第二話 人形使い
緊急の依頼を受けた冒険者のクロエは蜘蛛の巣窟で人形の少女と出会った
人形の少女はフィアと名乗り自身が記憶を失くしている事を伝えた
洞窟の中でヒカリゴケに目を輝かせるフィアの姿にクロエは彼女を助ける事を決意する
クロエはこの街で起きている事やルールについて教えた
1:人形は自由に動かない2:人形は自由に話せない3:人形はコアがあって初めて動く
4:王族が襲撃され街が警戒態勢を敷いている事
その後、魔物に襲われた村を訪れたが既に廃村となっていた
弔いの花を添えると二人は町へ帰還した
鑑定所でフィアについて鑑定してもらうが何もわからなかった上に
コアの無い人形は価値がないと言われてしまう
戦えないことで落ち込むフィアに
クロエは戦う手段であるジョブを習得することを進めるのであった。
『この街【イースマキナ】で習得できるジョブはこのあたりだけどどうかな?』
『決めました…私は…私は人形使いになりたいです...』
『いいねぇ!じゃあ早速行こうよ!』
服を着替え手袋をつけると関節部分が隠れ人形特有の部位が見えなくなっていた
『似合ってる似合ってる、よし行こう!』
2人はギルドへ向かい歩き出した
『すいませーん!人形使いになりたいのですが!』ギルドの人達の目線がこっちに一気に集まり少し恥ずかしかった。
『それではこちらの用紙に記入をお願いします、あちらに椅子と机がありますので…』
奥の部屋から男性が出てくると淡々と言った
あらかじめ打合せしていた生年月日や居住地を記入し提出した
『お、お願いします』
『ありがとうございます、では…フィアさん人形を選んで頂きますのでこちらに…』
クロエの方を振り向くと手を軽く振ってくれていた
(頑張って!)口パクだったがなんとなく言ってる事がわかった
奥の部屋に入ると小さな部屋に人形が棚一杯に並んでいた
『こちらの中から自由にお選び下さい、性能に違いはありませんので見た目で選んで頂いて結構ですよ』
…選んでいると一つの人形に目が留まった…白い髪に黒いドレスを纏った人形だった
近づき抱き抱えると男性に伝えた
『この子にします』
『では次に人形に手をかざしてリンクを繋いで下さい』
言われた通り手をかざすが反応がなかった…
『どうしました?魔法人形に手をかざす時と同じようにやればいいんですよ』
『この登録は人形とフィアさんの相性を確かめるための物ですので別の人形で試しても…』
言い終えない内に人形が光り輝き子供ほどのサイズまで大きくなっていた
『こっこれでいいのですか?!』
人形から青い光が伸びフィアの手に繋がっていた
『おめでとうございます、これで人形使いには慣れましたね、こちらをどうぞ』
男はどこからともなく本を取り出して渡してきた、人形使い入門書と書いてあった。
『復習する時にお使いください、このまま基礎の練習をしていきますか?』
『お願い、してもいいでしょうか?』
『勿論です、では付いてきてください』
男は廊下を進んで行ってしまった
(これは小さくならないのでしょうか)
フィアは大きくなった人形を両腕で抱えながら追いかけた
長い廊下の階段を降ると半開きのドアの前で男は待っていた、部屋に入るとそこには広い空間と奥には木製の案山子が等間隔に並んでいた。
『まずは自己紹介から僕は顧問のリモンです、よろしくお願い致します』
習ってフィアも自己紹介をした後お辞儀をした
リモンは微笑みながら言った
『フィアさんは礼儀正しい方なんですね』
『さて、先ほどの様に人形は通常のサイズからサイズアップするのが基本の戦闘態勢になります』
リモンの人形が大きくなり部屋の真ん中で小躍りを始めた
『そして手元に戻るように引けば…このように元のサイズに戻ります』
手元に戻す様に引くと、勢いよく手元に戻ってきて慌てて抱き抱えると人形は小さくなっていた。
『お上手ですよ、次は基本の戦闘ですね人形遣いはイースマキナとシラヌイの共同技術で生まれたジョブで人形術と格闘術の複合が特徴なんです…このように突きを!』
リモンは構えると三段突きや蹴り上げを放ったそれに倣うように人形も同じ動きを繰り出した
『これで相手を挟み撃ちにしたり遠距離から物理攻撃を放てる事が可能なのです』
『さぁまずは格闘術の基礎の練習を始めましょうか』
練習用の案山子に基本の突きや蹴りをくり出すと人形も同じ動作をしたが…何もない空間に攻撃していた
