全員、胸に牙の紋章がついていた
『フィアさんに…リュールさんですね』
金色の鎧を着た男は最後に真那を見つめた
『あの…警察やギルドの人達はどうしたんですか?』
『失礼致しました、先ずは自己紹介を』
『私の名はアレン、王女からの命により本件は我々【ネメアの獅子】が請け負う事になりました。』
フィアは訝しげに聞いていたが真那は大人しくしたがっていた。
ネメアの獅子と名乗った者達が余程強いのか真那が反省してくれたのかフィアには分からなかった。
『戦いで疲れている所申し訳ないですが一緒に来てもらえますか?』
男はフィアに魔物の背に乗る様に促した
『では、私はここで検証に付き合いましょう』
リュールは慣れた様子で白髪の老人に話しかけた
『話が早くて助かります』
…
……
魔物の背に跨り揺られながらフィアは真那の事を考えていた
真那が囚われている箱を見ていると男が口を開いた
『彼女とは何かしらの関わりが会ったと聞きましたが…友達だったのですか?』
言い淀むフィアに男は言った
『まるで心配する様な眼差しだったのでね、何にせよ
彼女の情報が分かり次第貴女にもお伝えしますね』
『情報…ですか?』
『基本的なステータスから使える技に異能の詳細などですね、今後に備えて各国にも伝えなければなりませんので』
今後、真那がヴィクターを脱獄させた様に真那を助けに刺客が来る事を危惧していると言う事だった。
『友達なら何かあるのですか?』
『特にはありませんが、珍しいなと思いまして……』
『この国の人は自分達の問題は自分達で解決する意思が強いんです』
『ネメア様の教えの一節にも【王は強く凛々しくあれ慕う者あれば互いに決して裏切る事なかれ、されど偽りの王には決闘を持ってして爪と牙を突き立てよ】と記載があるのです』
『友なら尚更です、間違いや失敗は許されても裏切り者には必ず罰が降り追放されるのがこの国の掟ですから』
真那のやっている事は間違っていたが彼女が受けてきた虐待もそれを見て見ぬふりをされた事も本当の事だった
フィアはこの男性が自分と同じ状況ならどうするか気になった
『もし…貴方の大切な人が何かの事情で悪事に手を染めた場合でも同じ事が言えますか?』
『私なら事態の全容を明らかにし裁判で是非を問いますが…そう言う意味では無いのでしょう』
『私が最も敬愛している方はルドルフ様です、
あの騎士団の中にいた黒い鎧の白髪の老人がルドルフ様です』
『ルドルフ様は元々この国の王でしたが孫娘のノア様に決闘で敗北し退位されたのです』
『自分の娘にですか?王様がどうして騎士団にいるのですか?!』
『孫娘が心配で退位後に騎士団に入り功を上げ娘から直々にネメアの獅子に任命されたのです』
『それでアレンさんは良かったのですか?』
『はい、ノア様もこの国の事を勉強し自分なりの考えで国を良くしようとしています、それにノア様にも実力が無ければ決闘は成立しませんから。』
『この件について私から言える何も事はありませんよ』
『ルドルフ様も孫娘から命令が出るのを楽しみにしているくらいですからね』
『もし……万が一…罪を犯していたのならその時は魔人族よりも先に私が手を下します。』
フィアは言った
『それ程大切な方なら罪を正す為に戦はないのですか?』
『この国では間違いやミスは許されますが…裏切りは最も重い罪なのです』
アレンはキッパリと言い放った
『その一つすら守れない者は貧民街に身を寄せるしか無いのです』
『見えてきましたよ、オレイアスに着きましたら宿には戻れますね?』
『あの…話があったのでは無いのですか?』
『もう大丈夫です、十分な情報は得られましたから』
男は檻を見つめながら言った
…
……
この会話を小さな檻の中で真那は聞いていた
『友達…か、互いの好きな物も話した事ないのに…』
『………お姉ちゃん、何が好きなんだろう?やっぱりお肉なのかな?いつ見ても肉食べてるし…』
真那は格子から入る僅かな日の光を見つめながら言った
……
リュールから状況説明を聞いたルドルフは一瞥すると横の男に合図を送った
魔物に乗せ街まで送るつもりだったのだろう
『お構いなく、私は1人でも戻れますので…』
リュールの足元には魔法陣が浮かび上がった
『そう言う事でしたか…では後のことは我々に任せて下さい!』
『今日の夜には通行も可能になりますので!ご不便をお掛けしました。』
深々と頭を下げるルドルフにリュールは困っていた
『お気になさらず、そ、それでは私はこれで…』
