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人形使いの付喪神  作者: 穂積
第二章
13/23

第十三話 【夜刀神】

あらすじ

中級冒険者になる為の条件を満たしていなかったフィアは人形使いのギルドへ

その間クロエとニーナは新しい装備の為に【わいら】という魔物を倒しに向かった

フィアは無事に技を会得しクロエとニーナは巣穴に隠れる狡猾な魔物に苦戦しながらも

なんとか討伐に成功する。

新しい装備を作った三人は昇級試験を受けにギルドへ向かうのだった

ギルド【アステリア】

三人はギルドで昇級試験の内容を聞いていた

『…今回は廃村の湖に住み着いた妖蛇、夜刀神やとがみ討伐が試験対象となっております』

渡された紙に目を通すと民家より角を持った大きな蛇が描かれていた

『安全の為ギルドから一人、試験管が同行します

香花このかと言います、よろしくお願いいたします』

『わかりました、こちらこそよろしくお願いします。』

挨拶を交わしクロエは依頼書を受け取り鞄にしまった。

『それでは私は馬車で待っていますので、準備が出来次第来てください。』

それだけ言うと外に出て行ってしまった

『あの方が同行してくれるんですね』

以前にフィアの冒険者のカードを渡してくれた人だった。

『ごめんなさいね、ああ見えて実力は確かだから安心してね

あの娘も、せめてもう少し表情が柔らかくなればね…』

別の受付の人がすれ違い様に言った

『そっそんなことないですよ』

フィアが慌ててフォローしたが聞こえているかはわからなかった。

『フィア…あまり気にしない方がいいよ』

『馬車に向かう前に幾つかお店に寄って行ってもいいかな?』

本で夜刀神やとがみについて調べていたクロエが言った

三人は鍛治屋で大楯を道具屋で魔除けなどを購入してから馬車に向かった

『これを持ってて』

クロエは難しい言葉が書かれた紙を皆に渡した

『…これは呪いを解除するためのお札だよ』

『呪い…ですか?』

夜刀神やとがみと眼を合わせ過ぎると魔法が使えなくなるんだ、そんな時にお札を持っていると呪いを防いでくれるんだよ』

『目を合わせたらダメなんですね…わっわかりました!』

『目を瞑ったり逸らしたりいくらでも対処は出来るから難しく考えなくていいよ』

フィアとニーナは札を懐にしまった

馬車で廃村に向かう道中クロエとニーナは作戦を立てていた

『水棲の蛇なら心臓は身体の中心なんだけど、タワーシールドで動きを止めれるかどうか…』

『どうやって湖から誘き出すかも問題だよ、湖に逃げられたら手を出せなくなっちゃう』

フィアは森を眺めていた香花このかに聞いた

『あの…廃村って警察が取り戻したりしなかったのですか?』

『…夜刀神やとがみは見た者を呪うのですが、それが厄介で村を取り戻したとしても呪いは土地に残りそれを回復するのにも時間が掛かるんです』

『確かに魔力が豊富な場所でしたが、割に合わないのが実状です』

『土地にも影響があるのですか』

『そういえばフィアさんは記憶を無くされていたんでしたね

呪いはこの大陸の一部の魔物が持つ特有の能力で、魔力の流れを停滞させ枯渇させるんです。』

『枯渇したら食べるものが無くなってしまうのでは?』

『ふむ…魔力の流れを停滞させそこに貯まって凝固した魔力の塊を食べているのです』

『魔力の塊…でも土ですよね』

2人が話している間ニーナは槍を研いでいた

空にかがけ傷がないか確認した

『問題は…一撃で仕留められるかどうか…』

横で話を聞いていた香花このかが口を開いた

『槍使いはそれが課題ですから…』

『敵を一撃で仕留めるには全力を出す必要がある、でも全力を出していては長続きはしない…敵の力量を見極め適切に処理する、それが槍使いの戦い方であり難しい所なんです。』