(まずは…人形を相手の背後に配置しないと…)
人形に魔力を送り動かすと人形を挟み撃ちの状態で攻撃を繰り返した
『基本の動きに慣れてきたら突きをしながら人形には別の動きをさせてみましょうか…』
突きと同時に魔力を送るが人形はまったく動かなかった
(どうすれば…)口に手をあてて考えたのち閃いた
人形に先に蹴りをいれさせる事によって別々の動作を出来るようにした
(人形に振られてはいますが、機転は効くようですね)
リモンはフィアの練習の様子を紙に記して言った
練習はお昼になるまで続いた
『慣れれば人形を自由に動かしなが攻撃できるようになりますよ』
(はぁ…自分の動きと人形の動き両方を、意識するのがこんなに難しいなんて…)
へろへろになったフィアを見てリモンは中断させた
『今日はここまでにしましょうか、入り口まで送りますね』
フィアは人形を元のサイズに戻し抱き抱えた
『その人形が気に入ったのならその外見のまま材質を変えて性能を上げることも出来ますよ、お気に入りの人形で戦えるのが人形使いの長所の一つですからね』
外に出るとクロエが待っていた
『それは!人形使いに慣れたんだ!凄いじゃん!私はダメだったんだ…手をかざしたら爆発しちゃって…』
『爆発する事があるんですか!?』
『魔力を送り決まった動作をするのが魔法人形なら人形使いは手足のように人形を動かす柔軟さや繊細さが要求されます、強すぎる力は人形が耐えられない場合があるんです、その場合頑丈な人形を用意すれば人形使いにはなれますがね』
『でも特注で3万Gもするんだよ?せっかく格闘術を学んだのになぁ…』
『人族よりマキナやエルフ、セイレーン向けの職業になってしまっているのは否めないですね、それではお二人とも冒険の方も頑張ってくださいね』
『はっはい!ありがとうございました!』2人で頭を下げその場を後にした
『待ってる間に考えたんだけどフィアはお腹すかないの?』
『お腹は…空いていますね、でも食べれるのでしょうか』
これ食べてみる?クロエはそう言うと鞄からクッキーを取り出した恐る恐る口に運ぶと甘い味がした
『わぁ…美味しいですっ』
『おおっ!それならおすすめのお店があるんだ!』
路地裏を進むと古めかしい外観のお店が見えて来た
『ここはね【ネスト】って言うお店なんだ
お持ち帰りも出来るしダンジョン用にお弁当も作ってくれて何よりギルドより安くて美味いんだ』
店内に入ると
クロエのおすすめでケバブを2つ注文した
フィアはオリジナルソースでクロエは辛口ソースにした…
待っていると目の前のカウンター席で客と店員の会話が耳に入ってきた
『俺の話なんて誰も聞いちゃくれねぇ!俺だってやれば出来るってのに…こうなったら…』
顔を赤た男が荒れた口調で店員に愚痴をこぼしていた
店内を見回しているとクロエが言った
『そういえばギルドの張り紙に子供向けの人形劇が無料でやってるらしいんだけど見に行ってみる?』
『是非見に行きたいです!何かきっかけがあれば思い出せるかもしれないですし…』
フィアは興奮を押し殺しながら言った
『…本当は…?』
『人形劇が見たかっただけですっ!』
2人のやり取りを客がじっと見つめている事に気付いた
(もしかしてうるさかった?よく考えれば
黒いローブのこの格好…かなり怪しいですよね)
黒ずくめの格好は側から見れば正体を隠している様にしか見えなかった。
その時、客を店員が注意をした
『またお客さんに迷惑かけたら兵士さんに言いつけるから』
『ごめん!ここまで見つかったら息抜き出来なくて死んじまう!』
『それじゃあ皿洗いと仕込み手伝ってね♪』手を合わせ謝罪する男に女性の店員は笑顔で言った
やりとりを見ていると店員の後ろから袋が2つ出てきた
良い匂いがここまで届いていた
『お待たせしました!ケバブのオリジナルソースと辛口になります』
商品を受け取ると劇が始まるまで近くの公園で買ったケバブを食べることにした
白いベンチに横並びで座った、藤色の花や黄色い花が咲き誇り石造りの白い東屋にはプランターが吊るされ景色を彩っていた
人はまばらだったが先程まで遊んでいたと思われる
児童用の三輪車や枝に吊るされた縄跳びから見てとれた
フィアは最初大きさに困惑していたが一口食べると
綻んだ表情から美味しかったのが伝わった
