第十話 伝承の真実
あらすじ
塚周辺の魔物の掃討依頼を受けた3人は
フィアは鳥人族の視力の良さや槍使いの戦い方を知りはパーティーでの戦い方を学んだ
その後夕飯を買い3人で食卓を囲んだ。
自身の正体と仲間達の温もりの狭間でフィアは悩んでいた。
翌朝…3人は早めに図書館についたが既に何人か人がおり入り口付近に近づいた瞬間フィアは老人達に囲まれていた
『まさか生きている間に付喪神様を拝めるとは…ありがたやー』
手を擦り合わせ頭を下げる老爺にフィアは困惑していた
『可愛いねぇ、人形の付喪神様なんだね…飴ちゃん食べるかい?』
『あ、ありがとうございます…あの、叔母さんは付喪神を知っているのですか?』
『知っているよ、曾祖母ちゃんから何回も聞かされたからね』
『その付喪神は…どんな神様だったのですか?』
『曾祖母ちゃんは只々優しい神様だって言ってたね』
そう言うとお婆さんは生垣に腰掛け語り始めた
『これはね曾祖母ちゃんが若い頃、病で臥せ(ふせ)っていた母の代わりに山で山菜採りの仕事をしていた時に会った話なんだ』
その日は山菜が思う様に獲れず日が沈みかけていた
『こんなんじゃ母様の薬代も買えないのに…』
帰るべきか悩む曾祖母ちゃんに誰かが話しかけたんだ。
『その先に魔物がいる、これ以上は進まない方がいい』
周りを見渡しても何もおらず警戒しているとまた声がした
『こんな遅くまで外にいてはいけないよ、さぁ帰るんだ』
声のした方を見ると腰に掛けている鎌が揺れながら話していたんだ。
付喪神の事は知っていたけどやっぱり子供には怖かったんだろうね…その日は一目散に小屋に戻ると鎌を小屋に投げ捨てて家に帰ったんだ。
鎌を捨てる訳にもいかず病気の母を心配させるのも嫌だった曾祖母ちゃんはこの事を誰にも言わずに耳を塞ぎながら仕事を続けたんだ。
そんなある日、山で迷子になってしまってね
木々に括り付けてある目印のリボンを探しても見つからず一人で泣いていると鎌がまた話し出したんだ
『そこの林を真っ直ぐ進めば古屋が見えてくる』
鎌の言う通り進むと無事に古屋にたどり着けたんだ、それからは曾祖母ちゃんも段々話しかける様になったんだ。
『魔物の中には木の実を巣に溜め込む魔物がいる事や知らなかった母の昔話とか…。』
鎌は色んな事を知っていて毎日の仕事が楽しくなった。
『ある日の山菜採りで刃が欠けてしまってね、それから話す事も無くなってしまったと言っていたね』
『曾祖母ちゃんは『大切にされた道具は必ず貴方の事を見守ってくれている、だから粗末に扱ってはいけないよ』そう言っていつも話の終わりに飴ちゃんをくれたんだよ…ほら』
『ありがとうございます…それが付喪神なのですか』
『他には何か話さなかったのか?!』
ニーナが聞いた
『そうだね、母と山の事以外は何も聞かなかったねぇ』
『貴重な話をありがとうございました』
クロエが礼を言うと丁度店員が出てきて鍵を開けた
おばあさんは軽く会釈をするとお店に入って行った
後ろにいた老人がフィアに握手を求めるとその後ろに列ができていた
フィアは困惑しながらも1人1人丁寧に握手をするとようやく図書館に入れた。
冒険者証明書を渡し入館料を払うとフィアとクロエは付喪神について調べニーナは九頭龍大陸の魔物について調べた
周りに迷惑にならないよう声を潜めて言った
『…あのお婆さんが話してくれた以上の事はわかりませんでしたね』
『道具としての過去を持ち名前を持たない付喪神…名前だけを覚えているフィアとは対照的ね』
2人で考えているとニーナが奥の棚から近づいてきた言った
『おっ!終わったのか?見てくれよ魔物を調べていたら強そうな奴がいてさ…』
本を開いて見せるとそこには水色の龍の姿があった
『あっそういえば私もまだ調べたい事があったんです!』
フィアは立ち上がり周りを見渡すと2階に上がって行った
『あそこは…歴史関係のコーナーだけど…何を調べるんだろう』
『フィアがこの街に受け入れられてやりたい仕事が見つかったのならそれで良いんじゃないか?』
『それは…そうだけど』
悲しそうなクロエにニーナは本を見せた言った