香花このかの真剣な表情にニーナは真面目に聞いていた

フィアはその言葉を聞き人形使いのギルドで言われた事を思い出していた。


無事に課題の魔物を倒したフィアは新しい技を教えてもらえる事になっていた

『新しい技を教える前に伝えておくことがある!』

担当してくれていたお婆さんが強く言い放った

『これからの冒険であんたは人形使いを選んだ事を何度も後悔することになる』

フィアは言葉の真意を探るように強く見つめた

『人形使いは多くの役割を持てるがそれは、咄嗟とっさの場面で多くの選択があると言うこと』


『役割を順守するなら回復や防御魔法で構わないが、仲間が耐えられそうに無い攻撃を中断させたり、人形を犠牲にしたりして機転を利かせれば救えた命や戦況を変える事だって出来たって事なんだ』

婆さんは一呼吸おいて言った

『後悔したくないなら精進する心を忘れるんじゃないよ』

『はっはい!』

……

フィアは人形を見つめた

(いざって時には…)

『見えてきました、あれが廃村への道になります』

☆5【夜刀神】

そこには手付かずだったのか砂利で出来た道の横から雑草が生い茂り塀が蔦に絡まれていた

『ありがとうございました、後は私が…』

香花このか御者を帰すと手に炎を集め始めたがそれをクロエが手で制した

静寂が流れ木々の擦れる音に混じってシューという音が聞こえて来た

『気付かれてる…ニーナ、炎で気を引くから上からお願い、フィアは援護を』

香花このかさんは下がっていてください』

クロエの指示でフィアは横にニーナは空中に飛ぶとクロエは炎を放った

蔦と扉が燃え始めると壁の奥から引きずるような音が聞こえ壁の隙間からはその大きさが伺えた。

『…来るっ』

一瞬の静寂の後、轟音を立て扉が破壊されると妖蛇が飛び出してきた

その大きさは人の腰ほどある大きさの頭に長さは数十mほどもあった

頭には角、身体に赤い模様、瞳はギラツキ、舌をチョロチョロと出していた。

(…思っていたよりも大きいですね、どう戦うか見させてもらいますよ)

香花このかは遠方の木の上から眺めていた

『そこだ!』

ニーナは空から強襲を仕掛け身体の中心を貫いた

瞬間、夜刀神やとがみは身体をひねらせた

『外れた…』(こいつっ!?)ニーナは慌てて槍を手放しその場から飛びのいた

『ニーナさん大丈夫ですか!?』

『大丈夫っ!拘束や瞳に気を付ければ良いと思っていたけど、まさか武器を絞め取られるなんて…』

クロエは手を伸ばし槍を戻そうとしていたが強靭な筋肉に締め付けられ槍は動けなかった

『私が取り戻します!』

困惑しているニーナにフィアが人形を構えながら言った

夜刀神やとがみは身体をしならせクロエと睨み合っていた

フィアの動きに合わせクロエが盾を構え近づくと夜刀神は大口を開け噛みついた

大楯は妖蛇の丸呑みをギリギリで防ぎクロエは前のめりになりながら、押されつつも足で踏ん張っていた。

(ニーナが引き抜こうとしても無理だった…それなら私は)

クロエは人形と共に飛び上がると踵落としを槍を挟むように放った

(……硬い!ならせめて槍だけでも)

フィアは下の方を掴み力いっぱい引っ張ると槍を引き抜いた

『抜けました!』『フィア後ろ!』

屈んで尻尾からの攻撃を避けるとニーナに槍を渡した

(このままじゃ…早く方をつけないと不味い)

夜刀神やとがみのの口は徐々に大きくなり盾を飲み込み始めていた

『ニーナ!フィアっ!』『わかっています!』

クロエの合図でフィアは二人に力が上がる魔法を使い

ニーナは既に空高く飛び上がっていた

(心臓は…上か、下か…)

ニーナが思案しているとフィアが魔法を数回重ね掛けしてきた

『こんなに使って大丈夫なのか?!いや…そう言う事か、それなら』

フィアの意図を察したニーナは更に高く…もっと高く…

(はぁはぁ…空気が薄くなってきた…ここまでが…限界か)

ニーナは目を閉じたまま空中で旋回した

クロエは飲み込まれる寸前に大楯を手放し横に避けた

一瞬で首を戻し再び噛みつこうとしてくる夜刀神をフィアが思いっきり蹴り上げた

『重いッ…これじゃひっくり返せない』

(足じゃダメだ、ここは!)