肉とソースの味が口いっぱいに広がり野菜が肉の味をより引き立てていた
食事を終え満足した二人は入り口に向かうと魔法人形が飴を無料で配っていた
販売機で無料のチケット2枚購入し
受付にチケットを渡し中に案内され席に座るとフィアは興奮気味に言った
『ワクワクしますね!』
『うっうん…なんかあたし達浮いてるね』
フィアとクロエ以外小さな子供しかいなかった…
皆飴やお菓子、ジュースを片手に慣れた調子で待っていた
劇が始まるとフィアと子供達の熱烈な拍手で始まった
【昔々もその昔それこそ8柱の神々と8種族が共に暮らし、大陸がドーナツ状になる前の時代【アステリス】には沢山の島々があった】
壇上には手書きの地図が吊るされた
クロエは何度も見たことがあるものだ
歴史の授業でも習った有史以前の世界地図を記したものだった。
【魔物もおらず平和に過ごしていたある日、巨大な厄災が飛来した
それから神々とその眷属の厄災との長い長い闘いが始まった】
『【時の神クロノス】は自ら前に立ち巨大な口で厄災の右腕を嚙み砕いた
しかし噛み砕かれた右腕から数多の邪悪な魔物が生まれ人々を襲い始めたのだ!』
(あの頭しかない生物が時の神クロノス…なのでしょうか)
劇場の八割を占めるほどの大きさの巨大なワニが
真っ黒な物体の右腕らしき部分を噛み砕いていた
海を模した青いテーブルクロスの上に黒い塊が落ちるとそこから沢山の黒い魔物が現れた
【天の神アエトース】は眷属である龍人族を引き連れ現れると雷の雨を降らし魔物をやっつけた
藍色の布地に土色の舞台に切り替わると黄色い稲妻を模した紙が上から現れ魔物を次々と倒して行った
【火の女神シラヌイ】とその眷属である人は故郷を失った者達を導き安全な場所と消えない明かりを施した。
(シラヌイ…クロエの故郷ですよね、神様の中にはあんな綺麗な女神様もいるんですね)
【愛の女神ストルーティオン】とその眷属である鳥人族ハルピュイアは絶望する人々の下に降り立つと寄り添い「愛の魔法」で生きる希望を与えた。
幾つもの島や人々が犠牲になったがついに【厄災】を弱らせ島の一つに封印することに成功した
しかし神々もまたこの戦いで疲弊していた
封印した島を【トラゴエディア】と名付け
【地の女神ネメア】が島を囲うように陸地を作り人々をそこに住まわせた、眷属である獣人族は健脚を活かし各大陸に散らばり遠吠えによって大陸の情報を伝達した。
【海の女神デルフィーナ】がトラゴエディアを海中深くに沈め強力な海獣を海に放ち深海には近づかない様に人々に伝え、眷属である人魚セイレーンは海からくる魔物を倒し海岸の警備に徹した
【豊穣の女神アリエス】は眷属であるエルフと共に大地に緑と実りを齎した(もたらした)
【冥の神スキュロス】とその眷属である魔人族ディアニモは優れた嗅覚で厄災の眷属を見つけては退治していった。
その後神々は各大陸に散らばり自らの眷属を集め言った
『我々は眠りにつく事にした、たとえ我らが居なくとも信仰を大切にしてほしい』
言い終えると神々はそれぞれの大陸に還っていった
それから人々は神々に感謝し信仰を大切にしていた。
舞台が切り替わり黒い塊と人形が戦いながら解説が入った
『だが厄災もただ封印されるだけでは無かった、砕かれた破片は地中で時間をかけ成長し、地上に魔物となって現れたのだ』
クロエが小声で補足した『これが今で言うダンジョンなんだ』
我々はクロノス様より授かった時魔法を使い厄災の因子を打倒し続け3000年もの長い長い歴史を繋いできたがこれからも
クロノス様との盟約により信仰を大切にしなくてはならないのだ』
黒い塊を倒した機械の人形が祈りを捧げてるところで段幕が降りた
劇が終わり拍手が起こった
『よかったねクロ…』横を見たらクロエが真剣な顔で降りた幕をみていた…。『クロエ?』
『あっごめん、ごめん!これでなにか思い出せたりした?』
私は首を横に振り外を見た窓から見える太陽は夕方を表していた
他の子が全員帰りフィア達も立ち上がり会場を後にしようとした時フードを目深に被った男が立ちはだかった
観客席には子供だけでこんな男はいなかったはずだ
『少しいいか?』
男の問いにクロエがフィアの前に立って答えた
『なんですか?お邪魔でしたらもう帰…』
『君は魔法人形なんだろ?』
答えられない2人に漢はペンダントを見せた
フィアには理解できなかったがクロエにはわかった様だった