『さっきの龍が星8なのはわかるけどさ、この藻女って女の子が星9なのは想像出来ないよな』
『あんた死ぬわよ』
そんなやりとりをしているとフィアが降りてきた
『お待たせしてごめんなさいっ!』
3人揃うと図書館を退館した
図書館を出ると早々クロエは溜め息をつきながら言った
『こうなったら…里長に頼るしかないか』
『それなら外に出るついでに依頼を受けてから行こうぜ』
『多分その必要はないわ…』
そう言うクロエの目は遠い目をしていた。
馬車に揺られ数分立派な門構えの建物の前で停まった
門をあけると周りには田圃と民家がまばらにあった
歩くこと数分ようやくクロエの家が見えてきた
『…家というか城みたいですね』
『周りの民家のどれかかと思ったら地主だったのか』
表札には【鬼灯】とクロエの苗字が書いてあった
驚く2人を他所にクロエは深呼吸をした
『ふーッよしっ!』
『…たっただいまぁ…』
恐る恐る戸を開けた
(さっきの気合いはなんだったんだ)
中に入ると広い玄関とそこからは果てしなく続く廊下が見えた
『お邪魔します』
ニーナが挨拶するとフィアもそれに習い挨拶をした
『は〜いどなた』奥から女性の声が近づいてきた
『あらっ!黒江ちゃんじゃない!』
『叔母さん久しぶり…おお婆ちゃんはいる?』
『部屋にいるわよ!ほらっお友達も上がって上がって!黒江ちゃんが友達を連れてきたなんてお母さんもきっと喜ぶわ』
『ありがとう叔母さん』
クロエは叔母に礼を言うと曾祖母の部屋へ案内した
『…先に謝っておくね、もしかしたらおお婆ちゃんが失礼な事を言うかもしれないから』
そう言うとドアを2回ノックした後ドアを開けた
『失礼します』
部屋の奥で座布団に座り本を読んでいた女性が顔を上げた
白髪にクロエと同じ緑色の瞳をしていた
『黒江とそのお友達だね、お入り』
言われるがまま部屋に入ると向かい合うように座った
『…初めまして私は鬼灯沙苗、この子の曾祖母だよ
多忙な両親に代わり厳しく躾けてきたつもりだったけど何か迷惑を掛けたりしてないかい?』
フィアは大きく首を振るとクロエに助けられた事などを語った
『そんな事ないです!私がずっとクロエに助けられていたくらいです』
それを聞いた沙苗は微笑みながら行った
『そうかい、黒江の両親は冒険者でね小さい頃は…』
『それより!付喪神について聞きに来たんだよ』
クロエが遮る様に言った
『付喪神?…ああっそれで私のとこに来たんだね』
沙苗はフィアの身体を見た
『悪いけど、私は何も知らないよ』
『それじゃあ付喪神の伝承とは何の関係も無いのかな』
クロエは参ったと言った感じで言い放った
『まぁ待ちなさい、付喪神の伝承には詳しくはないが【鉄火塚】の事なら話せるよ』
『鉄火塚ですか…たしか領地の争いで亡くなった人の慰霊碑ですよね?』
『確か壁画には炎を受け取っている2人の人がいたよな』
フィアとニーナの言葉に沙苗は頷いた
『それは皆が知ってる話だね、でもその背景にはこんな事があったんだよ』
『鉄火塚は火起請と言う儀式が行われた場所に建てられた慰霊碑なんだ。』
『火起請は領地の代表者2名の手に燃やした鉄を持たせ神棚まで持ち運ぶ事で成否を競うものだったんだが…』
沙苗は一息つくと話を再開した
『負けた代表者は神を欺いた罰として磔にされ四肢を裂かれ殺されたんだ、そして血肉は大地に還り皮肉にもそれが実りをもたらしたんだ。』
(四肢を…)
フィアは血の気が引くのを感じた
『食糧に困り土地の利権を争っていた時代の話だ…お嬢さん達が見た壁画もこの話を風化させたく無い誰かが後世に残す為に掘った物なんだろうね』
『さて…これで話は終わりだ、話の前にも言ったが私は付喪神については何も知らないんだ』
『そんな!貴重な話をありがとうございました!』
フィアは頭を下げた
『まぁ…石碑の場所を教える事くらいしか出来ないよ、その石碑を見て何を思いどう考えるかはお嬢さん次第だけどね』
『お願いします!教えて下さい!』
フィアは再び頭を下げそれを見ていたクロエが言った
『おお婆ちゃんの勿体ぶった話し方もフィアの前だと形無しだね』