フィアは下からアッパーカットを入れ人形を使い腹部に追撃した

『フィア!』

腹部を持ち上げていたフィアを尻尾で吹き飛ばした

直ぐに立ち上がるが眼前には夜刀神の顔があった

(ま…魔除けがあるから大丈夫なはず)

舌をチョロチョロと動かし吊り上がった口角はフィアを嘲笑っているかの様だった。

『やぁああああっっ!!』

空から聞こえてくる仲間の声に

フィアは視線を上に向けたその瞬間視界が真っ暗になった。

『れっ…か…』クロエは魔法を放とうとしたがフィアが飲み込まれ手が止まってしまった…

『これで貫く!』

『ニーナ待って!』クロエはニーナを止めようとしたが

勢いは止まる事なくそのまま貫いた。

夜刀神は激しく暴れニーナと槍を弾き飛ばすと森に逃げ込んだ

ニーナが魔法を使い落ち着かせようとしたが木々に阻まれてしまった

『ニーナは空からお願い!』

クロエは夜刀神が通りおし潰された草木を道標に追いかけた

(土地に住み着く夜刀神があんな動きをするなんて…例外として助けるべきなんじゃ…でも助けたらあの人達の試験が…)

香花このかは木から木に飛び移りながら夜刀神を追いかけた


空から揺れ動く木々を目印に追いかけていたニーナは森の中から光を目撃した

木々が鎮まり静寂流れた

『…止まった?!』

急いで降り立ったニーナの眼前には木札がありそれは中級者から入る事が出来る地域だった。

『はぁはぁ…ニーナ!見つけたの?』

『わからない…でも行かないと』

槍を握り直すニーナを香花このかが手で制した

『ここから先は貴方のクラスでは認められません』

『私が行くので村で待っていてください』

その言葉は冷静だったが眼には熱意が込められていた

あたしも…』

クロエの言葉を待たずして香花このかは飛び出した


『出してください!』

フィアは内部から蹴りやパンチを入れるがまったく効いて無い様だった

『このままじゃ…うわっ』

突然強い衝撃が走り動かなくなった

(…今のうちに)

『よい…しょっ!!』

『はぁはぁ…うぅっ全身ベトベトです、ようやく止まったと思ったら此処は一体…』

夜刀神の口から脱出したフィアの眼前には白い壁があり、その先には白い建物が幾つも並んでいた

下を見ると夜刀神が壁にぶつかりツノが折れ白目を向いて泡を吹いて絶命していた

消失した後に残されていたのは黄色い球や布が残されていた、フィアは拾い集めそれをカバンに入れた

『この道を辿れば戻れ…ひゃあっ』

追ってきていた香花がフィアの近くに着地した

『大丈夫ですか!?』

『良かった、怪我は…無いようですね』

香花このかさんでしたか、クロエとニーナは大丈夫ですか?』

安心して下さいお二人は無事ですよ、それよりも夜刀神はフィアさんがやったのですか?』

『いえ、あの壁にぶつかって…』

『壁…ですか?』

振り返るとそこには壁はなく森が広がっているだけだった

(さっきのは一体…)