…
場所は移り『ネスト』の地下に移動した
あの時お店で店員と話していた男だった…男は自身を第二王子の『ルカ・シュトラウス』と名乗った
『どうしてわかったのですか?』
単刀直入に自身の正体がばれた理由について尋ねた
『俺にはこの目があるんだ…これは乖の目と言って真実の姿を映す瞳なんだ』
『あんたの姿は人形に見えるのに心が見えるんだ…魔法人形には心が見える筈ないのに…』
困惑するフィアに男はいきなり頭を下げて言った
『…断っても言いふらさないし追及もしない…だから』
『4日後に行われる前日祭に魔法人形として参加して欲しいんだ』
クロエは得心が言ったようで補足してくれた
『そういうことか…前日祭っていうのは一年に一度イースマキナで行われる『時祭り』の前日にある王子同士の模擬決闘なんだ』
『俺は今回の決闘では負けるわけにはいかないんだ…』
『確かにフィアなら魔法人形より戦力になるだろうけど、どうして急に?』
『俺が襲われたニュースは知っていると思うが、あれは兄を狙った物だと俺は考えている』
場の空気が重くなるのを感じた
『俺はあの時、兄の婚約者と一緒にいたんだ…顔は見えなかったが、何もせずにその場を離れたのは…犯人が…俺と兄を見分けることができる身近な人物だからと思ってるんだ』
『もし身近な人物なら勝者が被る王冠に罠を仕掛けてる可能性が高いんだ、その理由が今回の装飾が宝石ではなく可燃性の魔鉱石が使われているからなんだ…』
『それなら彫金士や王様に伝えるのは?』
『その王が魔鉱石の方がイースマキナに相応しいと言って聞かないんだ』
机に手をついて頭を下げた
『頼むこの通りだ!!』
フィアが悩んでいるとクロエが言った
『フィアの自由でいいんだよ?断ってもいいし引き受けたいならあたしも協力するよ!』
フィアは暫く考えた後に答えた
『…わっわかりました、精一杯協力させていただきます!』
村のこともありフィアはもう暗い話は聞きたくなかった
『ありがとう!!それじゃあ明日の朝、王城にこのコアを付けて来てくれ!』
それだけ言うとルカは勢いよく店を飛び出して行った
整理しきれない頭で考えているとクロエが言った
『第一王子か…名前はミハイル・シュトラウス』
『兄が強いのか弟が弱いのかはわからないけどこれまでの試合は確か…10-0で兄が勝ち越してるわね』
『私で大丈夫なんでしょうか…』
ショックを受けるフィアにクロエは言った
『それなら諦めちゃう?いまならまだ…』
『だっ大丈夫です!やるだけやって…みます』
フィアは軽く拳を握って答えた
それを聞いたクロエを嬉しそうに言った
『第一王子は私と同じ火属性だから色々協力するよ!』
『ありがとうございますっ!』
その後、帰り際に受付の女性から夕飯を貰い宿に向かった
宿に着くとクロエが最初にお風呂に入り次に私が入る事になった。
『人形ってお風呂大丈夫なのかな?』
『魔法人形なら大丈夫だよ一日中外にいる人形もいるし』
衣服を脱ぐと身体が球体関節人形の様になっていた
『ほんとに人形なんだ…』
浴室で鏡を見ると濃紺色の髪に青い瞳のセミロングにはねっ毛のある髪型だった…
『これが…私』
自分の身体なのに不思議な感覚だった
シャワーを浴び髪と身体を洗う
(暖かい…不安が和らいでいくような…)
洗い終え湯につかる…浸かっている心が落ち着き頭が冷静になってきた
(色々あったけど明日はルカさんと修行してその後は…
どうしようギルドにいくかクロエに修行を付けてもらうか)
明日の事を考えているうちに自分が何者なのか
なぜ魔法人形なのか、様々な不安を忘れることができた。
お風呂を出ると帰りに貰ったシシケバブをクロエが炎魔法で温めていた
『こうするとより美味しく食べれるんだよ!シラヌイではあたしはプロだったんだから!』
2人で食事を楽しみながら明日の予定について話した
『それじゃあお休みなさい』
『…お休みなさいクロエ』その日は驚くほどぐっすり寝ることが出来た。
『フィア』LV3 魔法人形?族 職業:無し ジョブ:人形使い 武器:人形
頭装備:未装備 胴装備:黒のローブ(頭装備兼用) 腰装備:未装備
腕装備:バングル 足装備:黒のブーツ 装飾品:未装備
ステータス HP80 STA15(8) DEF22(17) INT20(10) MEN22(10) AGL30(5) LUK25(0)