『ルドルフ様…通行の話は後日、手紙で謝礼と共に送られる手筈になっているので此処で伝えなくて良いんですよ』
軽装備の女性団員が言った
『何を言うか!準備には時間が掛かるのだぞ、店によって値段が違ったりする上に慣れない土地では移動だけでも体力を使うからな』
『そ、それも兵士時代の話ですか?』
『うむ…』
男性団員が聞いた
『元の立場を活かせばもっと楽に慣れたのでは?』
『そんな事をしたら他の兵士に示しがつんだろう…それにノアやフローレス家の名前に傷がつく』
『引退してもなお威厳がありますねぇ』
『退位を引退って言う人初めて見た』
ネメアの獅子は王直属の精鋭部隊であり
戦闘 追跡 調査のプロが揃っている
『それで…場所はわかったのか』
海岸で1人調査している女性は立ち上がると言った
『風向き的に向かったのはジェネローザだね』
『セイレーン達の大陸か…よしっ追跡は俺が行こう
特令の通行所を出してくれ!』
男は手を出して催促した
『ノア様やアレン隊長に指示を仰ぐのが先ではないか?』
『そんな事してたら逃げられちまう!いま身軽に動けるのは俺しかいないんだ』
男の説得に女性は渋々通行所を手渡した
『でも…気を付けて今のヴィクターのLVは65
刑に処されてからずっと鍛えていたみたいだから…』
『知ってるよ…その上で行くんだ』
…
……
場所はリュールのいる宿へ
最初は脱走を危惧していたが大人しく檻に入る真那を見てリュールは考えていた。
(私だけなら楽に制圧出来たかもしれませんが、彼女
は投降は愚か戦う事すらしなかったでしょう)
(彼女が戦ったのは恐らくフィアさんに共犯者にしない為…結果的にそれが確保に繋がりましたが、強さだけでは解決出来ないこともあるのですね)
宿の椅子に座り調査結果を紙に記入しまとめていると不意に手が止まった
『私がエルフ族に産まれていたら普通に生きられたのかな』
あの時の真那の言葉がリュールの頭の中で反響していた
(あの子のあの言葉…当時の私ならについて行ったかも知れないですね)
家族と離れ離れになった時の悲しみと訃報を聞かされた時の事は今でも覚えていた
あの時と同じ様に空を見上げた
雲一つない澄んだ夜空はとても美しかった
『離れていても同じ空を見上げているから…』
その時扉が開く音がした
『どうやって私より先に戻ったんですか!?』
驚くフィアに転移魔法の事を伝えた
『リュールさんも使えたんですね』
フィアは羨ましそうに言った
『転送魔法は大地の気脈を利用するのですが、それは自然にとってはあまり良くない事なんです』
『下手に傷つければ流れが乱れ本来そこにあるはずの自然を奪ってしまう事になりかねないのです』
『ただ便利なだけの魔法じゃないんですね』
『さぁ…明日の明朝出発しますよ』
『もう大丈夫なんですか!?でも…明朝って…』
『早く寝ないと乗り遅れるかもですね』
フィアは慌てて支度を始めた
机に広げていたローグ用の道具をバックに仕舞いこんだ。
…
………
場所は移りオレイアスの城の地下へ
真那は目隠しに四肢を拘束され椅子に磔にされていた
『お姉ちゃんへの聞き込みが甘いと思ったらやっぱりそういう事だったんだ…』
『吐かなければ…友人がどうなるか…わかっているな?』
『でも知らない事には答えられないから…ッ!?』
太物に激痛が走った
何かが突き刺さる様な痛みだった
『次は足だ』
『…今頃お姉ちゃんは凶悪犯を捕まえた英雄になっているんじゃないの?』
『ネメアの獅子のアレン様と相乗りまでしちゃって…そんな民間人に手を出したらどうなるのかな〜?』
男は手を止め鉄の棒を取り出した。
『まぁいい…喋らなくとも異能の調査は出来る』
『あまり私を殺さない方がいいよ…記憶が飛んじゃうから…』
『おじさん、印象が薄いからまた初めましてからになっちゃうかも…』
真那の笑い声が暗い地下に反響していた。
【ネメアの獅子】
戦闘員3名と非戦闘2名で構成された王直属の部隊
ヴィクターがどうやって奈落から抜け出したのかを調査していた。
①奈落には干からびたサンドワームの遺体があり腹部を深く抉られた跡があった
外部からの協力者或いは勧誘目的で差し出された可能性あり。
同時に近くには黒い羽が落ちており匂いやワームの傷口から鳥人族の男性
年齢は25〜30代 ジョブは竜騎士:LVは45前後と推定し
調査のために鳥人族の大陸フィオーレ国へ向かうも該当する住民は居なかった。
その後、帰国し勅命を受けた。