『とりあえず戻りましょう、ここは危険ですので』

『後…これで拭いてください』

『あっありがとうございます』

夜刀神の通った後をフィア達は戻り始めた。


そのころクロエとニーナは狼煙を上げ馬車を呼んでいた

『空からは見えなかった…』

ニーナは降り立つとクロエに偵察した結果を伝えた

『待つことしか出来ないなんて!』

クロエは拳を握りしめ肩を震わせていた

その時森から木々が擦れる音と唸るような声が聞こえてきた

声の正体はベトベトになったフィアの声だった。

『うぅ…全然取れないですよ、これ』

『お待たせしました』

『フィアっ!』

香花がそう言うとクロエはフィアに駆け寄って服に付いた唾液を拭った

『フィアを助けてくれてありがとうございます』

ニーナは香花に礼をすると結果について聞いた

香花このかは悩んだ後に答えた

『…ごめんなさい、逃げられていては昇級は…申し訳ないです』

『そう…ですか、それなら先に上位職になってからリベンジしようか』

横で聞いていたクロエが明るく言った

『上位職ですか?』

『私なら聖騎士、フィアならパペッティアかな』

『…悔しいけど受け入れるしかないか、うん、私も竜騎士を先に目指すよ!』

香花は3人の様子を見て安心していた

(…良かった、不安でしたが立ち直れて良かったです)

『帰りもお送りしますね、街に着いたら私が方向しておきますので皆さんは休んで下さい』

『あっこの素材はどうすれば?』

フィアは懐から黄色い球を取り出した

『そっそれ大当たりじゃない!』

『討伐して得た戦利品は皆さんの物ですよ』

『いま入手できる素材の中で1番レアリティが高い素材だよ!』

2人は戦いの疲れなど忘れた様に興奮していた

3人分の武器を作るべきと言うニーナとバランスを考えるクロエの論争はシラヌイに着くまで続いた

『あの…私、少しだけギルドによってから行きますね』

『?わかりました、それでは一緒に行きますか』

クロエとニーナは御者と香花に礼をすると買い物をしてから宿に向かった

フィアは香花このかとギルドへ向かった

道中老婆に声をかけられた

『あの…村はどうなりましたか?』

『夜刀神は無事討伐されましたよ、それに森の中で倒されたので村の復刻は早く進むかもしれませんね』

『そこの方フィアさんが退治してくれました』

老婆は骨と皮だけの手でフィアの手を弱々しく握りしめた

『あぁ…ありがとうございます!』

『付喪神様のおかげでもう一度故郷を見る事が出来そうです!』

涙ぐんだ声にフィアの目にも一筋の涙が出ていた

老婆と別れた後2人はギルドに入った

『何か聞きたいことや、知りたい魔物情報ならあそこで…』香花の言葉を遮る様にフィアは大きな声で言った

『あっありがとうございました!香花さんのおかげで助かりました』

一瞬驚いていたが香花も頭を下げ礼を告げた

『こちらこそ、ありがとうございました』

顔を上げた香花の表情は柔らかくなっていた。


フィアが宿に戻るとテーブルには大量の食べ物が並んでいた

『失敗した時こそ食べるのよ!』

『フィア…お帰り、普通失敗したら節約するよな?』

向かい側に座っているニーナが聞いた

『なんの話なのですか?』

フィアは席についた

……

………

シラヌイの城にて玉座に座る王と何者かが話していた

『施設に何者かが近づいた様です』

『見られたのか?』

『…』

『わかっているな目撃者は全員消せ』

『しかし…相手は付喪神であり消すには影響が大きいかと、城下町では既に付喪神様と呼ばれ新しい救世主だと噂まで広がっております…』

王は玉座から立ち上がり窓から星を眺めた

『…このシラヌイに救世主は2人もいらない…そうは思わんかね?』

静かだが迫力のある言葉に男は頷くしかなかった。

『帰還して早々に悪いが頼んだぞ』

王は柱の影に向かって言った

『…御意』

影が答えると、黒い風が吹き抜けて行った。

シラヌイ城:人族の神であるシラヌイの名を冠する白い居城

かつては戦いに使われたが現在は王や女官、近衛兵が居住している

争いに使われた狭間さまは追悼の日に火をともすのに使われている

それは戦没者への弔いの火であり争わない事への誓いの灯。

水堀には亀の像なども飾ってあり普段は城への橋が架かっておらず一般人は入る事は出来ない。


近くにも屋敷がいくつかありこちらは一般に開放されている

中庭では小さな池があり松の木やマルバノキが植えてあり灯篭と鹿威し(ししおどし)が雰囲気を出している。

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