『お前はもうっ!まったく…珍しく顔を見せたと思ったら相変わらずで安心したよ』
『昔から私が見て覚えろって言ってもこの子は…』
クロエは曾祖母の言葉を遮って言った
『それよりも早く石碑の場所を教えてよ!』
ため息をつくと紙を取りクロエに渡した
『指定区域の調査依頼だ、危なくなったら直ぐに引き返すんだよ』
依頼を受け取ると立ち上がった
『星5か腕がなるな!』
横から見ていたニーナが言った
『石碑を壊したらダメですよ?』
『良い仲間じゃないか大切にするんだよ』
『うんっ行ってくるね』
『気難しい上に未熟な子だけど、どうかよろしくね』
『任せてよ!』『はい!』
3人は頭を下げて曾祖母の部屋を出ると叔母に挨拶をし依頼の場所へ向かった
『そういえば黒江だったのですか?ずっとクロエだと思っていました』
『いつも通りクロエでいいよ、名前も最初は揉めたんだよね』
『さっきの会話を聞く限り想像がつくな』
『ですね』
『指定区域はここら辺の筈だけど…ニーナ何か見える?』
クロエの言葉を聞きニーナは飛び立った
『魔物は…殆どいないな、あそこに洞窟があるな!』
ニーナの指差しした方向に進むと木々に囲まれた洞窟が見えてきた
『奥に誰か座っているな?』
『もしかして怪我人でしょうか』
クロエが木を燃やし急いで中に入ると奥には少女が石碑に座っていた
あの時…フィアを襲った少女だった。
『待ってください!』
人形をサイズアップして警戒するフィアにニーナとクロエが武器を構えた
『会いたかったよ…お姉ちゃん』
『私もです!あれから貴女に言われた事を考えていたんです』
(執事は乖の目の真実を知って事件を起こした様に言われていましたね…でも実際は違う)
クロエはニーナに小声で話しかけた
『執事は目の真実を知っても尚割り切れなかった
だからルカさんを襲っても手にかける事はしなかった。』
『爆弾も離れた位置で爆発させたのも利用されていた事の絶望と最後まで葛藤していたからだと思います!』
少女は笑いながら言った
『何を言うかと思えば、死人の弁明?そんなの私じゃなくて魔族にでも言いなよ』
『フィア…』ニーナが肩を叩き後ろに下がる様ジェスチャーした
『逃げられると思ってるの?』
人形が背後に現れ退路を塞ぐ
クロエは少女に向かって突進した
『貴女もお姉ちゃんの事を騙した癖になんで平気な顔で一緒にいられるの?』
『だから…こそ、フィアはようやく自由に生きれるのよ!それを邪魔なんてさせない』
クロエが人形を身を屈めると槍が人形に突き刺さりそのまま壁に刺さった
『逃しはしないッ!!』
少女を掴むとクロエの鎧が溶け始めた
『この身を持って焼き焦がす!炎凰!』
『やっやめ…』
少女の言葉は熱線によって遮られ残っていたのは黒い塊だけだった
『今のうちに石碑を…』
フィアは駆けつけるとクロエに回復魔法をかけた
『今回の件で警察に連絡が行けば暫く入れなくなる、その前に』
フィアは少女に花を添えると石碑の文字を見た
『姿形を変え人々を導き人間の業を背負い罪を浄化する』
『これは一体…』
『シ…リ、たい?…知りたい?』
不気味な声に背筋に悪寒が走るフィアは声がした方を見た
『フィアは脱出して!』
否定しようとしたフィアの腕をクロエが掴むと走り出した
『ははっ死ぬかと思ったぁ!』
黒ずんでいた筈の体は完全に治り元の少女に戻っていた
『リペアー』
少女が魔法を唱えると焦げた服が元に戻った
『逃げられないよ!』
少女が指を弾くと、突如として出口に黒い壁が立ちはだかり退路を塞いだ
『消えぬ憎しみをその身に宿し殺戮の舞台が幕を開ける』
三体の人形が浮かび上がり少女の声に呼応するように合体すると球体になりぐじゅぐじゅと音を立て始めた
『来てッヘルズ・ドール!』
呼び声に答える様に丸い玉が割れると中から大きな人形が降ってきた
『さぁ…人形劇の始まりだよ』
??? LV30 種族:人族 ジョブ:人形使い 武器:改造人形
頭装備:黒のリボン 胸装備:魔女のドレス
腕装備:金の腕輪 腰装備:魔女のパニエ
足装備:黒のブーツ 装飾品:黒のオーブ




