島村編 事件
この小説では、作品の都合上、性的マイノリティのことを意味する差別用語を含みます。
警察関係者ではないため、捜査の段取りは実際と異なる可能性があります。
2015年3月6日、とある平和な、小さな村の公園で殺人事件が起きた。
被害者は山本瑛人、20歳の大学生。東京の大学の法学部生だ。この村には里帰りに来ていた。
犯人不明、動機不明。近隣住民は戦慄を覚えた。
翌朝、近隣住民の通報を受け、事件が発覚。
この事件の捜査本部長、島村浩二、53歳。
島村は事件現場の近隣住民に聞き込みを行った。
目撃者なし。村に因縁があるわけでもない。しらみつぶしに聞いたが、手がかりなどなかった。事件翌日から出張に行っている、隣の家の住民には聞けていないが。そして山本の家族からも、手がかりは得られなかった。
島村は、交友関係を洗い出すため、山本のスマホを調べた。しかし、検索履歴もなければ、YouTubeの視聴履歴もない。タブも削除されている。犯人が削除したのか。それとも、山本が履歴を残さない人なのか。
何の手がかりも得られなかった島村は、東京へ赴き、山本の家の近隣住民に聞き込みを行った。
とある近隣住民は答えた。
「彼は時々友人を家に招くような、友達に囲まれた印象の人でした。」
他の住民も口を揃えてそう言う。
山本の大学の友人は、山本について、「明るくて、交友関係も広い人」だと語る。そうなのかもしれないが、あまりにもありきたりだ。
家庭内トラブルも近隣トラブルも友人トラブルも何もなかった。一体真相は何なのか。島村は悩んだ。