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不要な子供達  作者: 佐久間 泰然
第3章
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第94話 竹原修斗

「あのですね、竹原さん」

 児童養護施設で施設長を務めている鈴木エリスは年上の従業員に頭を抱えてしまいます。

 施設長室に入ってきたクローンの少女達は竹原修斗の後ろで返事を待っていました。

「まぁそういう事があって彼女達を雇ってほしいかなぁ、一時的に」

「金本さんが公務で不在ですから、いきなり言われましても困ります。ですが行く当てもないので、金本さんから返事が来るまではここにいても大丈夫です。その代わり、色々とお手伝いもお願いしますね」

 エリスの提案に少女達は、

「ありがとうございます!」

 一斉に感謝を言葉に表します。

「いえいえ、空き部屋がありますので使ってください」

 少女達が施設長室から出て行くと、エリスは大きく息をつきます。

「竹原さん、どうして無茶をしたのですか? いくらなんでも犯罪組織に立ち向かうなんて危険ですよ」

「うん、危険なのはわかるけど、どうしてもクローン達を助けたかったんだ」

 修斗は眉を下げて笑みを浮かべると、エリスは困惑な表情で俯きました。

「無茶な事はしないでください。多分金本さんは彼女達を洋国へ送還されると思いますが、政府同士ですから助けた意味がなくなる可能性は高いでしょう。どこか安全な地に送る事ができればいいのですが」

 クローンの待遇を心配するエリスに修斗は、

「そういえば俺の友人が洋国にいる。お願いしてみるよ」

 目つきの悪い友人を思い出します。

「就職なら絶対安定の帝国学園を卒業したのに洋国へ行かれたお友達がいるのですか?」

「うん喧嘩もするし仲違いもするけど、とても頼りになる人なんだ」

 自慢をしているようには思えない関係に、エリスは首を傾げてしまいます。

「そう、ですか。それではお願い致します」

 エリスにお願いをされた修斗は足早に宿直室に入ると、無愛想ではない無表情の神山奈木がベッドでネコのぬいぐるみを太腿に乗せて座っていました。

「奈木、どうしたの? そのぬいぐるみ、悪魔が憑りついているから危ないよ」

『ふざけんなーでーす。誰が悪魔ですかーこんな美少女は神山奈木さんを除けばいませーん』

 ネコのぬいぐるみから怒っているような声が聞こえてきます。

「それよりアオイ、そこは俺の特等席だからダメダメ!」

 修斗は沈黙を貫く奈木からネコのぬいぐるみを取り上げました。

 代わりにと寝転んで、奈木の太腿に頭を乗せた修斗は、奈木の胴体に顔を向けます。

『竹原修斗さんのー変態が加速してまーす。気持ち悪いでーすねー。甘い女子トークを邪魔するほどの大事な御用でーすかー?』

「あ、そうだった。ねぇ、アオイは電話の役割はできないの? 前に持っていた携帯電話は学校で借りた物なんだ」

『残念ながらーそんな能力はありませーん』

 アオイの答えにガックリしてしまう修斗は奈木の太腿を擦りながら、

「じゃあ西京さんの居場所を探すことはできる?」

 次の質問を投げました。

「西京さん…………どうして?」

「え?」

「あの人は…………学園で人を殺した、捕まったはず」

 奈木の疑問に慌てて修斗は上体を起こすと、事情を説明します。

「ち、違うよ奈木。西京さんは無実の罪で逮捕をされたんだ。学園で人を殺していない、ちゃんと釈放されて今は洋国に留学中だよ」

 嘘も混ぜながら事実を伝えると、奈木は表情を一切変えませんが、ホッと息をつきます。

「良かった…………修斗の大事な学園で初めてできた友達だから、心配した」

 奈木の言葉にうまく返すができず、修斗は誤魔化す様に微笑みました。

『その西京という人がー携帯電話を持っていれば探せますよー。覚醒もしていないようですしー脳内情報の強力なセキュリティが邪魔をしていますからねー』

 アオイの呑気な声に、修斗はネコのぬいぐるみと見つめ合います。

「大丈夫、アオイならいける」

『なんですかーその無駄な説得力はー。はいはい、どうせクローン達の安全な地をどうとかって話ですねー』

「盗み聞きって良くないよ」

『性犯罪者に言われたくありませーん、ではさよならー』

 アオイが別れを告げた途端、ネコのぬいぐるみは中身を失い、修斗は生気が消えたような感覚に眉を下げました。

「さよなら。ねぇ、奈木はあのクローン達とお話した?」

「少し…………洗濯の事で」

「どう、だったかな。迷惑じゃなかった?」

 戸惑い気味に訊ねる修斗。

 拒否を示すことも肯定を示すこともない奈木は、修斗の頭に手を添えます。

「別に、だけど…………怪我をして帰ってこないで」

 心配してくれているのだと修斗は受け取り、ネコのぬいぐるみをベッドに置いて優しく謝罪も込めて抱き締めました。

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